2012年01月19日
展示会ごとにカラーのディクテイションあります。これは、企画としての展示会の全体的な統一性をもたせるためには大事なことです。一方で、林与には、自社の色のテイストというものがあります。それというのは、画家が絵を描くときに使う独自の色の好みに似ています。自由度を高めるとそれは作風を消すことになります。林与の場合には、絵の具は基本リネンやラミーの麻の染め糸なのです。
海外の展示会などではリネンの先染で色のついた世界があったりするのですが、色の感じがまったく違うのです。ヨーロッパのリネンにしてもアジアのリネンにしても日本のほかのリネンにしても、林与のリネン糸やラミー糸というのは色味が独自で色数も多いながらも色をいつでも再現できるように色ぶれの少ない形で色を残し続けています。逆にいうと、一回限りの色というのを作るのを嫌う傾向もあるのは事実です。それをすると林与の麻の世界の色の統一性というものがブレてしまうからです。
アパレルのデザイナーさんがシュミレーション下さることもあって、それに近いものを機の上で再現するケースもあるのですが、それぞれの色糸を一番近い色を選べば一番よい感じのものができるのかというと、全体の色の強弱のコントロールというものは非常に難しいものです。敢えて、デザイナーさんの作られたいイメージを尊重しながら、色を触って全体の色の統一性を持たせることをすることがあります。実際に絵を描くのが林与的なところで、そこに林与でつくるものづくりの力の差が出るのではないかと思います。仕上がりを見て色を校正するようなものですが、通常、着分を作った後に色を変えられないので、着分をつくるときにできる限り色調をよいイメージに調整するのです。
林与の色というのは、何十年も使い続ける色がほとんどですので色ぶれというものを気にします。何十年もその色の系統というものは保たれて先染の織物が作られます。これは、日本のテキスタイルのカラーとしては生き残った色たちで、日本の多くのラグジャリーなブランドさんの高級なイメージを支えてきた春夏の色味であって、麻の色のクオリティです。強いて言えば色にしても日本らしいテイストというだけではなく日本のクオリティというものがあるのではないかと思います。アパレルさま向けの自社提案柄では、原色をほとんど使わないところもありきたりにはならないことのひとつです。
そのあたりが、イギリスやスウェーデンのプリント柄の色調と違うところで、林与の色のテイストは麻の世界の流れを汲んでいるので和のテイストあるいは草木の色を思わせるようなワビサビの世界の色なのです。今の時代に、衣食住が変わっても、変わらない日本の自然の中の日本人が愛してきた色味というものが今も生き続けているとは思います。色を守るというのも芸術的なセンスだけでなく、どこまで自分の作風をもって布を作るのかというところがあるかと思います。一方で、完全なOEM的なご依頼もお受けしてはおりますので、製造業として他の方のものづくりを支える部分も大事ではあると、使命というものはいくつもあるものだと分かった上で自分の味を残しています。