2020年05月16日
先週、京都の問屋さんが自己破産された、もう京都のアパレル生地問屋業というのは難しいのかなあとも思えたりするのは、先代のころにお取引のあった京都の多くの生地問屋さんが廃業され、林与がお取引してたなかでは唯一くらいに残ってられたその会社さんも閉じられた。私がこの業界にいる20年ちょっとでも、林与の取引先の8割以上が京都の問屋さんだったのが先代のころにお取引のあった有力どころの京都のアパレル問屋さんはすべて繊維業から撤退された感じになってしまった。林与のお取引の経験の限りの話だが、メッカであった京都においても高級アパレル向けの問屋業が成り立たつことは難しいというあたり。
同じく、アパレルさんも昨日、上場アパレルが更生法申請。ブランドとは何なのかを考えさせられることになる。ブランドの服に価値があるのかラベルに価値があるのかという問題。アパレルがブランドを買収とか売るとか、ブランドというのは権利ビジネスなのかというあたり、安い物にブランドタグをつけて高級なイメージのものを安く売るというのが一番回しやすい話になる。逆に言えばブランドイメージの安売りになりブランドのイメージは消耗してゆくだけの話になる。現金主義だと、利益が大きいと成功しているように思うが、繊維業界に関していえば手段を択ばなければ化かす方法は一杯あるから。ブランドさんがそういうバカしたものに飛びついて水心魚心が多く、麻業界でのアイリッシュリネン幻想などは、私でもアイリッシュリネンの糸をあらゆる手段を講じても手に入らなくなったのが2000年以降。それなのに、アイリッシュリネンが大量に出回った2000年以降というのは、なんだったんだろうかという素朴な鬼門で、2007年から始めた林与のアイリッシュリネンプロジェクトがそれを解き明かすことになった。
アイリッシュリネン協会の四つ葉のクローバーのマーク、一体どこで紡績されたリネン糸なのか、そろそろ認定機関の偽装自体やめないと、消費者を罪悪感もなく裏切るだけのことになる。私なんて言うのは田舎の小さな機屋のおっさん、そのおっさんくらいの覚悟もないのが、大きな謳いで本物かどうかもわからないものを化かしているだけのこと、多くの消費者はなぜ昔のアイリッシュリネンと今のアイリッシュリネンが全く異なるのかを感じているけど、今、アイリッシュリネンを謳う業者さんがアイリッシュリネンに触られたこともないケースが多い。ある展示会でのできごと日本のアイリッシュリネン糸を作られている業者さんが林与のブースに来て、アイリッシュリネンなんてないよと言われ、アイリッシュリネンについての正しい説明を私がその当時中国で一番元気だったリネン紡績工場の方に説明する。それが、2000年以降も、その中国の紡績工場の日本に大量に流れていたアイリッシュリネン糸は終焉のきっかけとなった。
日本で一番大きなアパレルさんのフレンチリネンのタグの問題をリネン日記が書くと、そのタグが変わる。それまでは、フレンチリネン100%が、いわゆるフレンチリネンという表現に変わって、フランスベルギー産となる。田舎の小さな林与の正直な認識以上のものはなかなか難しいのである。それを超えてやると儲かる世界なのかもしれないが、超えないことが大事だと思うから分かっているだけに中国紡績の糸をアイリッシュリネンと謳って売るようなことはしない。