2010年04月15日
リネン糸に限らず紡績糸というのは、基本的に、Zに撚ってあります。時計の反対回りで糸によりを掛けながら糸を作るのです。この撚りは地撚りとも呼ばれます。通常ですと、リネンの60番手クラスですと地撚りは1M当たり番手X10倍程度ではないでしょうか。60番手クラスなら1Mに600回です。
糸に追撚を掛けることがあります。さらにZ方向に何百回かの撚りを掛けるのです。何のために掛けるのかというと、基本的には、リネンの場合、撚りを掛けると落ち感と呼ばれるものが出るのです。ラミーの場合には、シャリ感が出ます。
最近のリネン糸などにおきましては、追撚を掛けて落ち感がでることはほとんどなく、シャリ感が出てしまいます。最近の糸は撚りが掛かりにくいです。糸の収縮の問題もよく起こりえます。加工した反物をみると糸の特性というのが顕著に表れてきます。このあたりが、長年、リネンや麻を眺め続けてきて、非常に悩むところだったりし、長く使うものは洋服になってからも様々な経験をするので、使える銘柄、使えない銘柄を選び、あるいは、用途を限定して使用することもあったりします。昔はできたものが今はできないことも多いのです。
紡績工場にしても、強度などのテストを行うのでしょうが、出来上がった糸の状態でのテストで、実際の使用を想定したテストではありません。分断された知識で、織物が取り扱われる今、糸がどのような織物になってどんな問題が出てくるのかということを知っているメーカーも少ないのは事実です。通常、リネンの織物というと平の生成やオフ白のキバタを生産することが9割がただと想像しています。
紡績工場にとっても、フィードバックが生命線となってくるわけでしょうが、フィードバックが届いていないケースがあり、作っている糸の問題が届かない状況というのは紡績工場自身も多くのトラブルを抱えつづけます。
フラックスにしても毎年作柄が異なり、良い年もあれば悪い年もあり、ドューレッティング工程もヨーロッパの天候に左右されます。そんな状況で、生成などの色をコントロールし同じレベルの糸を作り続けることは難しいことです。大手の紡績工場ほど、フランスから原料が来たりベルギーから原料が来たりです。農作物ですから、一定の品質を保つこと自体が難しいので、ヨーロッパの大手のフラックスメーカーというのは、品質を安定させるためのブレンド米的な手法を用いているのではないかと思ったりもしています。原産地に関する表記などもベルギーあるいはフランス産原料という原産地証明を基準にしたややあいまいな表記にとどめることが本当の語ることとなるのです。
ヨーロッパで作られるフラックスファイバーがすべてヨーロッパのフラックスを使用しているとは限らないのもあまり知られていないことです。ヨーロッパの大手フラックスメーカーでも、中国やエジプト産の原料などを使うことは適切に説明しています。ホームファブリック系の用途には価格の面でもそれが当たり前のことなのです。それを説明を聞いてがっかりされるかもしれませんが、それはその企業が説明責任を果たしているという証なので、いろいろな原料を使用していても用途に応じてしっかりと管理できているということなのです。
フラックスメーカーなどが言っているところでは、ヨーロッパでも良質の原料は、ベルギー、フランス、オランダなど限られた地域でしか取れないということです。昔から資材系のリネンを栽培しているロシア、リトアニア、中国、エジプトなので、フラックス生産の全体からすると、フランス、ベルギー、オランダ産というのはそれほど大きな割合ではありません。日本人というのは、高級な麻の文化をもっていたので、リネンに関しても世界の他の国以上に良いものを昔から求め続けてきたと言えます。