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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
ものづくり不要論
2013年03月18日
昨日は米原での長栄座のロビー展示で、たくさんの皆様にビンテージアイリッシュリネンプロジェクトの冊子を配らせていただきました。長栄座も驚くほどたくさんのお客様で賑わっており、たくさんの皆様にストールなどをご購入いただきました。

懐かしかったのが、3年ぶりくらいにお会いしたでしょうか、生地の検査のベテランのお方で、林与にお声を掛けてくださいました。普段、工場に篭っていて、あまり業界の皆さんとの交流がないので、展示会のときなどは思いがけず、うれしいお出会いなんかも多いのです。

今日は、舞台の合間のときに、壇上で、皆さんにご紹介をしていただくようなチャンスもいただき、司会の女性の方の上手な誘導の下、大きな失敗もなくご挨拶させていただけました。

林与の地元滋賀でのPRの場というのは長栄座の場がメインで、滋賀県に麻織物が残っているということを知ってもらおうと思ってですが、多くのお客さまが麻組合さんのこととイベントに参加をされたことをおっしゃっておられ、私以上に地元の麻のことに関わり、知ってくださっているのを今日も実感いたしました。これも地元の麻関連の皆さんの情報発信の成果ではなかろうかと思います。

林与に関しましては滋賀県内のお客様というのは比率的には非常に少なく、それというのも、林与が問屋さんとの商売を長年大事にしてきたことが大きな理由で、自社の名前を前に出す必要がなかったことにあろうかと思います。

ものづくりをしっかりとやっておればものがしっかりと流れていくというのが理想の形で、それが三方善の精神にもつながるとはおもうところですが、ものづくりをしっかりとすると逆に高くなり売れない、ものづくりを省いて安く売るというのが主流の時代になり、売れるものが良いものという、ものづくり不要論的な、まね物作りの時代に突入し、そんななか、昔のものづくりを超えるような、まったく正反対の最高級路線を貫くことを決めて突っ走ってみた感じの5年間でした。(まったく別のラインでリネンデニムやHDシリーズなどのカジュアル路線や厚織路線も糸と織りを考える中でたどり着きました。)

あるお店の生地売り場で、毛焼きもしていない毛むくじゃらの本麻と林与の本麻手もみの100番とが同じ棚に並んで色違いとして販売されているのを見て、これは自分が守ってきたと思っているものも、売り場では違いを気にしない時代、消費者の方に麻の良さをいくら語っても、自分自身が作る麻を消費者の方が「林与」の麻布であることをわかって手にとってもらって語らないことには、麻の良さと言うのを語っても、同じ麻といってもいろいろな表情の麻が溢れています。麻文化の情報発信をするときにも、自分が作ったものを買ってもらわなくてもよいので、自分が作ったものをまず知ってもらうことが非常に大事だと感じています。

生まれたものはいつかは消えていくという当たり前のことなのですが、何代にも渡って良い物をつくろうとして生まれた技術や完成形に近い形すらもが、新しく始めるところとの競争で消えてゆく、小さく凝縮することで一つの波や二つの波くらい乗り越え、次につながらんかなあと、外の波に流されて良し悪しは別にしても、リネンや麻というひとくくりで、特色的なものが薄まることを一番危惧するのも事実です。

考え方はいろいろだろうといえます。小さくなったところを大事に残そうとする考え方と見切ろうとする考え方、私もこの仕事に携わったときにやれることもやらないじれったさを感じることが多かったのです。誰が決めたわけでもないのですが、やってはいけないという規律見たいな物が多く、衰退的な状態を変えるために仕事で何かやろうとしても、人が人を支配しようとしたり序列を守ろうと一生懸命な感じで、そういうのと関係のない新しいところのほうが技術ゼロでもやる気が育まれ次の世代が育ちやすく、結果、硬直したものを追い抜いていってしまうという性。その競争が繊維業界にあるのではなく、文化や法律も違う海外との競争や、人材面も含めると商慣習のまったく違う異業種との競争で会ったりもするのです。

たとえば、単純な壁の例ですが、糸のことに関しても国内の業者さんにまずは頼むのですが手に入らない糸が多くなりすぎ自分で海外の糸を探し手配することになったり、織物の加工にしてもまずは頼むのですが出来ないといわれると自分で考えて出来るようにしたり、織機にしても職人さんに任せて難しいといわれると自分が修理したり織ることをかんがえたり、売ることに関しても同じで売るのが難しいといわれると自分で売ることを考えたり。

頼って出来ないといわれたものを頼り続けて出来ないままよりも、自分の作りたい布を作るために自分で出来るようにするというのが解決の近道。その道のプロの方が出来ないといわれる壁を越えるところに特別な世界があるということ、林与自身も出来ないというとお客様にとってはそれが結論ということ他で出来るところを探されるのは当たり前。自分が出来なくて他でできる理由が、コスト面や設備面でなく、それがやる気を出し惜しみしているだけだとその一つの仕事というのではなく、全体として他に抜かれていくのは見えている気がします。