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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
WOVEN MOONLIGHT (織り上げられた月光)
2011年02月03日
古代エジプトではリネン織物というのは、WOVEN MOONLIGHT(織り上げられた月光)と称されることもあり、月光を織り上げたような美しさをもっていたと思われます。何千年も昔というのは、漂白技術も加工技術も化学的な部分に関しましては、今よりも劣っていたはずです。ですが、そのように称される背景には、何千年も昔のリネンには、今のリネンにはない、そう呼べるだけの光沢があったのではないかと思うのです。

私自身は、自然のリネンやラミーが持つ本来の光沢というのはシルクに迫るあるいは、シルクを超えるものと考えています。リネンというのは、これほど細くて長い繊維が取れる植物はないと言われます。麻業界では、一般に、ラミーのほうがリネンよりも繊維長が長いので紡績がしやすいといわれていますが、取り出せる繊維の細さと長さは似ています。

単に細いだけではなく、そのような糸というのは光を反射することで、この世のものとは思えない光沢があったと考えるのです。リネンというのは丁寧に加工してあげれば、科学的に漂白をせずしても自然の力で不純物を取り除いて上げれば色が落ち透明になるものなのです。光沢感を出すということは透明にしていくということなのです。それが、1本1本の糸が光を放つ月光を思わせる世界だったりいたします。

色を抜く際にも化学薬品を使わないので、出来上がった糸の色を、生成と呼ぶのか、晒と呼ぶのか、どう呼んでよいのか分かりません。WOVEN MOONLIGHTにちなんで、その色をムーンライトとでも呼びましょう。その糸というのは、普通のリネン糸とは、あまりに違いすぎてリネンと呼ぶことすら難しいのです。そのあたりが、「ITS VERY SINGULAR BEAUTY(その類まれなる美しさ)」と形容される部分じゃあないでしょうか。

以上のような解釈は一般的な解釈とは乖離した、経験や資料、手元の糸をベースに林与の考えるところなのですが、日本の麻織物の世界でも同じ世界があり、麻といえどもいろいろで、きぬあさと呼ばれるほどの糸の世界が日本にもあって、それは普通の糸とは別次元のものとされていたので、リネンの世界においても細い番手を極めていくときに、光沢と透明感が生み出されたのだと考えています。

月光を織り上げたと思ってもらえるような類まれなる美しさを持ったリネンを織ることができればよいなあと、幻のリネンプロジェクトは始まっています。ロマンを求めて、ゆっくり、ゆっくりと進行中です。