2016年10月14日
今日は仕事で昔からの馴染みの方が来てくださって、ある方が最近お亡くなりになられたお話。私以上に業界を良く知っておられたそういう方でも60半ば近くになられると仕事も難しくなられ、会社から離れられて独立されるもなかなか食べていかれるのは難しいものである。60過ぎて始めての独立というのは厳しいだろうと思う、いろいろと最後ご苦労が多かったのではないだろうか。人にはそれぞれ事情があるので、勤め先を退職しても、自分で仕事して食べていくという基本で生きていこうとするのは普通のことだと思う。だが、独立してやっていくときに、誰かスポンサーしてくれると簡単だが、自分が資金から準備し在庫も抱えないといけないところから始まる。自分が今までのように普通に働いている程度では働いてお金を失うモードに入ることが多い。
私でも40手前で社長になったが、それ以前の商売的に成り立ちにくい流れというのは続けていれば、自分で解決のしようのない部分が多く増え過ぎた。自分で解決できるような部分を増やすためにも自分らしいものづくりを取り戻したのがビンテージアイリッシュリネンプロジェクト。今のリネンの細番手化の流れを生み出したのもそのプロジェクトに付随する現行の100番手以上の細番手リネンを織るプロジェクト。それまでは、織れないといわれた100番手以上の細番手のリネンを通常の手法で織るというチャレンジ。現行の150番手リネンまでをかなりの密度で織り上げアパレル向けに提案できる、世界中の会社を探してもなかなか難しいんじゃないかという課題クリア、日本の麻織物の本場近江湖東産地でそれを実現できたことは織りだけでなく、糊付けや加工を含め、近江湖東産地の企業さんの持つ技術の高さではないのかと思える。ビンテージアイリッシュリネンプロジェクトは脚光を浴びたが、そのサブラインの現行の100番手以上が通常の方法で量産対応できるというのは業界の不可能を超えることができたと思う。
高級なものに特化すると高いものをやってキザに思われるかもしれないけども、良いものを作っているからというからには、世界一を目指すみたいな、そういう華がないと駄目だと思うことも多い。別にナンバーワンじゃなくてもよいが、他とは違う世界を持ってそれに掛けてみるというのも大事に思える。そういうのをやったのも、日本がデフレで高いものなんて売れないといわれたとき、1mが1000円より高い布が売るのが難しいといわれる時代に、1mがバルクで、5000円から5万円の布を提案した。5000円から5万円の値段をつけた布は、普通とは違う上品な顔をしているのでセレクトされる方が多かった。特別なものを見分ける目を持っておられる方も多いのを感じる。でも値段に驚かれることは多く、買われる方というのはそう多くないがないこともないし、売り急ぐ商品でもない。そういう世界を見てもらうのも大事だろうと思う。
今も、小さな林与のリネンの中に世界でも一番高いゾーンのシリーズがある。近江上布の世界も、林与には何百反かの着尺の現反が残っていてそれは家宝的な意味合いがあって非売品である。小さくても守り続けたい麻の高級な価値観はあって、一般に流れるものとは別の世界として手元に残していければと思う。普通は分散してしまうものなのだが、林与らしい麻織物の価値観は四代に渡って共通の部分がある。