2023年02月26日
今日から3日、篠山ターターンの整経で、ササタン工房の渋谷さんが林与で作業。今の時代にリネンの総先染めのチェックはゴージャス、麻織物の本場の綛染めの本格派リネン。糸を巻くおじいさんが引退なので、林与の中で綛からチーズにアップしたのをカウントで割って順番に立てていく。今日から3日で大柄3配色、中柄2配色小柄1配色の6縦を整経。
林与の知る限り、チェック柄の最大のブームは、昔チェッカーズというグループが一世を風靡した1980年代。テレビで人気の芸能人たちがチェック柄を着ていると、どうしてもファンの人たちがチェック柄を求める。他に有名なチェック柄では、バーバーリーチェック、安室奈美恵さんが身にまとったことで、若い女性たちの間で一大ブームが巻き起こった。他にも、AKB48もスカートはチェック柄が多かった。
先染め織物というのは、普通の織物の中でも手間がかかり高価な部類に入るので、デフレの2000年あたりからは無地ライクな流れが続いている。しかも麻業界では、晒、生成、黒といったナチュラル系の一番シンプルでコストを抑えた織物が主流となった。今は、チェック柄の生産というのは生産に手間がかかる。篠山タータンの場合には、ひと柄に、縦5色から6色、ヨコも5色から6色使う。多色使いの大柄にすることで普通のリネン織よりも何倍も難度の高いのが篠山タータン。
渋谷さんも今回で4回目の林与での生産作業のヘルプ入り。デザイナーさん自身が、自分の作る布をデザインするだけでなく生産に携わるというのは、林与にとっては色柄の確認なども間違いが少なくなりよいことなのだけども、私自身、デザイナーさん自身が作るという部分により深く立ち入ることは、アーティストらしいものづくりのスタイルではないのかと考えたりしていて、こういう形のものづくりも珍しく、普通だと織物工場は嫌がられたりすることも多いのだけども、林与の場合にはデザインするだけでなく自分で作ってみませんかみたいな提案もさせていただくこともある。お客様に布の話をされるときにもご自身が作業して作られた部分がより価値を高め、林与でおつくりはさせていただいているけども渋谷さんが先染め織物で一番大変な整経の準備作業の部分を担当されて生まれてくるという裏のストーリーが隠されている。
デザイナーというとクリエイティブなところに特化したいという考えもあるだろうけど、デザイナーが自分がデザインするものごとの苦労の部分を覚悟できなければ、ものづくりの価値がどこから生まれてくるのかの理解すらもできているのだろうかという話になってくる。作業の部分を馬鹿にしてたら駄目で、ち密にデザインされた色柄を織物の規格に落とし込んで厳密に再現しようとすると、色柄をデザインする以上に、頭も使うし、1本1本の糸を染色ロットなども含めて区別して使う先染め織物の大変さだと分かり、そういう知識と経験がデザイナーがデザイナーたることにも生きてくる。問屋さんの現場経験のないだけでなく、嫌がられているレベルのテキスタイルデザイナーさんたちが良い時代にしか生き残れなかったのも色柄しか組むところで止まってしまって深い部分までのテキスタイルの経験がたりなかった辺りではなかろうかと思う。