2012年01月14日
林与のレピアのドビーはドビーカードを使います。ドビーカードというのはプラスチックでできたロール状になったシートで、パンチングマシーンというタイプライターのような機械を使って、ドビー枚数に応じた穴を開けていくのです。てこの原理の感じで、穴を開けたところのドビーがあがります。シャトル織機のドビーもペックというネジくぎと木製のバーを使いますが基本的には同じ原理で、この仕組みは、基本的にジャガード織機も同じで、ドビー枚数が多いイメージの感じです。
今の時代は、カードや紋紙を使わない電子ドビーや電子ジャガードが当たり前になっていますが、林与の織機はそれを考えるとかなり古いタイプです。アジアやヨーロッパの大手のリネンテキスタイルメーカーなどは、最新の織機に入れ替えることで生産性を維持していますが、日本の機屋というものは職人さんが若いときに織機が新しく入ってそれを1代何十年も修理しながら守り続けるようなケースが多いものです。新しい織機がほしいなあと思うようなこともあったりはしますが、古い織機を守って作っていくのも昔堅気でいいじゃないかと思います。
昔の古い織機で、ビンテージアイリッシュリネンやリネン150番手が織れるけども、今の織機では織ることができないというのも、どこか不思議な話です。また、現在の一般的な織機では、織れないほどの細いリネンの糸が紡績されているということもアイロニーではあります。7年ほど前に林与が予想し動いてきた中国リネン紡績の細番手化が現実なものとなり、この数年はその細番手をどう織りこなしていくかに動いてきました。
そういう無駄なチャレンジ経験を積めるような余力が今の繊維業界にあるのかというとなかなか難しいものだったりします。理論や技術的にはできることでも実際にやろうとすると理論や技術じゃあない部分があったりするのです。熱意と忍耐の部分です。本年度は、現行の糸で、リネン150番手のアパレル向けの先染織物に挑戦することにいたしました。これというのは、昔のヨーロッパの高級なリネンの世界の復活に近くなっています。数十センチを織るのに何時間も掛けるような手織りを超えた世界を経験するのもありで、単に織るだけでなく、どこまで味のあるものに仕上げられるかまで挑戦したいと思います。