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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
理想と現実
2013年01月12日
今日は午前中、東京からお客様で秋冬物のお話。ふと、ある廃業された機屋さんの話になって、その機屋さんというのは若い新卒の方たちをデザイナーや企画に採用して任せて動いておられるようなところがあり活気のある会社として見えていたのですが、私は、この厳しい情勢でよく食べていけるものだなあと聞くに付け感心をしていた会社さんです。

織物というものの世界はどこまでも価値を詰め込むことのできる世界ですから、逆に、深みにはまりやすいと言うことがいえます。高い価値を詰め込んだときに、それを評価できる人がいないことには機屋の努力というのは実らないのです。でも、「林与」の場合それでもよいのじゃないかと思って割り切っているので、ものづくりが続いているだけだろうと思うこともあります。作っている自分自身が外に揺さぶられないようなものづくりでないと他と同じになって駄目だろうと思うのです。

人数が少なくなると織物というのは分業が基本ですので、仕事が回らなくなるのですが、糸から整経、縦つなぎ、織る、織機の調整、修理までの作業を一人でもできる人間を増やすことで、人数が減っても影響は少なくなります。専門の職人さんを抱えて分業体制でやっている織物工場というのは縮小して残すことは難しいもので、人を減らしたときに織物という作業を辞めて行かれることがほとんどです。

廃業されたと言うことで、作ろうとしても生み出すことすらも難しいひとつまた大事なものが織物の世界から消えていく。他の真似をせずにオリジナルなものづくりで生きていかれる力を持っておられるところというのは本当に日本の繊維業界でも希少な存在であるものです。トキが絶滅したのも分からん気もしないのです。最近はスズメすらも珍しくなってます。トンボも珍しく。こんな田舎でもそろそろ自然と呼べるものも終わりなんじゃあないかと思います。同時に昔と比べると人というのも自給自足的な人が消えつつある環境になりつつあります。