2012年07月02日
生地の収縮率で10%ほども縮むという連絡があって、これはいつもの問題が起こっているのだろうなあと想像を立てました。実際に残っている反物を検査すると収縮はほぼゼロ。はじめから物性重視であることなども考慮にいれて開発しているものなので、やはりいつものテストの問題だと考えています。
生地の検査数値というのは信用できないことが多いものなのです。そのことを知っている人がどれだけアパレル業界の中にいるのかというと、生地を仕上げる加工工場の方ですらも、反物の部位における物性の違いというのをご存じないことが多いのです。
林与ではキッチンクロスなど正方形にしようと、ギアの組み合わせを変えたり、また、横糸の本数の1本2本を調整したりするのですが、加工のやり方で、正方形に仕上がったり長方形に仕上がったり、それも同じ反物の中で、数値にすると10%以上のズレガ生じるようなことが当たり前にあるのです。加工工場の中の人でもそういうことに気がついている人が機械を動かしていると問題ないですが、それに気がついていない人が動かしていると同じ機械でもできあがる布というものは不安定です。
このことは検査機関の方でもご存知がないことが多く、物性が悪いときのアドバイスは、再加工するのではなく、検査を反物の別の場所で取り直すことです。通常、反物の一番数値が悪い始まりの場所を検査に出すので検査の数値に信憑性がないことは当たり前なので、検査に出すときには2mとか3m反物の中の部位から試料を抽出すべきです。わざわざ検査をするのにそういう事実ですらも誰もが知らないで数値に振り回されることが多いものです。
すべての工程を理解していると、どこに問題があるのか分かるのが当たり前のことなのですが、分業の進んだ今日では、そういう当たり前のことも見えなくなってしまうものです。素材や工程をいくら洗いなおしたとしても実際の問題の解決には結びつかないことも多いものです。実際、日本の繊維業界が衰退したのにも、このような基準値をクリアしないといけない問題で、新しいものをつくってもクリアできないことが多いことが原因ではないかと思います。特に、何メートルも余分に作って、その何メートルも中の部分でテストするというようなことをするようなものづくりの余裕がないと全滅してしまうような結果です。
今回の問題でも、余分に反物を作っておいたので、後から手元の反物で実験ができるのですが、ぎりぎりなものづくりだとそういうことすらも難しく。原因の究明すらもが難しいところです。