2010年02月05日
今日は、社員と一緒にインターテキスタイル北京に出展する素材の準備をしておりました。4テーマあり、基調カラーなどが指定されているので、結局のところ時間がないので、今あるものの中からの提出になります。チェック柄物を中心に20種類くらい出せるかと考えています。
大きな規模の展示会の素材提出というのは、非常に時間が限られていて、相当前から準備しておかないと提出には間に合いません。今の時期、加工工場も染色工場も込んでいるときなので、新しいものを作るには実際に一番難しいときです。
展示会をサイドとしては、今あるものがすぐに出てくるというのが当たり前なのかもしれませんが、今ある素材に色を付けるだけなら、テーマカラーに染めてハイできました、と2週間もあれば出来てしまうのですが、本格的なものづくりとなると、どうしても、糸をそろえるだけで1ヶ月は掛かってしまい、新作をつくるには2ヶ月くらいの間さまざまな作業工程を経ることになります。
林与は、見本も中で作るのを基本にしているのですが、最近は、見本は見本屋さんに頼んで本生産は別のところでやるような流れが多くなってきています。この形だと、本職の方が何もわからずに本生産を担当されるようなかたちなので、技術の継承というのは難しいだろうなあと思います。
世界的に、織物の技術を継承してものづくりをするというスタイルよりも、いかに安く作れるところでものづくりをするかという流れで、日本での生産が中国に流れ、中国でも高いということでベトナムやアフリカに流れるような傾向があります。アイルランドや日本の高級な織物というのは、過去の頂点に達した技術基盤があるがゆえにそれが有利に働くよりは、それをイミテイトしいた安いものに淘汰されてしまう運命にあるのだと思います。
今日も、倉庫で昔のものを眺めていると、今じゃあ作るだけでも大変だなあと思うものがたくさんありました。染の色から深さが違うところにリネンの美しさみたいなものを感じます。今の時代のリネンというのは、色が浅いことが多く、それをどこまで深く染めるかということも、林与にとっては課題です。
深く色を染めると加工工程での色落ちなどの心配が出てきて、ひとつ品質を追求するともう一方でも特別な処理が必要になる、また、検査なども増えるなど、普通に流れないガチガチのものづくりになってしまうのですが、そうやってでもしないと特別なものは作れません。
先日、アパレルの方が見えられて米沢のシルクの染について話しておられました。昔のものというのは、10年以上かけて染めたそうです。何度も染めることで、今でも色あせしないようなものを生み出したので、日本人が織物に掛ける情熱というのは、近江上布のような麻の世界以外でも当たり前にすごいものだったんだなあと思います。