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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
チェック柄の着物
2011年02月06日
倉庫には、本麻60番手をコンニャク糊加工した糸が各色たくさん残っています。着物に使うのが一番よいのではないかといろいろな甚平や浴衣向けの先染柄を作ろうかと考えています。先染め着物のシリーズなんか面白いのではないかと思います。ストライプは多いですが、チェック柄の小幅織物でつくられた着物というのはかなり珍しいのです。

先染というのは、プリントよりも奥の深さがあるのと、中まで染料がしっかりと染まっているので、色が長持ちします。着物でも、プリント柄や先染柄などで、白地のあるものというのは、その白い部分が黄ばむことが多いので、長くお使いいただくことは難しいことが多いのです。白地が部分的にあるものの場合には、長く使える良いものを作ろうとすれば、本麻の場合、白い糸に関してはしっかりとした加工を施しておかないと駄目ではないかと考えます。ただし、白無地の場合には、晒ことが出来ますのでその限りではないかもしれません。

昔の着物で、長年の着用に耐えるのは、しっかりと染めたものがほとんどです。白ベースのものなどはどうしても黄変してしまうので、難しいのではないかと思います。リネンの場合には、オフ白や生成というのは、化学変化の度合いが染めたものに比べると比較的少ないので、天然繊維としての性質が残っていることになり、変化しやすいのです。しかしながら、染めた染料や染め方が悪いと糸が弱る原因となるので、染めの質が悪いと染めたことで糸のほうが弱くなっていたり、染料の中の物質が変化して色が変色して見えるケースも多々あります。

麻糸というのは糸が染まりにくいですので、麻専門の染屋さんの染でないと長持ちしにくいことが多いのです。長く使える良いものを作ろうとするときには、染めに関しても、実績のある染屋さんであることが大事と思うのもそういう理由です。倉庫の染糸を見ていて、同じ原糸を使用したとしても、染工場さんによって染の技術と品質の差というのはかなりあるのを感じます。やはり、麻を得意とする染工場さんの染だと麻糸が麻糸らしく綺麗に染まります。

これは、加工に関しても同じで、林与の倉庫に眠る昔の反物を見ましても、他産地で加工したものというのは、綿ライクであったり、ウールライクに仕上がることが多いのです。暖かい系に仕上がってしまうのです。皆さんお気づきになられた方もあるかと思いますが、海外のリネンというのはある工程が行われていないケースが多いので、もやもやと起毛したような感じであることが多いのです。林与も秋冬物のリネンを作るときにはその工程をスキップしますが、初夏物の場合にはその工程は非常に大事です。清涼感が足りずに、もっちゃいなあと思うときには、その工程が不完全なことが多いのです。

商談会で、林与のビンテージなリネンをご覧になられて、海外のあるインターナショナルブランドのバイヤーさまが、これは何?とお尋ねになられましたが、たぶん、糸がしなやかで綺麗過ぎてリネンに見えなかったのだと思います。リネンの糸というのも糸加工を丁寧に行えば糸もよりよい表情になり、織りあがった布というのも通常のリネンとは異なった顔になります。そういう高価な糸加工というのも世の中では受け入れられなくなりだんだんと消えていく運命にあるのです。

糸の表情が変わるほどの糸加工というのは、昔から原糸の値段よりも高いことが多いので、それを施すのにはなかなか覚悟が必要なものです。世の中で、リネンにおいては、生成やオフ白の生地、後染、プリント生地が多いのはそういう背景があります。リネンに老いても、高級アパレル向けは総先染が多く、カジュアル向けは生成やオフ白ベース、後染やプリントが多いのもそんな理由からです。もちろん、後染やプリントにも高価なものはたくさんありますので、一般論ではありますが…