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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
プレミアムテキスタイルジャパン初日
2017年05月09日
今日はプレミアムテキスタイルジャパン初日。本来だと林与志雄がブースに立つ予定だったのだが現場の案件でどうしても時間が足りず。デザイナーがPTJに一人で立つことに、予期せぬ展開で開場10分前なのにまだブースが空だと主催の事務局から心配の連絡をいただいて、それでもなんとか10時頃には会場に到着してブースも設営ができたようでほっとする。会社に役員として入ってくれてまだ2ヶ月未満、大役を果たしてもらうことに。

近江上布絣の広幅プロジェクトとは、林与に50年以上眠っていた近江上布のアーカイブを、現代に広い織幅で絣織で再現するプロジェクト。昔の近江上布は着尺はばなので、幅が36cm程度なのだが、それを1年目は、リネンストールの場合には幅70cm程度で10柄再現した。2年目はアパレル向けにワンピース向け素材としてリネンで5柄を再現する予定。3年目には、ラミーで着物向けにオリジナルに近い形に再現する。

JETROさんの商談会などでも、近江上布のアーカイブをご覧になられた方が、これらの布というのは今まで見た布のなかで一番すごいといってもらえるくらいの一つ一つの完成度の高さと、数千種類に及ぶ柄のすべてが絣で織られているということ。林与自身も自分の小さな家の中で世界的に見ても価値のある織物が作られていたこととまたそのアーカイブが今も良い状態で残っていることはバックグラウンドとして恵まれているなあと思う。

1年前まではそのアーカイブというのは林与が昔に作ったメモリアル的な存在で、近江上布のすごさを語る資料であったが、この1年の取り組みの中で、それらの色柄が、私一人が数日気合をいれると一柄づつ再現できるようになってきた。村規模でやっていたことや職人が何人も集まってやっていたことを、一人で背負えるような形で、しかも柔軟性と応用性をもった広い幅で再現でいる。

1970年代の初めに北アイルランドのハードマンズサイオンミルで紡績された140番手のアイリッシュリネン糸を織り上げるプロジェクトを立ち上げ、日本の麻織物の本場近江湖東産地の染色、織物加工の力を借りながら自分の考える現在作れる世界最高峰のリネン生地に取り組み、それまでは、リネン66番手くらいが林与の細番手だったのを一気に、世界最細番手の150番手までのリネンを高密度で織ることができる技術基盤も通常の技法を高めることで確立をした。

今は、デザインでも世界に日本の織物の力を感じてもらえるような布を生み出してゆきたいと考えていて、林与の場合にはおじいさんの時代につくったアーカイブが眠っているのでそれらを再現するのがストーリー性もあってよいのではないのかと思える。しかし、その実現のためには、昔の技法をアプライするのでは職人が何人も必要で、新たな技法を生み出して、私一人でもその世界を再現できるようなプロセスを生み出す必要があると、織るだけでなく、型紙、染、加工までも、小ロットで出来る体制づくりも考えた。

日本の織物が消え行くのを防ぐためには、自分自身がすごいというのではなくてが大事で、一人ですべてできることが最終目的でもなく、今の日本の現状では形にするためには、とりあえず、一人で出来る形で構築して万が一のときも一人が踏ん張ればしのげるようなものづくりにしておかないと続かないのである。最終目的とすれば、それに多くのやる気持ちのある人が携わって、その人たちの織物を柱としたライフスタイルを支えていくような流れを生み出してゆかないとならないと思える。

仕事という感覚では、こういう織物を生み出すことはできないだろうと思える。