2016年10月11日
ものづくりの会社の弱みというのはものを作るところに力を注ぐので販売に力を注がないところであったりする。販売というのは営業マンをたくさんもっている会社がやはり強いだろうが、林与の場合には営業マンは基本いないのも特徴である。営業マンを雇いたくないのは、自分が作らない人がたぶん意味がわからないだろうなあと思うところ、自分たちが作って自分たちが売るほうが不細工だろうけどいい感じじゃないのか。
昔、私が20代のころに、縦糸が切れる問題があって織っても傷が増え商品にはまったくならないと思ったものがあって、それを織っても加工しても大きすぎる問題になる何千メートルの話。私はこんなの問題が増えるだけだからストップして新たな方法が必要というが、納期があるからとGOしてしまって結局何百万円の仕事がやり直し。最終的に納期ももっと遅くなるし、糸も染め直して縦糸の損だけでは収まらない。ボタンの掛け違えをどこまでも。これは後で問題を解決しようとする営業マン的な考え。
外の問屋さんの企画した仕事などもトラブルと後で何とかなりませんかが多い。営業の人とかはものごとを簡単に考えられていてだから、いろんな問題が見えていてそれでもいいからで進んで、問題が出てきて何とかならないかと相談されたり、だからあの時言ったでしょうが多くその軽さが大きなリスクにつながる。営業というのは外に振られて本質的な問題を見失いがち、個人の問題じゃなく、みんなの仕事がパアになる。
図体の大きい人でも、繊維業界に経験の長い人でも、なんで自分で問題の解決もやろうとしないのに、業界で生きているのかなあと思うことも多い。私自身は自分の作るものが悪いものに思われるのが嫌で、間に人が入っていてもそれなりにベストは尽くすが、基本見ているのは最終のお客さん、間に入っている人はお客さんじゃないというのが品質を守るための基本。
ブランドさんたちも直接来てくださり、お会いすれば本質的な話からになるけど、イメージだけでOKならそういうものはいくらでも安く手に入るし、それを求められているブランドさんも多い。イメージ商品なら値段も合うけど、本物だと値段が合わない問題がある。林与も自社で織っていない布が、誰かのために取り寄せしたとかで、それを他の方に販売するときなどは、自社で織ってない布であるとお話もして、安く提供したりする。自分の会社で織った布と他の会社が作った布では価値がまったく別である。そういう歯止めが利かないと、何倍にも化かせるビジネスになる。海外から生地を仕入れて、それを伝えずに林与で作ったといってうれば看板ビジネスで、楽して儲けられるだろうが、いろんな仕事らしい苦しみ味わいながらも自分で織る環境をもって続けるという道を選びたい。それが林与の布を高く買っていただく皆さんの期待を裏切らないということと整合すると思えるから。