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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
技術継承
2018年11月01日
技術の継承というものは、原料や麻糸などをみていると他国に移りグローバル化が進んでいる。グローバル化というけども、日本ではほとんど行われなくなったという状態。織物というのはどこでも出来そうなもので成り立ちそうではあるが、たとえば、一世代前の織物の技術を継承しようとしても、生産性の高い大型織機のメーカーは残っていても、日本にはシャトル織機のメーカーが残っていない。シャトル織機の動きというのはそれほどブラックボックスではないので、電気系統が多いレピア織機に比べれば、理解がしやすいものではある。

今と昔が違うのは、為替の関係もあって、日本の繊維市場は日本の市場であったこと。今は、繊維製品の95%が海外から入ってきているくらいだろう。今の時代に、価格競争力のない織物を生産することは基本難しいことなのである。ベースとなる大量に流れる無地などの織物が海外生地で占められてしまっては、人でも減った状態で手の掛かる仕事をするときに、普通の仕事だけでなく、織機メーカーの力も必要となる。

織物というのは自分が織機を持っていればいろいろとつくれるだろうと思うけど、これは逆で、自分でつくるとできることは限られているし、高くつくことも多い。とことんなものや、特別なものが作れるというのが利点じゃないだろうかと思う。織るという要素だけではなかなか難しいだろうなあと思うのも、自分で特別なものを作ろうとしたときに糸を手に入れる力が必要となってくる。国内だけでなく、海外から引っ張ってくる力が必要となる。こうなると、糸商的な仕事も機屋ができないと特別なものを自分で生み出すことが難しい。

また、つくる技術や力があっても、自分で売る力がなければ成り立たせるのは難しいだろうと思う。販売能力もないと、田舎の商店街のお店と同じ道のりを辿ることになる。技術を継承したら食べて行けるのかというと、織物の世界で、目の前の問題を解決して行くだけのことで、仕事は基本、誰かにいつも教えてもらうようなものではないという現実。

ここ数日も、織りの密度が上がらない問題で、問題をかかえていたがそこで終わるとその企画が倒れるだけでなく、私自身が「この問題は解決出来ない」という結論に達してしまう。それで、この5日の最初3日ほど密度を上げるために織機の調整を繰り返し織機の調整では無理だと悟って原因にたどり着いた。原因にたどり着いただけでなくそこから2日ほとんどぶっ続けの作業で、織ってみてうまく織れたからそれが本当に原因だと分かった。まったく織れないが、問題なく織れる瞬間で特別の織物が出来上がる。こういう作業でも何人かでやれば普通の作業で終わるだろうけどなかなかこういう作業を坦々とこなせる人は少ないのである。こういう作業に意味を感じられるのかどうかが、大きな結果の違いにつながってくる。