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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
難しさ
2021年05月30日
普通じゃ、麻織物というのは難しい仕事なんだなあとつくづく思う。予想外の問題が付きまとう。綿やシルクの織物だと起こりにくい問題が多く起こる。通常は2割ほど多い目に織るような想定で材料を用意する。1割くらいはキズロスなどでなくなり、1反くらいは、もしもの時の1反として用意して、とか。

問題が起こったときには、もう一度作り直せばよいというのではなく、同じ問題が起こる可能性もあって、また、やり直したとしても納期のあるものなどは、その仕事だけをやり直すので、他の仕事が雪崩式に遅れてゆくので、仕事というのは1回でなんとかなるように、必要量プラスロスのさらに2割ほど材料を多めに投入してすることが多い。

ウィスキーじゃないけども、天使の分け前みたいなものがあって、糸というのは箱から出したときにすでに5%少ないとか(公定水分率の問題なら実長がなければならないのだけどもない話がほとんど)、染から上がってくると綛上げしたりしているのでさらにロス、綛をチーズアップするとさらにロス、整経するとさらにロス、織るとさらにロス、加工するとさらにロス、傷以外でもロスは見ておかないといけない。

麻織物なのでベストを尽くしても50mとかだとキズが含まれてしまうことが普通だったりするものの、基本、クリームの一番おいしいところを選んでお渡しするような感じで、仕上がった一番状態の良いものをなるべく選んでお渡しするようにはしている。手元には、その残反や、製造途中のたくさんの片づけものが残ることになる。捨ててしまうのは簡単だけど、林与のもったいない精神が働いて、手元には中途半端な状態のものがどんどんと増えてくる。試作品の生地とか、最終バージョンではないので、打ち込みがいろいろだったり、調整途中の生地だったり、生地を試作する時には、想定している規格だけでなく、自分なりにいくつかの別バージョンを手元につくってみておいて一番いい感じのバージョンを採用するようにしていたりするので、そういうのができることがつくれる現場をもつ強みだと思う。

そういう亜種を捨ててしまうのかというと、自分自身の記録としては貴重で、しかも、本生産よりも何倍も時間を掛けて数メートルを織っているので、本生産の仕事よりもプロとしては意味のある資料であったりする。その資料だけでなく、その資料を触ってどの風合いや感じが一番良いのかを自分自身が感じられる感性があるのかないのかが、なかなか現場で織物を作っている人にもいないのが実際で、何百回とか、ものものづくりをしていく中でそのたびにいい感じなのかどうなのかを判断する経験を積み重ねて、自分なりに布の良し悪しの基準があることが大事であろうとは思っている。