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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
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2012年04月25日
今日は、夕方、ある観光地の観光客の集うおみやげ物屋さんに行きました。麻の暖簾が売っていたので、「中国麻」としっかりと書いてありました。観光客相手に中国産を表示してものを売るのはセンスがないなあと最初感じてしまうのですが、なぜ大きく中国麻と書いておられるのかを考えると、しっかりと誤解を招かないように正直に販売されているのが立派だなあと感じました。普通おみやげ物屋さんというのは、手ごろに買ってもらえるようにイメージだけが先行して安価な海外製品がほとんどだったりしてしまいます。

彦根に来て周辺の近江上布の話などを聞いたら麻のものがほしくなるはずで、彦根のお土産を扱う店で並んでいたらそれがその産地さんのものと思ってしまいます。同じようなお話は、別のところで地場産のものを販売されている方も危惧されています。自分が販売しているものが本当に地場で作られたものなのか。

海外の麻のものの欠点は昔から言われているのが染めの問題です。糸などを染めると中まで染まらないのです。堅牢度が悪く、色落ちをして洗濯すると他のものに色移りしてしまいます。量販で販売される安価な洋服でも、ドライクリーニング限定なのもこのような事情が影響をしているのではないかといわれます。特に濃い色の色落ちは悪いのです。逆に色落ちさえ気にしなければ家庭で洗えば使い古したようなユーズド感が得られる可能性があります。

色落ちの問題は、染料なども国内のメーカーが撤退して海外のメーカーの染料を取り扱うようになってからより顕著になってしまっているようです。糸の中まできれいに染める方法もあるのですが、「リネンの染めに命を掛けていた」とおっしゃられる業界においてはリネンの染めの神様的な存在だったところだけの秘密で、電話で私が中まで染まらない問題に関して相談をしたときに特別にその技を教えてはくださいましたが真似をすることは現実的には難しいものだと思います。

こだわり始めたときにその差に気がつく人がいるかいないかでだんだんと技術というものはなくなってしまっていくものです。日本で販売されている麻のものの9割以上が海外産の生地となってしまっているのが現実で、同じセルローズ繊維ということで、綿と同じ感覚で麻を染めてしまうがためにぼんやりとした色に染まっている麻生地が増えてきてしまって本来の麻のもつ光沢感がみられないケースが多いものです。

麻の産地に関するお問い合わせなんかも2番目くらいにたくさんいただく質問なのですが、現実はブラックボックスであることも多く、アパレルの方や百貨店のプロの方でも誤解されてPRされたりしていることが多いので最終の消費者の方にまで正しい情報が伝わっていることは少ないものです。一般の方のほうが業界で商売されている方よりもこだわって物を探されておられるケースが多いのも感じます。

安く買って高く売るのが商売だと豪語されたかたがありましたが、その本質は見抜かれてしまうので長く続かない形だと思います。長く続けていくからには損得を抜きにした部分で業界をどう担っていくかが大事で、損を承知でやらないといけない厳しいものづくりができないと他とは違う特別な世界というのはごまかしで作り上げることになってしまいます。それが産地にこだわったり、自分自身がものを作ることだったりするのです。