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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
プロの必要性
2023年10月07日
普通に生地を生地として使う場合には問題がないのだけども、林与の生地を使って製品をつくられると問題が起こってくることがある。単純なケースでは、製品の表面に、合成繊維のものと麻の生地を一緒に使って縫い合わせたりする場合。合成繊維の糸は均一でしかも糸目が碁盤の目に通っている、一方で麻生地でゆったりと仕上げたものは、糸目もゆらいでいて、また糸のフシも目立つ、糸のつなぎ目なんかも目立つ。

機能的な問題では、製品に林与の生地を他の何種類もの生地と一緒に使われて林与の生地に問題が現れて、その会社の方が林与の生地に問題があるとメールなのだけども、林与の生地で今までそういう問題は一度も現れたことがないし、たぶん他の生地が原因なんだろうけども、その会社さんにしても使われているいろんな生地のことを理解されずに使われていて、でも解決能力はその会社にはないだろうから、林与が製品を送ってもらってどの生地に問題があるのかの原因を見つけ出す作業。原因の生地がどの生地なのも特定し、その生地を作られたメーカーに溶け出すような糊剤や樹脂を使われていないか確認されたらどうかという返答をさせていただいたけども、新しいモノづくりにはトラブルはつきもので、そういうトラブルを解決する能力を持っていないと、製品を買われた一般の消費者の方が一番困る話。

林与の染色工場さんや加工工場さんは限定的でそれには理由があって、ありえない問題が起こることを防ぐためでもある。あたらしい薬剤や技法などはいろんな問題を含みがちで、安心のできるものを提供するためには実績のある定番の染、定番の加工方法が一番である。何十年にも及ぶ何十万メートルの過去の実績で問題がなく安全であることが証明もされている。

生成の麻生地を化学染料で染めて色が落ちるみたいなのは安全性の面で気を付けないと、草木染とかならまだ色素も天然系で良いのかもしれないけども、本来はしっかりと結合していることが前提の染料が色落ちするとかは良くないモノづくりだと林与は考える。硫化染料など色落ちを想定した染料なら別だけども、生成りを染めて色が落ちやすいという現象は途上国などの化学染料染めではよくある話でよくないものづくりの典型で、洗濯時の移染程度ですむならデメリット表示で単品洗いとすればよいだろうけども、着用時に皮膚への付着や吸着すらも心配される。不純物の多い生成りを精錬もせずにそのまま染めると安く染められるが色落ちはしやすい。色落ちをさせようとすると手軽に安く染められる直接染料を使えばもっと色落ちしやすくなるがそういうのは安い世界のものづくりにありがちな作り方。

京都で反応染料で染めた時にも加工で3分の1の色に落ちたことがあって、京都の染料店の方の紹介の京都の家庭規模の染工場では工業生産品としては厳しいのが明らかだったりで、染める前にも色落ちは大丈夫ですかと3回くらいは尋ねたけども、反応染料だからフィックスもなしでも色落ちはしないといっておられたが、技術力の差というものは麻専門の染工場とは歴然とした差があり、おみやげ物屋さん向けのアイテムと百貨店アパレル向けのアイテムの差だろうと思う。林与も家で、藍で染めたりもするけどもそれは堅牢度はよくなかったりする。作家的な、一点ものならそういう染でもよいのだろうとは思う。民芸系には工業的な基準は適用されないとかもあったりで、一般的な工業系の検査基準だけがすべてではなく、コスチューム的な着物など色落ちしても妥協できるような価格のものもあるだろうし。(京都にも高品位な染をされているところはたくさんあるのは知っていて、麻の染を得意としている染業者さんでないと林与的には合わないのだろうと思う。)

林与の家は近江上布の織元だったので、染も家の中でボイラーももって昔は本格的にやっていて、与一爺さんが京都の染料会社とやりとりして、近江上布の絣の中でも一生ものとして使える一番くらいに堅牢な染を目指していた。林与の麻の濃色というのは濃いのが特徴。湿摩擦堅牢度は若干悪くなっても色味を大切にするのが林与の特徴で実績で使っていただいていたりもする。そのあたりが林与の総合的な妥協点。

分業でのものづくりというのは、製品に想定できない問題があることが多いので、最後の商品をテストなどして叩いておく必要はあるだろうと思うが、そういうテスト環境みたいなものを持っておられないところも多いので、商品企画される方にお勧めするのは、自分が企画して開発されるなら自分でその商品を使って洗ってみたりして評価することが大事だということ。使ってみると自分の企画の問題点なども見えてきたりすることも多いだろうし。企画される方への大きなヒントで、改良へのポイントにもなる。

ある生地屋さんに行ったときにも若い店員がたくさんおられて、林与と話するのを楽しみに話しかけてきてくださる。林与さんキッチンクロス縫製できるところ紹介してくれませんがみたいな話で、私がいうのは、自分たちで縫製してみるのも良いんじゃないですかみたいな話。いろんな生地を持っておられて、それがキッチンクロスに店頭でなるみたいな自由度ってよいだろうし、店員さんがお客さん相手だけじゃなく、縫製のこともできればお客さんとも会話は広がるだろうし、自分自身が染めたり、加工したり、ミシンも踏んだりすることがあるので、他を探したりよりも自分でやるほうが簡単なこともある。そういう話すると想定外に思われるのだけども、そういうのが普通の感覚だから林与の仕事感覚は変だとか思われる。だから、他とは違うものづくりやこだわりの部分があったりして興味しめしてくださる方も多い。