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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2024年07月16日
先々週の週末と今週の頭に、仕事じゃないのに織物を経験したいというお二人が糸編の宮浦さんのご紹介で2回の1泊2日で林与の現場を体験しにきてくださった。最初の1泊2日は、織物の現場の作業がお二人にとって大丈夫なのかどうかということを判断するためで、その最初の一泊でもそれなりに織物工場の現場体験だったと思う。縦繋ぎは来る前にできるようになってきてから来てくださいということで一つのハードルをクリアする状態でお越しいただいたのだけど、織物の現場の人でもあまりなじみのない、糸番手に関する座学を2時間ほどやって、基本の麻織物の規格みたいなものをたとえに、1mの縦横の糸量の計算をできるようになってもらうのと、織物に使われている糸の番手の判別方法なども説明して、林与が普段やっていることをやってもらうような形。

1時間の座学のあと午前中から現場に入ってもらって、経糸を繋ぐ、縦繋ぎの練習を2時間くらい、そして次にはシャトル織機を動かしてもらおうと、いきなりシャトル織機の使い方を教える。シャトル織機人も台によって、いろんな癖もあって、癖の強い台も経験してもらいながら、扱いやすい台でシャトルを右から左、左から右へ飛ばして、ぴったりと止めるような練習を2時間くらいお二人が交代しながら経験してもらって、シャトル織機につきものの、シャトルの管を巻く作業や、使い終わった管を片付ける作業なども並行しながら、現場の検反機で織りあがったストール生地を耳糸を切りながら検反する作業を経験してもらう。

たぶん、ご本人たちはいきなりのいきなりの作業ばかりで戸惑われたことも多かっただろうけども、そういうのを最初から乗り越えられるのかどうかというご本人たちの地力みたいのを確認するために最初の1泊2日で、実質、林与が仕事としてやっていることを見よう見まねで簡単な説明だけで、最初からやってみませんかというような、織物工場で何十年の職人さんでもそこまではやらないことを、織物の現場経験もない初めての方に、林与が簡単な説明だけで見よう見まねでやってもらうような力があるかどうかを試す最初の1泊2日。でも実際の作業時間は半分くらいで、半分は林与と雑談的な時間で実際の作業時間は1泊2日で8時間とか10時間くらいだったと思う。次に来られる1泊2日で、どんなものを作りたいですかということを連絡してほしいとは伝えておいて、連絡もそれぞれ正しく頂いていたのだが林与の確認ミスながらもあって、とりあえず一つのつくりたいイメージのものを今回の1泊2日の作業で作り上げるという、林与のサンプルづくりと同じ感覚を共有してもらうような現実的な仕事レベルの作業。

林与も難しいとなればその部分を助けることはするけども、基本出来るだけのことはお二人にできる限り任せてやってもらう。初めてでも見よう見まねでやってもらう。こういう経験というのはなかなか経験をすることも難しく、林与自身がトータルに織物のすべてを自分自身がというのは、40歳のころで、それを志の高い方たちなら経験してもらいたいなあと思ったりする。仕事としてできそうなことがあってもそれを仕事として成り立たせるかどうかというのは覚悟次第なので、林与としては単なる技術的なことだけじゃなくてやろうとおもえば、ゼロからでもマイナスからでも今の衰退する日本の繊維業界の流れのなかでも、普通とは違う自分自身が支えていくような感覚があれば、それは世界でも珍しい感覚でそういうのも共有したいなあと思っていて、林与が評価する方々というのはそういう方がたが多く、林与自身もそういう思いのある方々とのつながりに救われて今も日本の麻織物の本場といわれた近江湖東産地の麻織物を残すことができたようなところがある。

今回は宮浦さんのご紹介でお越しくださった方でなぜ日本の織物の産地のことを学ばれたいのかと思うときに、また自分自身が織物の現場を経験したいという思いをもっておられるのかを林与が考えた時に、自分のつくりたい布を生み出すということを自分自身で経験してもらうことが一番良いのではないだろうかと思え、限られた時間の中でできるだけご自身たちで作業もしていただいて自分自身が作業することで糸が織物にできあがるまでを経験してもらうのが、織物のことを学びたいと思われる方にとっての究極の答えそのものじゃないのかと思えたりして、2回目の1泊2日で、整経作業やシャトル織機を自分で動かして一つの布をつくってもらった。限られた時間のなかで詰め込みながらなので新しいお二人にはもちろん自分たちの能力以上のことを要求ばかりされて大変だったろうけども、何十年の経験の職人の人たちでもここまでの作業の凝縮というのはなかなか経験することのできないことを経験もいただいた。織物の現場の仕事の現実というのがよく分かっていただけたろうと思う。幸運にも外は時折大雨だったので夏にも関わらず現場はそれほど高温にもならなかった。

林与もお二人ともすべての作業に対して前向きで途中でギブアップされることもなく最後にキッチンクロスが出来上がったことがうれしく、林与にとっても今回の1泊2日の思い出の詰まったキッチンクロス。林与の仕事の日常を味わっていただいたような感じで、初めてばかりの作業で、お二人には大変だったろうなあとは思う。林与がサポートする力もそれなりに必要だけども、それよりも一番大事なのは実際に初めて作業をしてもらうお二人のやる気と力、乗り越えないといけない自身の中の壁をいくつも乗り越えたからゴールにたどり着け一つの布が出来上がった。お金をもらう仕事でもないのにこういう作業を自分から経験したいと思われるような方というのはものごとを企画して成り立たせるのには適していると思う。林与自身成功をしているとも言えないけども、余力があれば自分自身でお金を労力をつかっていろいろと種を蒔いているようなことの連続で、日本の繊維業界でも自分じゃなくても頑張っておられる方が成功をしてもらいたいなあと思う気持ちは強い。

分野はちがったりしても、やっていることが参考になるところも多いカモしれないし、普通に考えると絶対に無理そうなことでも頑張ってやってみれば達成できたりすることもあって、そういうのが特別な世界で、そういうのは同じ物事でも、やる人によって結果は真逆だったりする。自分自身の能力を高めておけばできることは増えるだろうし、その能力を最大限に発揮すれば特別なものも作ることができるだろうし、特別なこともやれると思う。

今回も、1泊2日で、織物の現場経験のない初めての方が自分が作りたい布を整経からシャトル織機で織るまでの作業をこなしながら最後キッチンクロスに作り上げるという特別すぎるようなことで、工業的な生産工程を経たもので今後量産も可能な、品質的にも販売してもらえるようなクオリティを兼ね備えたもの。特別なものというだけでなく、特別なものを自分でつくるというチャンスそのものが特別すぎることで、布を扱う方がブランドの方が、機屋というものにあこがれを感じてくださっていたりするのも、機屋という布を生み出すことのできる神秘的な部分だろうと思うが、能力と覚悟と行動力があるなら自分自身がその部分を思い切りやってみられるほうがいいんじゃないかと林与は思っている。現場に来られた方でも思い切りできるかたとできない方がはっきりと分かれ、それは林与で現場経験をするまでのその方の仕事の経験や人生観みたいなものがうかがえ、逆の人生観をもっておられたら適応するなんて無理だろうし、経験としても苦痛でしかないだろう。林与の会社の中が布であふれているのも、織った布のほとんどを捨てることはないから、自分が織ってみると分かる話で、当たり前に無駄な部分ができあがってくるけど、それをどう活用するかというのも大事な話で、それを考えるのも林与自身の仕事の部分。今回、4枚プラス3分の2くらいの出来上がりで、その3分の2のものもキッチンクロスに縫い上げてくださって残る形で使ってもらえそうでありがたい。もしそうでないならその3分の2くらいのものでも、林与は捨てないで事務所にハギレとして残しておく話で、散らかった布がまた1枚増えるがそれはそれで林与の織物の歴史の断片で悪いことでもないし。今回、お越しくださってできあがったL25のキッチンクロスも林与の麻織物の歴史の1ページ。やった内容自体、日本の織物業界で布をつくるのが難しくなっている流れの中ではかなり濃い内容を試み、達成することができた。林与も今充実感でうれしく、また日々の作業や次の目標に向かって動くときの糧になる。