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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2016年10月07日
昨日の午前のお電話で、林与の布に興味を示していただいたお仕事のお客様がある。林与の麻布は他社さんと比べると卸でも2倍から3倍するものも多いので、普通のお仕事のお客様ではなかなか手を出してもらいにくいところがある。弊社で、値段が合わないときには、他社さんをご紹介することも多い。自社で工場を持って生産していると、工賃仕事では済まない部分があるのと、林与が賃機屋さんとは違うので、自社リスクでいろんな商品を開発したり、新たな設備投資をしたり、自分が面白いなあと思うテキスタイルビジョンを持ってPRしたりしている部分が、費用として跳ね返ってしまうのだろうが、そういうことやらないと自分の力で新しいものを作れないし、産地で産地の特色のあるものづくりを続けていくとかもできなくなるとも思える。

お客様が一般的に使われている布というのが、切り売り屋さんに並んでいるあたりの想定価格で、便利に1mから手ごろに手に入るのに、200m、300m作ってもその2倍とか3倍が林与の値段だったりして、切り売り屋さんの布が悪いわけでもないし、林与の布にしても原価を計算して一からつくるとかするとそのくらいになっても仕方ないところである。何かひとつグレードを落としても、他のものが自分なりに妥協ないチョイスなので、ひとつなにかグレードをを落とすのがもったいないという感覚が私の中にはある。

2年間に廃業された機屋さんが、林与の50年前に手がけていた織物を織られていたが、その生地の販売価格を聞いても成り立つ値段ではないのも事実。林与に仕事を譲ろうとしてくださったのも、織機を動かせる力を見込んでのこと。その設備を私に売って儲けようという気持ちも持っておられなかったし、私も簡単にも考えていなかったので、独占したいとかの気持ちも儲ける気持ちもなかったしお客さんが困られるということで誰かにバトンを引き渡したがられていたという事情で、一肌脱ぐ覚悟であった。手もないほど忙しいのに他のことに手を出すというのはばかげたことだろうけど、何かの巡り会わせと思って一生懸命に動いてそれが自分なんだろうと思う。

私自身もその採算性が合いにくいのも承知で、それまで私と関係のないその方のお客さんも困られないようにと思うところもあったけども、話が途中で変わり費用が掛かりすぎる話になって、私自身が実質無料で働いても、移設費用と維持費用だけでも、その方の既存のお客さんが今までの2倍の値段で生地を買わないといけなくなるとお客さんも喜んでもらえないとなるともう無理な世界だろう。将来的にはそういう麻織りの技術が日本に残っていることのほうが産地としても大事だろうと思えるが、新規のお客様の開拓なども含めて成り立つ道も探そうとしたが、和装の高級バルク素材、市場が小さくなりすぎて、難しい問題である。

そういう織機を動かす技術が産地に残っているのかというと、いろんな普通の織機でも動かすのが難しいというのが現状で、案外、途上国なんかではレピアもシャトル織機も普通に動いていたりするのだが技術があるといわれる日本ではそれが難しいとか。それは技術があるなしだけでなく恵まれた国になると、働く人も働くという意味がわからなくなったりするもので、仕事なんて自分がやるかやらないかだけなのにと思うことも多く、やるから仕事があってやらない人には仕事がないのは当たり前だと思う。日本もひとつのものをつくったりする技術が残っているのはそういう技術というよりもやる気のある人が個の力の中で残っているから、組織とかそんなんじゃあなくて個の力があるから組織が意味のあるものであったりする。

海外の何千人の企業でも数人が意味のわかっての仕事、他のほとんどの人が収入源としての仕事であったりして高度なことは経験も少ない。品質的な優位と価格のリーズナブルさで成り立っているそうだが、いずれ繊維産業に危機が訪れたときにどうするのかという問題もあろう。日本もほとんどの場合に同じじゃないのかなあと思える反面、私自身、この仕事が逆に仕事らしく、やる気があれば高度なこともチャレンジできるし、繊維の中でも機織というのは可能性のある仕事だと思う。

どの仕事にも共通する要素があってその最低限のところまっすぐにやれば案外強いんじゃあないかと思えるが、普通の仕事が面倒な方向に流れていくケースも多い。自分の作ったものが売れなければ食べていけないが当たり前という厳しさもそれで生きていくんだからあって当たり前なのだが、その厳しさをないようにしてしまう偽善な方向はいかがなものなのだろうか。日本のボランティアでも大手ボランティアビジネス、自分の生活費を稼ぐために海外の子供たちを出汁に活動ではいただけない。