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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
棉生テキスタイルさん
2021年12月19日
すごく柿渋系の味のある調和の取れたものづくりをされるのが亀岡の棉生テキスタイルさん。テキスタイルマルシェで販売されている生地のなかに一つだけ浮いてしまっている、すごくシュールな柿渋があった、キューピー柄の布を柿渋にしたもの。違和感バリバリだったけども、そういうパンチに惹かれる人もいるだろう。私自身がなんかそのシュールさにそれに逆に興味が沸いた。尋ねてみると、このキューピー柄の布が余ったのでどうしても売れないので柿渋にしてみたというだけのことだった。味の良いテイストのものばかりの親方が、現代アーティストのような「瀕死のキューピー」みたいなシュールな布も生まれてくる理由がさっきの理由。普通のアーティストだったら、自分のテイストと合わないものなんて取り合わないだろうけども、この方はやっぱり一つの布すらも救おうとする力を持っておられるんじゃないかと思うのがその辺り。そういうのが綿生さんに惚れるところ。一つの行き所のない布を救おうとされるってやっぱり温かい気持ちをもっているひとでないとできないこと。自分のテイストを捨てても、自分の力で救いたいなあみたいなものがあったりされるのがいい感じ。

テキスタイルマルシェの時にも綿生さんのブースに若い男性スタッフがおられて、棉生さんも新しい方を雇われ甲斐性があるなあと思ってあとで聞くと、学生の人が自分の生地をコンテスト用に買ってくれたのだけどあとで代金が払えないというので代金貰う代わりにアルバイトしてもらったということ、布だけでなく若い人にも生きる道みたいなものを自己の損得犠牲して説いておられる。自分よりも自分を裏切るような結果になった若い人に売り場に1日一緒に立つような経験のチャンスを与えて許してあげるような心の深さ。心の広さみたいなものがすごいなあと思う方。

すごく親心があって若い人と接しておられる。よく、職人とかがすごいというけど職人というのは子供だと思う。親方になって職人とか他の人の面倒をみてやっと仕事が成り立っていて、小さな一つの世界も他の人に支えられているだけのこと。もらえるお金も失ってまだチャンスも若い人に与えようとするような大きな器で、困るけどそんなもんやと割り切っておられ、そういう人生観が当たり前に調和のとれた柿渋のテイストの布を世界を生み出し一つの世界をつくれるような自分に対する厳しさの基準なのだろうと思う。救うためにキューピーの柿渋とか、自分の布を買ってお金を払えない学生を救うためにチャンスをあげ許してあげるとか、最高の人だと思う。大変すぎるだろうと思うけど。

久しぶりに思い出したので、電話でお話した。京都に何店舗か持っておられたお店をすべて閉じられたというお話で、それはそれでびっくりな話。一つお店閉めるのも大変だろうけども4つも5つも。コロナの影響をもろに受けられて、本当に大変なここ2年ほどじゃなかっただろうか。それでいて、本業での大きな新しいことに再挑戦ということでそれも最後ボトルネックがあって、本業の本業のサンプルつくりから今はされているというお話。大変だろうなあと思う反面、この方はやっぱり生き生きしておられてそれが作られる布に出てくるのだと思える。他とは違うダイナミックな人生観の味みたいなものが布を探しておられる方が求められる布みたいなあたりなんだろう。

コロナで外国人観光客でにぎわっていた京都のお店が閉じることになっても一方で、柿渋がコロナに対して効果があるなどいろいろとやっておられることが、その局面局面でどれかが脚光を浴びて成り立つようなお話。研究熱心なところと行動力を持っておられ、覚悟も決めておられるので、いろんなうまく行かないことも吸収しつつ、采に前に動かれている。