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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
バランス
2010年02月06日
出機さんが2月の終わりころから旅行に行かれるとのことで、それまでに織ってもらうわないといけない仕事があり、急いでもらっています。染めのほうもなんとか、その予定にあわせてもらってぎりぎりあがってきました。

企画も染も加工も織も縫製もすべてですが、急いでやると結局、丁寧な仕事が出来ないので、同じ工程をやっているというもののどうしても急いだときは、急いだなりのものしかできません。時間に追われて布を作っていても時間を掛けていないので愛着が沸かないせいでしょうか、気分的に量産のもの扱いと同じになってしまうのです。

流れ作業で、決まった工程を流すと生産性は上がるのですが、出来上がったものは組み合わせでできるようなものなので、トータルとしてバランスというのが良くないことが多いです。一人の人間がシャツを作ったときに、全体的なバランスがあるのに、流れ作業で作ったものは良い手と悪い手が混在してしまうので、悪いところが目立ってしまうのです。

同様に、布を作るときも林与の布としてのバランスみたいなものを常に注意しています。染、織、加工のどこかが弱いと私が見て駄目に見えてしまうからです。通常、市販されている布というのは同じリネンでもどちらかというと資材向けのリネンに近く、糸、染、加工などアパレル向けのリネンとは別物くらいに違います。染にしても綿やウールの産地の染で染まらないことはないですが、加工にしても最近は似たような加工を他産地でやるようになってきていますが、基本がウールだったり綿だったりすると染にしても加工にしても涼しい感じがしないのです。逆に、リネンの秋冬のものをやろうとするとき、他産地のほうが良いかなあと思うときがあります。他産地の加工のほうが秋冬っぽく上がるのです。

近江産の麻布が麻布の中でも特別に言われるのは、単に近江湖東産地で織るというだけでなく、近江湖東産地で織るからには本場物としての贅沢が詰め込まれているからで、それを詰め込まなければ、わざわざ近江で作っていても意味がないように思います。百貨店には高い洋服がずらっと並んでいますが、その中でも特別なものに見えないと駄目なのです。