2022年06月06日
今日は、雨の中、静岡県に行ったので、掛川の福田織物さんに始めて訪れた。現場も織機がたくさんあって動いていた。本物の織物工場らしい風景。巻がどれも当たり前にやっぱり大きいので福田さんの量産は規模が大きいんだなあと、林与の量産は300mから多くて500mくらいのひと巻がほとんど。あんまり大きいと運べないから。
どの織機も調子よく動いていてほとんど切れることはないけども、インチ100本を超えるような高密度織物だけに織れるスピードは、縦横密度それぞれ密度は半分くらいの林与の麻織物とあまり変わらないのかもしれない。経糸が切れる分とシャトルで織っている横糸交換の作業の分が手が掛かるあたり。
浜松では染色工場が少なく先染めがほとんどないということをいわれていた、福田さんも後染めが主体で組織や加工方法などで工夫されている。綿織物というのは糸が細く高密度なので総本数が1万本とか超えているんだろうなあと思う。それでも縦白ばっかではなく、色のついた縦のものをいくつも織っておられたので無地ライクな先染も得意とはされている。福田さんも麻織物にも力を入れておられるので麻世界の話をしても興味深く聞いてくださる。
福田さんは今アパレルの織物に集中されようとしているような感じで、林与はアパレルの織物のウェイトを減らしているような方向性に違いがあったりする。麻織物というのは織れないとか収縮物性とか堅牢度トラブルが多いので、一般的な1か月で着分、2か月で量産のような生産イメージには落とし込みにくい、しかも今のコロナ禍ではどこも現場が弱っていたりとか、糸の入手からして決まった銘柄指定で使っていたりすると入手が不確実な要素が高くなって、糸が1か月2か月先しか手に入らないとかだと仕事を受けるともうすでにタイムリミット超えているとか。特に昨年度の作柄が悪いので今年の生産は林与は大警戒中なのである。
林与は、数年に一度は150番手とかも織っているし、100番手ものりを付けずに織っていることもある、でも糊を付けた60番手クラスの織物が織れないことや、糸質がねちっこくて縦切れが止まらずに引いてしまうとか、作柄の悪い年には糸値も上がって逆に問題は多くなる。ラミーなんかも、1本の経糸切れを直そうと綜絖を開いて糸をさばくだけで周辺の糸がぽろぽろと切れてしまうような糸にあたるとか、織るのが無理で縦を何度も作り直す時もあったりする。麻織物は糊のついた経糸の準備が非常にリスクが高いのである。そのような状況下で、麻の細番手の先染めは、アパレル向けの50mでキズ5か所以内とか、本当に難しいレベルだったりする。あと色ごとの収縮率の違いなども麻の先染め織物をつくる際には注意が必要なあたり、麻では無地ライクなものが増えてくるのもよく分かる。