2010年08月28日
ビンテージアイリッシュリネンハンカチの淵かがりをどのように仕上げるか、今、検討中です。ミシンで高品位なものに仕上げるのが良いのか、ビンテージなアイリッシュリネンなので手作業で仕上げるのがよいのか、ご覧いただいた方に、ものの良さや、感動を与えるのはどちらなのか迷っています。
リネン生地というのは本当に不思議です。加工などで引っ張ってると伸びますが、何ヶ月もおいておくと、段々とサイズが自然に戻ってきています。106cmほどに仕上がっていたのが、110cmくらいまで戻ってきており、ハンカチの縦と横がちょうど良い感じになってきました。縦横ぴったりまで、あともう少しの我慢です。これが物性を安定させ、かつ、湿度を戻し風合いを良くするための、何ヶ月も放反する効果です。(反物としてしっかりと巻いてあるだけでも縦方向の力というのは縦横のバランスに影響を与えるのです。)
リネンハンカチプロジェクトですが、最初は、アイリッシュリネンのリネン超細番手が織れれば自然と昔林与が手がけたような良い先染のリネンハンカチができると思っていたのです。でも、実際の工程を考えていくと最後ハンカチになったときに良い感じのものをということで、110番手クラスのオフ白でハンカチを最初にテスト的に縫製してみて、大きさを決めたり、その加工の風合いがハンカチとしてどうなのかを吟味することが大事なのに気がつきました。先染なので、リネンの色糸の収縮の問題なども染料と色の出の可能性から考え、ベストな手法を選んでおります。
風合いに関しても再度トライアルが必要という結論に達したのです。このビンテージの糸に合う加工が何なのかです。また、展示会で、リネン110番のハンカチを皆さんにプロジェクトのPRのためにお配りしたことにより、真っ白がよいのか、ナチュラルなオフ白が良いのかも非常に参考になりました。ほとんどの方が、ナチュラルなベージュ掛かったオフ白を選ばれます。これすらもが、本当にスキップして、白は真っ白と考えて作ってしまうと最終的な全てが台無しなのです。以後は、なるべく30年前の糸の色を尊重する形で白くは晒さない決意ができました。
そして、140番手での無地の加工のトライです。薄く繊細さを出したいという思いが強かったので、100番手と同じ規格に乗せてハンカチにしました。透けるようなハンカチの生地ができましたが、物性の面でスリップしてこれでは駄目だと、縦本数の再検討ならびに横の打ち込み本数の検討の必要性に迫られました。
縦本数が変わると、柄の本数も変わりますし、その計算は、本当に微妙なものです。加工した後でどれだけ縮むかというのは、また縦本数や横本数が異なれば微妙に変わってきますし、打ち込み本数なども、送りの状態によってあるいは織機によって、巻き取りローラーの形状などによっても、異なってきて、計算機で計算したものにその他の要素を足したり引いたりで、多分大丈夫かなあと思う程度の状態で、何ヶ月かかる機つくりや織の部分に突入していくのです。入手が困難な糸をテストで何キロも使って何ヶ月も掛けてテストするような本当に贅沢な話です。
縦横の比率を合わそうとすると、機を作り変えたり、筬から手配しないといけない話です。織るだけでも1日数メートルの世界ですが、その前の準備には、その何倍もの時間と覚悟が必要です。そのように何ヶ月も掛けて織った布を加工に出すのですが、どういう加工にするかだけで思ったような風合いに上がらないこともあり、全てが水の泡になるという危険と鉢合わせなのは分かっております。
出来上がったものは、リネンのハンカチや布というだけですが、糸、染、織、加工、そして最後のハンカチへの仕上げ、全てが揃わないと他とは違うものに見えないかと思ったりもいたします。