2011年07月26日
昨日、加工工場さんにいきまして、小幅の本麻の織物の仕上げの調整に立ち会いました。本格的な小幅の織物は、耳が命といっても過言ではありませんので、仕上がりの幅の問題も含めて、どのくらいのシボの高さにするかなど仕上げてくださる職人さんたちも厳しい要求に応えようと動いてくださっております。
小幅の織物が値段が高くつくのは糸の量が少なくて済むだけで、織るのも加工も幅の広い織物と同じだけの工程を経るのです。しかも、生地にサイズが存在し、耳まで綺麗に織る努力が必要となってくるのです。要求される完成度というのは何倍も違うという気がします。皆さんご存じない方も多いかもしれませんが、小幅の織物というのは今は海外で生産されることが多いのです。コスト面で非常に高くつきますので…。
日本の着物用の生地というのが海外でつくられるというのは、なんだか、日本的な価値があるものをと思って買われる方にとっては、残念なお話だと思いますが、林与も小幅織物を本場近江で生産していても本場物というのは価格の高さが伴いますので、そうたくさん流れるものではなく継続することすら難しいものであると思います。
本来は、小幅の着物用の生地というのは、手織り用の糸というのがありまして、アパレル向けの糸とは糸からして違ったのです。今は、林与でも、糸をアパレル向けの糸と併用しておりますので、昔のものほどの価値というのは詰め込めてないかもしれません。元の糸が何十年も昔で1kg数万円はするというのが本麻の織物の世界で、織り上げられた近江上布などは当時でも何十万円というのが正しい価値なんだと思います。
昨日はコラボの方とお昼時間に渡ってお話をさせていただいていて、近江湖東の産地のある機屋さんのお話をお聞きすることができました。残念ながらもそこは1年前に廃業をされたのですが、林与とは違う和装を中心とした麻織物なのですが、実際にご家族で織機を動かし織り続けられておられたと言うのをお聞きすると一家で非常に特色のある濃い世界を守り続けておられたのだなあと実感いたします。
麻織物に関しては、本場の近江産の織物に特別の価値を感じておられる業者さんというのが、特に京都、大阪に多いとは思うのですが、今もあるものだと強く感じるところです。いろいろとお話を聞かせていただいて林与の知らない近江湖東産地の麻織物の歴史を知ることも多いのです。いずれにせよ、本場のものというのは他産地のものに置き換えられ、消え行く方向性にあります。
ブランドの正規品であっても、素材や産地が偽装という本物ブランドが偽物みたいな問題も多く起こっては来ており、それを取り扱われる百貨店の皆さまも、展示会でお会いしてお話しするに素材に関しての正しい知識を求めようと必死になっておられるのを感じます。
大手さんのSPAリネンに関しても、フランスあるいはベルギー産などと適切な表記がなされるにいたったのも、それは難しいだろうという当たり前の業界の認識が、ようやく広まった結果だと思います。リネンの業界の動きをみていると消費者を騙さない適正な表記というのが必要だと感じます。
今は、アパレルさまでも、ハンドメイドの方でも認識のある一番初歩のリネンとラミーの違いからお話をする時代ですので、そういうアパレルさまが、原産地などの厳密なお話にまでしっかりと対応されるのは難しく、アイリッシュリネン100%使用をつい最近まで謳っておられたある大手のブランドさんにしても北アイルランドでのリネン紡績がとっくの昔に終わってしまっていることをご存じなかったというお粗末なお話でした。ブランドや百貨店の方ですらもが誤った説明に飛びつかれて、うたい文句にしてしまう時代で、一般の方のほうが知識が豊富なのを展示会などを通じても感じます。