2010年03月12日
今日は、夜、平三本ミシンを使って縫製の仕事の準備をいたしました。平三本というのは、三本針が並んでいるミシンです。裏面に飾り糸がギザギザ状に走ります。Tシャツなどの処理によくつかわれるミシンです。
今回はそのミシンを、アタッチメントをつけて2枚の布を5mmほど重ねて張り合わせる処理に使用しました。そういう工夫ひとつで、きれいに仕上がるだけでなく、早く作業が進められます。そういう風に道具を工夫するのも日本の得意とするノウハウの一つです。
日本のミシンメーカーが強いのも、耐久性だけでなく、多種多様なミシンのラインナップを持たれているからです。家庭用のミシンが数万円で買えて、一台で多種多様なことができるのに、工業用ミシンというのは50万円以上もして一つの作業しかできないので、多種多様なミシンが必要となってきます。そこが実際に産業としての品質を要求されるプロの世界で、産業としての品質の要だったりすると思います。
織物もそうなのですが、わざわざ、わずかな違いのために、糸の太さを変えるだけでなく、経糸の本数を糸の太さに応じて変えています。縦糸、縦120cm幅で、2500本という機があったら、それでリネン66番、43番、25番を織れば、厚さの違う布ができるじゃあないかと思われるかもしれませんし実際にできるのです。1台の織機で3種類の布が織れることになりますが、その布には、織って加工して仕上がった布を触って、布を使う目的に応じて「ちょっと厚いなあとか」感じたときに、縦の本数を減らさなければならないなあ、という、良いものを追い求めようという気持ちが詰まっていません。
横糸だけで、打ち込みを変えることで厚さを調節することも可能だったりするのですが、麻織り物のバランスとして、基本的には、縦糸と横糸の密度の関係が存在し、それがあまりに崩れると目ズレなどの物性の問題が出てきます。コンピュータのモニタ画面で織物の色柄を作られるように縦横同じ密度を想定した織物を設計されることが多いものです。資材系ですとそれが適切かもしれませんが、服という要素を考えると?だったりすることも多いので、作られる方の経験次第だと思います。数字上は規格は自由にできるのですが、どれだけ、出来上がった麻布を触って加工に応じた、良い風合い、物性のものを導き出すかだと思います。
春夏の布の厚さというのは、どうかというと、ヨーロッパと日本では違いますし、国が違えば異なるのです。日本では日本に適した生地の厚さというのがあり、それをどうやって導き出すのかというと、もうちょっと厚いほうが良いとか薄いほうがよいとか、お客さんとのキャッチボールで公約数みたいなものがあります。それを基準に同じ番手でも、高密度タイプをつくったり、薄い生地をつくったりな感じです。地中海沿岸諸国では、薄手のファンシーな布が多く、アイルランドなどではトラッドな高密度なものが多いのも気候などの影響ではないでしょうか。