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リネンや麻を織る日々をつづっています。
リネン日記
2013年12月25日
今日は小幅織物のシャトル耳の調整、一台の織機の耳が汚いので調整をする。テンプルがキツ過ぎるので片側の糸がゆるい。私が整経の巻き取りなども確認をしたビームなので、ビームには問題なし織の問題。テンプルを緩くして、シャトルの糸調子が弱いのでそれを強くする。これでかなり耳が綺麗になる。10分ほどの簡単な調整だが、こういうのを調整ができるのとできないのとでは、織り上がった織物の綺麗さが相当変わってくる。正しく織れば正しく織れるという話。

整経が駄目で綺麗に織れないこともある。山の角度を間違って巻いたり、巻き取る場所が悪かったり、巻き取り幅が正しくなかったり、作業するものが正しく仕事をしないと、大きな失敗に終わる。織物工場の作業の中で織るという工程は一番単純な作業の部類に入るのも事実で、一番素人の人が担当をするところだったりもする。織機の微妙な調整をして綺麗に織れるようにしたり、企画を理解して糸の準備をしたり記録をつけたり、反物を検反して修理したりの作業のほうが高度な仕事で織りながら他の仕事をするのが一人前の仕事。整経も、巻くだけなら素人でも出来るが、糸量の計算や、糸の管理や在庫糸の管理となると少し高度な仕事になる。

たとえば、今日の問題、こんにゃくの糊を付けた織物が糸が滑って作業がうまく行かない。作業しているものが苦戦せいているので、林与先生登場。まず、糸を結ぼうとすると糸が壊れる。出てくる糸が張って重い。光沢感があっていい感じに見える糸なのだが糊加減がきついというのが分かる。糊付けに問題を感じる。こんにゃく糊加工糸というのは作り方に大きく分けて、タイプAとタイプBの二通りあるが、この糸はタイプBだろうと思う。タイプAの糸だと糸にしなやかさがあって、一般の糸に近いしなやかさを持つ糸に仕上がる。タイプBは扱いにくさがどうしても残ってしまう。これはこんにゃく糊だけでなく、PVAやビス加工糸などの一本糊加工にも共通していえること。糊が強すぎて糸の弾力性が無くなると、糸が切れて切れて織れない事もあるので、糊付けは加減が大事。

今日は他にもレピア織機のドビーのピックファインダーの操作する棒の付け根のピンが消耗して落ちたので、交換。ピックファインダーを操作する場所が少しずれているとピックファインダーが無理をする。織機が無理をしていても自分は悪くないと機械を壊すのを楽しみにするタイプの織手もいるが、そういう人というのは上手になることはなく、次々と織機を自慢げに壊していくタイプなので仕事には向かない。何十年持つ機械が、数日で壊れるのも、作業する人の上手下手の差。

気の毒な話なのだが、加減というものを厳しく教えられたことのないタイプの人というのは、なかなかなにが良いのか正しいのか分からないもので、作業をしても駄目、駄目といわれるが、一向に、良い加減の状態というのをつかむことが難しい。スイッチのオンとオフはわかっても、作業する人の中にないといけない微妙な調整というものの加減が出来ない。これは育った環境というものが大きく影響をしてしまうので、綺麗な織物ができる文化というものは、厳しい文化そのものの存在が必要。機械がどうこうじゃなくて、人の中に微妙な加減をコントロールできる力が必要。

私自身、作業に携わる時間というのは全体の時間からすると短いが、医者がオペをするような感じ。現場の職人たちが解決できない問題を解決するのが私の仕事であることが多いが、織機の問題というよりも、人の中の加減の問題であることが多いので、これは人の心理面の問題を解決しないと直らない問題。仕事暦40年とか50年とかの熟練工の人でも仕事が何であるのかということを理解してもらう必要があったりする。少し難しい仕事をしないとならないときには、簡単な仕事を適当に長くやってきた経験が正しく仕事をする邪魔をすることのほうが多いものだ。