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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2009年8月
リネン日記:18
2009年08月31日
選挙も終わって民主党政権が誕生しますが、一年に数時間しかテレビを見ない私にとっては、先週と変わらない一日です。(ネットはほとんど毎日してますが、情報を選べるのでありがたいです。)

午前中に、倉庫に行って糸を出したり染めの準備をいろいろとして、染屋さんに染色を依頼に行ったらもうお昼すぎになっていました。

今日は、オーガニックリネンのマフラーの準備をしました。ギンガムチェックのタイプです。服地のタイプがすごく柔らかくあがっていたので、マフラータイプだとふわふわのが出来るのではないかと思っています。縫製のほうも、秋冬モードのマフラーを何点か作り上げています。

午後は、上海の展示会の方の準備に関する電話をいただいて、コンセントを一つ頼みました。ほかにも、テーブルと椅子が予備にほしいかなあと思っています。上海の展示会も近づいてきた気分はしますが、準備のほうがまだまだこれからです。

夕方にはハンカチプロジェクトの第一次審査の結果があり、第二次審査に進めることになりよろこんでおります。世界最高峰リネンハンカチプロジェクトは単なるアイデアだけではなく、長年無理だと思っていたことが、この一年で実現出来そうな環境ができあがったことがまさに奇跡で、すべてに恵まれ、私自身、織物人生のピークに差し掛かっているのかと思います。
2009年08月29日
私は、週末が好きです。仕事がないからではないのです。じっくりと仕事を進められるからです。デザイン、色や柄を考えたりするのも外の社会の止まっている週末のほうが集中してできるので、週末が好きなのです。

手間の掛かる仕事は、週末にじっくりとします。林与の服を作るのも週末に企画を考えることが多いのです。洋服を作るときに、布からデザインができる強みというのは、すごいことだなあと思ったりします。洋服の形というのは売れ筋というのが決まっていて、あとは、布が売れるか売れないかを決めてしまうといわれることがあります。デザイナーが奇抜なデザインを作ってもそれが極端なブームになるということはありませんし、長続きはせず、あったとしてもそれは稀なケースです。

私の苦手なのは、お客さんと会ってその場で企画を短時間で決定することです。ずばりのものが林与に有る場合や、お客さんが具体的な作りたいものを持っておられる場合、それは進行が可能なのですが、短時間でこねくりまわして新しい企画を練るとそのほとんどが企画倒れに終わります。糸、染、織、加工も考える私が布を設計するのに何日も費やすのに、アイデアだけで短時間で、市販に通用する完成された布の企画を練り上げるというのは無理な話です。ものづくりが何かを考えるときに、アイデアマンというのは一番仕事ができないタイプで、それに伴う責任を被れるような仕事のできるアイデアマンというのはまさに希少な存在で実力をもった人といえます。
2009年08月28日
昨日は、午後から奈良からお客さんがお越しくださいまして、いろいろと近江の布の話や、麻の織物の話をしました。布作りにも興味をもっておられ、本気半分以上で、「布を織りにきてください」と頼むと、「来ます」としっかりと応えて下さるような方で、リネンに関しては深いものを考えておられ、その応援をさせていただこうと考えております。夕方は、滋賀県の草津というところで、講演会と懇親会があり、会のメンバーではなかったのですが、お誘いがあって出席させていただきました。

今日は、3社から企画の進行のパターンなど届いたり、電話をいただいたりで、それを頭の中に整理しながら、来週から前に進めていかなければなりません。ちょっと、忙しくなりすぎている感じですが、全力で進まないと、展示会の準備も必要です。ほんと、いろいろなところから声が掛けていただいて、中途半端にならないように1つづつ大事に進みたいと考えています。

展示会のほうも近づいてきたのでそれに向けてもものづくりをしないといけません。頭の中ではやりたいなあと思う企画が目白押しで、後一ヶ月ちょっと、どこまで押し込んでいけるかだと考えています。100年に一度の不景気といわれる中で、やること、やりたいことがいっぱいありすぎるというのも幸せです。

この前作った、リネンジーンズとかも色を3色ほどの展開で展示会のテーブルに置きたいなあと考えています。ハンカチのプロジェクトも10月に入ると最優先事項に入ってくるので、それまでに、いろいろなことを終えておかねばと思っております。ダブルフェイスの秋向けのリネンストールや、蜂の巣のタオル、リネンランチョマットなども展示会で、林与の織の技術を謳えるようなアイテムとしてお披露目したいなあと機作りからはじめています。
2009年08月27日
昨日は朝の朝5時に車で東京に出発してお昼すぎに到着しました。展示会の件でコーディネイターの方と初めてお会いしたのですが、滋賀県の産地のことをよくご存知でびっくりしました。

そのあとプリント屋さんの事務所のほうにお伺いして、プリントのことなどお話を聞きまして、今度の展示会に向けて、リネンにプリントを載せていきます。林与は先染が主体なので、プリントはほとんど経験がなく、P下は一番、簡単なので他のかたがたくさんやられているので、林与は今まではあまりやっていなかったのですが、プリントも含むトータルなコーディネイトには必要なアイテムだなあと再認識いたしました。

帰りは道が混んでいて、先ほど帰ってきたばかりです。今日は、午前中、彦根。午後からお客さま、夕方は講演会と懇親会の予定で、展示会準備、見本などいろいろと進行しておかなければならない企画のほうが遅れ気味です。本番のほうも入ってきているので、半分くらいの力を本番、残りの力で見本という理想な状況で進めるかと考えていますが、9月後半から10月は仕事も相当忙しくなり、展示会もあるのでパンクしそうです。
2009年08月23日
昨日の夜は、地元では地蔵盆が行われました。子供たちにとっては夏休み最後の一大イベントで、子供の頃の地蔵盆の準備で夏休みが毎日楽しかったことを覚えています。仕事でバタバタしていて、今年も地蔵盆を夜見に行くことはできませんでしたが、子供の頃の良い思いでです。

今日は、加工から上がっているリネンを社内でテストしています。よくネット販売などで、「生地はかならず水通ししてからお使いください」という注意書きを見かけられると思うのですが、このことは、服を作って、洗ったらサイズがすごく小さくなった、なんてことがおこります。リネンのハンドメイドの服はゆったりとしたものを作られるケースが多いので、大丈夫な場合も多いのですが、襟付きのぴったり目のシャツなど作るときには水通ししたほうが安全です。特に輸入生地は、物性がノーチェックで製造されていたりするケースが多いので、水通しは確実に行ってください。

林与では、何年も前から家庭洗濯可能なウォッシャブルな素材の開発に取り組んできました。弊社の本麻(ラミー)、綿麻(コットンラミー)の無地系の先染素材は、家庭洗濯可能な水準に達しております。また、通常は、リネンのもので収縮率を3%に抑えるというのは難しいのですが、長年の実績から信頼できるメーカー糸の使用、織の規格、加工方法の指定などで、かなり良いところまで来ており、アパレル向けのリネン100%のものでもウォッシャブルを謳える水準のものを作ることが可能です。単に、織るだけでなく、品質が世界でも厳しいとされる国内の基準により当てはまるように、染色や加工の面でも努力しています。

麻というのは、水分の吸収力が高いというのが長所なのですが、その裏返しに、糸の中に水分を吸収するということは繊維が変形し水分をためることになります。繊維が伸びたり膨らんだりすると布が伸びたり縮んだりするのです。加工で、防縮加工用の樹脂で水分の吸収を抑えたり、スリップ止めの樹脂で固める加工があったりしますが、物性はよくなっても麻の風合いや水を良く吸うという麻の長所が損なわれることになり、通常以上にそういう薬剤を使用し物性を改善するのはあまり良い方法ではないと考えるのです。

林与の考えるのは、糸の紡績工程に置いて湿紡の技術に優れたメーカーの高品位の糸をセレクトし、糸の染色方法、織の規格で仕上がり巾を想定し、安定した実績のある加工をチョイスすることで、従来の加工方法のまま収縮率を3%に抑えようと取り組んでまいます。長年の経験が安定した品質を生み出すのに役立っています。林与の布も完璧ではありませんが、単なる色柄デザインだけでなく、こういった配慮を行うことで、より安心して長くお使いいただけるような布づくりを目指しています。
2009年08月22日
10月20~23日(ただし10月20日は特別バイヤーのみ)に上海のニューインターナショナルエキスポセンターで開催されますインターテキスタイル上海の入場招待券が手元にございます。入場できるのは、アパレルやアパレル素材バイヤー(パスポート提示必要、18歳未満禁止)に限定されてはおりますが、アパレルのプロの方で興味をお持ちの方は、数十枚ほど予備がございますので無料でお譲りいたしますのでお問い合わせくださいませ。(展示会への入場料のみが無料になるだけですので渡航費旅費宿泊費などは各自で用意、負担いただくことになります。)

林与は、この世界最大規模のテキスタイル展示会に出店いたします。今回の大きな目標として、この10月から林与が取り組むアイリッシュリネンの超細番手ハンカチなどを持ち込んで、日本の麻織物の技術というのをPRしたいなあと考えております。中国の展示会というのは日本でも上海でも訪れたことがあるのですが、安いものが多く、トップクラスで通用するものは少ないのが事実で、世界最高クラスのリネンハンカチに興味をもっていただけるかは未知数です。でも、世界の製造工場となり新しいものが次々と生み出されている中国への関心は世界中から集まっており、世界のトップブランドの関係者なども来場する展示会ですので楽しみにしております。

リネンハンカチプロジェクトで使用する今は入手が不可能な30年前のリネン140番手のアイリッシュリネンのオフ生成の糸や、可能なら林与秘蔵の近江上布なども数点展示し日本文化を発信してみようかと考えております。

昨日は、林与の親戚筋にあたる織物関係の方が東京のデザイナーさんを連れてきてくださいました。そのデザイナーさんは10年数年ほど前でしょうか一度、林与にもお越しいただいたことがあるそうです。私とは初対面だったのですが、親戚筋の方もデザイナーさんも大柄で、デザイナーさん自身がブランドイメージを醸し出されておりブランドのコンセプトなど説明いただいてよく理解できました。
2009年08月21日
オーガニックリネン糸がオーガニックリネンであることを証明するための証明書というものがあります、オランダのコントロールユニオンというところが国際的な認証機関で、トレイサビリティを確保するための証明書です。

リネン糸の原料である栽培段階と紡績段階において、オーガニックであるということは、地球にやさしいということになります。今、製造している見本は、着色しないで、白と生成だけで柄を作っています。

今回できあがったサンプルは、仕上げは通常の加工で、プロのアパレル向けに使える柔らかい仕上げにしました。加工段階はオーガニックとはいえませんが、加工に入るまでの工程が、地球にやさしい林与のアパレル向けオーガニックリネンシリーズです。オーガニックリネンということで、糸質に関しては期待していなかったのですが糸質はすごく良く、見た目もきれいでやわらかく仕上がっています。

林与のオーガニックリネンは、織る段階でも、地球環境にやさしく、シャトル織にしています。捨耳が発生しないので、地球環境にやさしいです。また、通常は縦糸に付けられるワックスや糊の使用もしませんし、横糸に付けられる糸道油の使用もしておりません。オーガニックな糸の状態のまま織物が織りあがることになります。

別のシリーズになりますが、加工も地球にとことん優しいナチュラルワッシャー仕上げのオーガニックリネンのサンプル作りもしています。こちらは、アパレル向けではなく、オーガニックへのこだわりを持つハンドメイド愛好家向けの素材です。更なる展開としましては、草木染のオーガニックリネンシリーズも進行計画中です。
2009年08月20日
織物の柄をコンピュータでシミュレーション(CG)することがあります。アパレルのデザイナーさんもCGで色柄のイメージを指定されてきてそれに近いものを織物で再現する形で仕事を進めるのです。

実際にコンピュータシミュレーションした色で作った色というのは、プリントアウトしたものをみて調和が取れているように見えても実際使う糸を眺めるとアンバランスだったりすることが多いので、使う糸の調整を加えて全体のバランスを取ります。

人間がどのくらいの色柄を微妙に使い分けられるかというところで、今までにないようなオリジナルの柄が生まれてきます。通常は、原色とその濃淡と、ベージュやグレーの基本カラーで柄を作るというケースが多いのですが、この範囲ですと、自動車や電化製品の色使いのものしか生まれてきません。

一般的にアメリカや中国の方の好む色使いなどはこの範疇だったりします。でも、一般に日本人の場合は派手な色を嫌いますので、同系色のトーンの違いや、近い色相をベースにしてアクセントカラーを配するような配色で、目立ちすぎない服飾のデザインに収めることが重要となってきます。

無地は色は簡単です。白、ベージュ、紺、黒がコアカラーで売れ筋なのです。それプラス、若干の流行色を混ぜたり、ブランドカラーを生かすことで、毎年大きな変化なく、よいものは売れていきます。
2009年08月19日
今日は、彦根のイベントで手提げ袋を企画されているようで、弊社の生地も試作に使いたいというお声が掛かり、倉庫に行って、リネンの生成系のものを探しました。

生平と呼ばれる小幅の織物が目に付いたのですが、それが、とても昔の布っぽくってよいのです。でも、何千も作られると考えると在庫のほうが限られているので、通常の服地巾に織ったものからチョイスしました。

林与的には、リネンのチェック柄のおしゃれな袋を提案させていただきたいのですが、シンプルでベーシックなもののほうが好き嫌いがなくてよいそうです。他にも、キンランを使った布も計画されているそうなので、リネンの生成だとおしゃれで実用性はあっても、お土産品としては見劣りするんじゃあないかなあと思っています。

8月の後半は24日、25日、26日と予定が詰まって、最後の週は週末に仕事しないとサンプルなどが間に合わないなあと思っています。今日は、大きな問題が見つかりました、先日納めたサンプルの耳の色が違ってたので、大至急で3点やり直しています。
2009年08月18日
織物を設計するときに困ることの一つに、単位の問題があります。機械の設定などはすべてインチで統一されているのです。たとえば、打ち込みのギアは1インチ当たり何本、整経の筬や織筬も一インチ当たり何目です。(ただし、産地によって、鯨寸を使うところや、実際に通す糸の本数で計算するところもあります。)

通常使う定規やメジャーは、センチです。1インチは、2.54cmなので、一般的な織物の巾である仕上44インチの織物というのは、112cm巾の織物ということになります。

糸の量を計算するときには、ポンドやヤードを使います。実際のハカリはグラムなので、織りたい長さなどはメーターなので、単位換算して、必要な糸量を計算するのです。

麻番で100番手の織物で、縦の本数が3080本で、通し巾が1.3Mで、横の打ち込みが60本だと、計算をすると、ロスを見ないで、縦がおよそ51グラム、横が52グラム必要となってきます。通常は、整経が短いと2割から2割5分程度、横は1割程度のロスを見て糸を準備しています。

また、糸もラミーの場合には、NET表示の重さがあるのですが、リネンの場合には、大体4%~5%少ないというのが経験上の値です。乾燥しただけで、糸長は正しくあるといわれていますが、実際に計算してみると、輸入糸は実際少なめにしか入っていないということが多いのです。この辺り、海外の商品の品質表示の問題と共通するところであきらめざるおえないのかなあと思っております。
2009年08月17日
旅行で訪れた市場で買ってきたものは、貝ボタン、大きな木のボタン、黒いボタン、ビーズ、鈴、です。

貝ボタンをご存知でしょうか?貝殻をくりぬいて作るので、一つ一つのボタンが、ちょっと曲がっているタイプのボタンです。厚さも一部薄いものがあったり品質が安定していません。自分でより分けて良い物を使います。大きな木のボタンは見つけたときに面白いなあと思って買いました。コートのアクセントになるのではと考えています。黒いボタンは、黒ベースのシャツ用です。ビーズは銀色のもの、鈴はマルチカラーでたくさん入っているものを買いました。

ボタンは服を作るのに使うのですが、ビーズと鈴は楽しいことができないかなあと思っています。実用性は低いかもしれませんが、いろいろとアイデアが広がっていきます。
2009年08月16日
お盆の間は海外で過ごしておりました。いつもよりゆったりと時間が流れ、リフレッシュして日本に帰ってきました。今日から仕事を再開しています。

お盆の前から取り掛かっている織の問題に再度チャレンジしています。ストライプ柄状に平織のところと組織の甘いところが混在する織物で糸の緩みという問題が発生しています。組織的な問題で予想していたとおりの結果だったので、機を作り直して、ギシャという組織に切り替えて織ってみましたが、それでも、同様に緩む問題が発生しています。これも予想はしていたことなので、別の方法に移ります。

通常は、2重ビームという方法にすると良いのですが、今回の場合は、織物の柄を考えると、それが適切ではないという判断をしました。そこで、緩む糸をすべてコマで入れるというかなり手間の掛かる方法に切り替え織り進むことにしました。

これをやろうとすると、通常の1本2本のコマではなく、100本近くのコマとなります。安定して織れるように、100本のコマの機械自体を作るという作業から行って、一つの柄の織物を織れるようにしていきます。

麻を2重ビームでも織るのは大変なのですが、100本ものコマを入れて織ること自体、非常にリスクが伴うことなので、常に見守って織り進んでいかないとなりません。手織りだとコントロールが可能なことでも、機械を使って工業製品として織るからには、100mとか200m問題なく再現できるような見本つくりを考えないといけないのです。
2009年08月11日
本日から、お盆休みを利用して15日まで、海外出張いたします。海外はお盆がないので、国内の電話が掛かってくることなども少なく、ちょうど出張には一番良い時期なのです。今回は、市場をみたり、紡績工場を訪ねたりする予定です。観光はほとんどできませんが、いろいろなものを眺めて、ものづくりに生かしたいなあと考えております。
2009年08月10日
異組織使いで、ストライプ柄を作っています。平の部分と組織が甘い部分の違いを活用して、ストライプ柄を組織で出すという織物です。織機についているドビーという装置を使えば、柄表現は難しくはないのですが、こういう組織では、糸の緩みという問題がつきまといます。

この辺りが、テキスタイルデザインというのが柄だけでなく織物であるという部分です。縦糸のアップアンドダウンがすべての糸に関して似ていないと、アップアンドダウンの少ない糸は緩んでくるのです。緩んでくると、ドロッパーが落ちてきて織れなくなります。ドロッパーが機能しないと経切れしたときに、機械が止まらず、キズが発生します。

対処方法としては、2重ビームにする、緩む糸をコマにする、すべての緩む糸に重りを掛けるなど考えられると思うのですが、織れればそれでよいというものではないので、それぞれに問題が潜んでいます。

芸術品としてものをつくるのと、工業製品としてものをつくるのでは、観点が大きく異なってまいります。複雑なものを作る場合、芸術品としてものを作るほうが自由で簡単なことが多いのです。1週間も掛ければ一人の人間が作り上げてしまえるものが多かったりします。変わったもので、工業製品として量産するものを作る場合、後の生産や品質を考え、そのシステムを作り上げるのに、手作業の何倍もの時間を掛けないといけないという必要があります。
2009年08月09日
リネンジーンズのプロトタイプが完成しました、デニムのような厚織ながらソフト感を持たせ、しわになりにくい仕上がりです。作り上げた私としては大満足な状態なのですが、若干の改良を加えて、そのあと、弊社のインホワテクノロジーとの融合で、色表現もインディゴライクなジーンズを仕上げていこうと思います。

何十年もなかなかできなかった、しわになりにくいリネンボトムの完成です。今の質感だとジーンズライクで、カジュアルっぽい感じなので、もう少し糸の番手を上げて、ブランドカジュアル向けに提案も考えております。

リネンの糸の選択に始まり、織を突き詰め、加工、縫製をこなし、何度も何度も織の改良を積み重ね、これだと言える形に仕上がりました。綿とは違うリネンらしさを感じてもらえる通年素材です。
2009年08月08日
今日は、東円堂の盆踊がありました。毎年、お天気のほうが微妙なことが多いのですが、今年に関しては安心して行われることがわかっていたので、従業員たちにも参加を呼びかけておきました。夜7時半に集合して会場に向かいました。

最初、30分ほどフランクフルト、やきそばなどを食べて、あとの2時間ほどは、踊り続けてました。夏の風物詩である盆踊りもやっているところというのはほんと少ないと思います。東円堂という字は、この盆踊大会を楽しみにしている人が多く、続けられているのです。

盆踊りが10時で終わって、抽選会が行われている間、テントの片隅で、同年代のものが集まって話を交わしました。字の中でなかなか会う機会がないのが、私たちの世代なのです。子供の頃からの顔なじみばかりで、小さな村の中でもほとんど会うこともないのですが、こんなとき話をするだけで、支えあいの気持ちというのが伝わってきます。自分が、みんなのために何ができるのか考えてみる良い機会になりました。

盆踊に参加し踊って楽しむことが、小さな村を活気付けるのではないかと思っています。都会の大きな祭とは違う自分たちの村の祭の良さというのが実感できた一晩でした。
2009年08月07日
先日、ハンカチプロジェクトのプリントを相談しに、近くの捺染工場にご挨拶に行きました。昔は、林与は自社内で染をやっていたので、他の捺染工場とは縁が薄かったのです。そして、先染やジャガード主体の織物を作っていたので、プリントものはほとんど実績がありません。今回は、ハンカチということで、レディースの一部にどうしても花柄のものがほしいと思いました。

捺染工場にお邪魔すると、いろいろと教えていただき、ハンカチプロジェクトのほうも応援してくださるとのことでした。手捺染の細かなやり方まで説明いただいて、頭の中で、プロジェクトの企画のほうが格段に進みました。

一つ感心したのが、色だしです。一つの柄で10色程度の配色をする必要があるのだといわれ、そこが、先染織物と共通するところだと思ったのです。同じ苦労をされている方がおられることがありがたかったです。言われたままに色付けをするのではなく、自分で提案しなければならない部分をもち当たり前に、それをこなすというのは大変なことです。

そういう部分で、この捺染工場は本物だなあと実感させていただきました。
2009年08月02日
先週は、リネンハンカチのプロジェクトの企画提出があって忙しく動いていました。世界最高峰のリネンハンカチシリーズをつくるというプロジェクトなので、織の技術的だけでなく、ハンカチのデザイン、糸、染色、加工、縫製、パッケージング、製本化へのこだわりを散りば3年がかりで行います。超高価なため非売扱いで、展示会や百貨店のイベントなどでの活用を計画しています。

最高の糸を使うということで、30年前のアイルランドで紡績さた本物の超細番手アイリッシュリネン糸を使用いたします。織の要素、先染の要素、プリントなど要素を散りばめて、日本の麻織物技術の最高をハンカチというキャンバスを使って表現いたします。90種類くらいのハンカチができあがる予定です。

使う織機は、50年ほど昔のシャトル織機です。一つのモーターの動きが伝わり、複雑なからくり人形が動くようにして、織物が織り上げられていくさまは圧巻です。現在の最新式の織機が世界最高のものを織り上げるのではなく、今の日本の自動車機械技術の全身である戦前、戦後の日本の織機技術が、このプロジェクトを支えるのです。

麻の品質にこだわる「林与」だけに染や加工にも日本の麻業界を代表できるメンバーたちのもつ伝統で立証された技術で臨みたいと考えております。永く使えるものを作るためには見えるところだけでなく見えないところの要素もプロのものづくりでは大事なのです。日本でもこのようなリネンの最高峰を目指すリネンプロジェクトは企画されたことがなく、超細番手織物のメッカであったアイルランドでは、紡績が行われていないだけでなく現在は織職人は少なくなり、織物産業自体が様変わりし過去の技術が消え去ろうとしています。

世界を代表するリネンハンカチのコレクションをつくりあげるプロジェクトがまもなくスタートです。世界の麻織の最高峰の技術を蘇らせ、麻織を織りつづけるということの価値に気づいていただければなあと思います。安価なリネンが大量に生産されるようになる一方で、ハイグレードな細番手の麻を織るという技術は、世界的にも失われつつある技術なのです。