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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
コンバーターさんの資質
2012年01月21日
作り手というのは良いものをつくりたいと考えていますし、最終的なお客様というのはよい物や本物を欲しがっておられるのですが、途中の方というのはどうしても安く買って高く売ろうとされる傾向がありますので、間に入られる方の考え方というものはものづくりをする上で非常に大事です。ものづくりを理解されないかたが間に入られますと、まず良いものというのはまず作れなくなります。そういう方というのは他と比較したり他で安く作って利益を上げようといつも考えられているのでお話していてもいつも厄介です。

以前もアパレルの方がこられて商談をしていて、アパレルの方は弊社に注文を出したと思われているのに、問屋さんは弊社の見本を使って他で安くつくられていて、商道徳に反するとアパレルの方に説教をされて恥をかかれて気の毒に思うこともありましたが、弊社のデザインをコピーしただけではなく産地偽装にすらつながります。百貨店でリネンシャツが1枚が4万円程度で販売されいた製品だけに、間に入られる方の損得勘定一つで作り手も買い手も騙されて、看板を背負っているブランドや百貨店で売られている商品の謳い文句すらもが嘘になってしまうというのは厳しい話です。林与とはものづくりや商売に関しての考え方がことなりますのでそういう方との関係が切れていくのは自然なことかもしれません。

お客様にとって製造の現場というのは見えませんので百貨店での売り文句がすべてとなってしまいます。かつても、非常に有名な京都の老舗の呉服屋さんが弊社に見えられたとき手織の近江上布の話をされたときにすごい量がないとできないといわれたといっておられ、この産地の人だと輸入物だとすぐに連想する話なのですが、良いものをわざわざ本場の産地に探しにこられた京都の老舗の呉服屋さんの方ですらそのことはご存じなく、近江産の手織ということで信じて買われて販売されてしまったのはどうかなあと思います。

生地の世界ではこれが特別なことではなく、何年か昔、アイリッシュリネンしか使いませんと謳っておられる大手のブランドの担当の方が弊社に来られたときに、アイリッシュリネンはないですかと聞かれたことがありましたが、リネン業界ではアイリッシュリネンが完全に手に入らなくなり弊社も何年も北アイルランドで紡績されている現行のアイリッシュリネンの糸を少しでも手に入らないか捜していた時期ですので、当たり前ながらありませんと答えました。お客様は自分がアイリッシュリネンをずーっと扱っていると思っておられたので、逆に私の返答にびっくりされたことと思います。年商何百億のブランドさんでも本当のあたりはご存じないことも多いのが普通で真実を知られるのが遅ければ遅いほど気の毒な結果になります。

北アイルランドでフラックスが栽培され、紡績が行われているような幻想だけが一人歩きして、ブランドが原料を謳い文句としている商品すらもがどこまで本当か疑わしい状況で、信用を重んじる百貨店でお客様に販売されてしまっていたのは厳しい現実のひとつです。別の話でも数年前の話ですが、聞いた話に素材にこだわることである高級なブランドが、幻となったアイリッシュリネンを謳い文句に製品を販売されたのですが、南アフリカで紡績された糸をイギリスに持ち込んで船積証明をとってアイリッシュリネンを謳ったとか。そんな話が裏で流れてしまっていて、高級なブランドさんのイメージそのものが台無しで、間に入られた方の一時の得のために飛びつかれたのでしょうが、やられたことの話題性が業界でも大きいだけに、騙された側のブランドさんのイメージが笑い話のように何年も後でも業界の中で語られるのは忍びない話です。