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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2011年7月
リネン日記:29
2011年07月09日
今日は暑い暑い一日で、近江湖東は、日中はずっと30度を超えていたのではないでしょうか、夕方6時で外は32度でした。今日は東京からお客様で、近江のことを織物だけでなく、近江の織物が全国に広まった近江商人の歴史的な足跡も訪れていただきました。実際に今作られる織物とは関係のない世界かもしれませんが、織物のもつ背景というのはどこの産地もストリーがあるもので、それが産地の重みなのかもしれないと思います。

中山道に立ち並ぶ古い家々を眺めるに重いものを背負っておられるなあと人々の日々の暮らしすらからも感じるものです。今宵は高宮の無賃橋では、花火大会が行われるということで、浴衣を着た人々が道を行き交っておられました。ローカルな行事で、たくさん人が楽しみにしている行事が続いているというのは今では珍しいことです。 

夜、会社に戻ってからは急ぎの分の整経ができていたので機作りを行いました。リネンの高密度タイプがなぜか縦切れで織れず原因を探っていたら、ありえないミス、織筬の左右を間違えて筬の表裏が逆になってしまっている。右も左も同じと思って適当に仕事をしている人には、仕事以前の右と左の違いから話をしないといけないのだ。

筬に右と左を書くことで対応するというのはどうだろう?それをすると最終ほんと判断すらもができない人の集まりになってしまいます。用意されたものを何の心配もなく組み立てるだけそういうのって量産型の海外が得意なのでそれとは違う目で見て判断するような工程を守ることこそが日本のものづくりではないかと思います。
2011年07月08日
8月6日、7日に米原市の滋賀県立文化産業交流会館で行われます長栄座の周辺イベントとしまして、「近江のあたらしい伝統産業展」ということでロビーのスペースをいただいて展示するような企画が計画されています。今日はその締切日で申し込みをさせていただきまして、あと1ヶ月のことでどのように自分のスペースを使おうか考えています。

メインは長栄座の古典芸能になるとおもいますので、そういうイベントの合間にロビーを行き来される方で興味を持ってくださりそうな方に、滋賀県に麻織物の世界があるのですよ、ということをPRできればそれでよいのかと思います。

大手の自動車メーカーさんなんかも林与のリネンの厚い素材には興味を示してくださり、大手さんに渡ると、コピーされてしまう確立は高くなってしまうのですが、コピー物とは違ってオリジナルはオリジナルの価値があるのではないかと思っています。

ストールなんかもそうです。リネンの細番手のやわらかいストールが人気になっています。リネン100%の細番手の柔らかいストールを本格的に作り始めたのは林与なのです。それまでは、リネンや麻のストールは硬いのが普通でした。リネンのストールは柔らかいというイメージを作り出したのも、林与がリネンの蝶細番手のストールをジャパンクリエーションで発表したのが切欠です。

インターテキスタイルなどでも世界にリネンの細番手の柔らかいストールをPRし、今では、リネンストールも世界中柔らかくなってきました。日本の小さな機屋の情報発信が世界のトレンドを変えることもあるのです。ブランドの世界もそうですが、オリジナルはオリジナル、そこにコピー物とは違う価値があるのではないかと思います。

リネンの細番手織物の魅力をビンテージアイリッシュリネン140番手を使い世界にPRしたのも世界中がリネンの細番手の世界に動き始めている大きな切欠になったのではないかと思います。海外の展示会などでも、リネンストールなどを展示していると、欧米のバイヤーさんがどうしても自分用に売ってほしいといっていただけるようなものを作り上げることができたことが一つの満足です。
2011年07月07日
今日は七夕、雨が降っています。暑い日が続いて、それを打ち消すかのように雨の日がつづく、暑い一日の夕方ににわか雨。プラスとマイナスの要素の中に夏らしさがあって、自然を感じます。

藍染作家の梅崎由起子さんから、個展のお知らせをいただきました、

 梅崎由起子 展  ―夏時間―
 会場: ギャラリー海  南都留郡富士河口湖町河口1746-2
 会期: 2011年7月8日~24日 11時~17時 火・水・木曜日定休

届いたDMがすごく素敵で夏らしさを感じます。梅崎さんの作品というのは、浴衣などを中心とした日本の夏を彩るような世界です。日本の昔の着物というのも、白ベースかあるいは紺ベースで、紺という色は濃い色ながらも黒とは違って夏に良く合う涼しげな色味なのです。話は変わりますが、富士山にも一度は登ってみた気がします。富士山に登るとかしんどい経験を積むような夢を持っているというのは素敵な気がいたします。今年の夏は絶対に無理なくらいやることが山積みです。

先日は業界紙を読んでいまして、綿糸の暴落の話、一方で羊毛の高騰の話、投機的な儲け話でものが作られる世界というのは長続きはいたしませんし、夢がありません。布が無機質なものだとあんまり意味がない気がします。布というのは使い捨てられやすい布と比べて大事にしてもらえるものです。

スーパークールビズも悪くはないと思うのですが、なんかみんなが一緒にやらないと駄目みたいなのは本質的ではない気がします。雨を降らす方法があります。火を炊けば、雨が降り天から恵みで涼しくなるのです。昔の農家の人の知恵です。にわか雨一つが、エアコンの力の数億倍の力なのです。

夕方、オレンジと赤の新色のリネンが染まりあがってきました。きれいな色で、リネンって糸からして華があるなあと思います。リネンの染糸をみて感動される方も多いものです。実際に、色糸が何十色もあると見ているだけで楽しいものです。そんな世界を独り占めできるのは林与の贅沢な世界です。
2011年07月06日
今日は午前中お客様でした。曇り空で、少し蒸し暑いものの過ごしやすい一日です。

ここ数ヶ月考えているリネンなアイデアを3つそれのテストをそれぞれ行いはじめています。林与の布を使った、エコなライフスタイルを考えるアイデアたちなのでそれらが形になりそうな感じです。普通と違うのはそれに合った織りの工夫がなされている生地を使うことです。

物事を進めようとするときにアイデアまでは簡単なのですがそれを実現しようとすると量産の問題をクリアしないといけない部分も含めて道のりは長いことが多いのです。世の中に出回っていないという理由からしても、それが出回るためにはクリアしないといけない問題もたくさんあるという裏返しだといえます。
2011年07月05日
ある工場さんに生地をもっていくと、受付のかたが技術的なことは私は分からないというようなお話で、事務処理に徹されて、社長や部長に聞いてほしいということなのです。他の方に聞くことはできるのですが、その若い方に技術的なことも理解してもらうということが大事ではないかと思うのですが、それをあきらめるところからのスタートというのが厳しいところです。

私自身はそれがその人の問題だとは思わず、人がころころと変わる今の時代の仕事の特徴だといえます。長く仕事をしてもらおうと思えば教え込んでいかないといけないのですが、それが成り立たないのが今の職場みたいなもので、教え込むほどの余裕がなくできる人を探すという形です。

一見、仕事ができるひとというのは仕事を知らずに仕事をしない人だったりします。そういう盲目な判断が、仕事をできる人を消していくのです。仕事のできないひとは他の人に仕事を頼むので仕事をしなくてすむのです。頼まれた人はもうちょっと力をつけて自分でやってほしいなあと思いながらもあきらめモードです。

プロの現場でも素人ほど強いのが今の時代、海外にものづくりで負けてしまうのもそんなマニュアル化されてしまった日本的な体質だと思うのです。
2011年07月04日
先日、京都五条の田中直染料店で、草木染め大全(箕輪直子著、成分堂新光社)を買いました。この本の中の染めサンプルをみて、シルクとウールを染めるのは簡単そうですが、コットンともなるとなかなか手ごわそうです。さらに、リネンやラミーとなると難しいであろうと簡単に想像できます。

明治以前の近江上布というのはほとんどが藍染のようです。麻をきれいに染める手法が限られていたのだと思います。明治になって、化学染料が手に入るようになって色華やかな近江上布が作られるようになりました。そのころの染色技術というのも今の色が美しく残っているので今以上に確立されたものがあったのではないかと思います。

先日、京都五条の田中直染料店で、草木染め大全(箕輪直子著、成分堂新光社)を買いました。この本の中の染めサンプルをみて、シルクとウールを染めるのは簡単そうですが、コットンともなるとなかなか手ごわそうなのが染め上がったサンプルの色から観ても分かります。さらに、リネンやラミーとなると難しいであろうと簡単に想像できます。

明治以前の近江上布というのはほとんどが藍染のようです。ヨーロッパのリネンもアンティーク物は染めてあるもののほとんどが藍染です。麻を濃くきれいに染める手法が限られていたのだと思います。明治になって、化学染料が手に入るようになって色華やかな近江上布が作られるようになりました。そのころの染色技術というのも今の色が美しく残っているので今と同じく確立されたものがあったのではないかと思います。

麻というものが、特に手績みであった時代には染めるのは藍以外には難しかったのではないかと思います。それゆえに、どうやって藍で濃く染めるかということにすべてを費やしたような時代が続いたのではないでしょうか。昔は農業にしても手作業がほとんどでしたので、自然の中でリスクの高い今の何倍も大変な仕事だったといえます。

今日は夕方彦根の組合で中国から来られた留学生の方と30分ほど雑談しておりました。今は留学生の中でも一番多いのが中国からの留学生になっているのではと思います。後に生きるような経験をつみたいと考えておられる方で、今の海外の留学生の方というのもだんだんと考え方が変わってきたのかと思います。

欧米からの語学留学生やALTの先生との交流などは昔の機会はたくさんありましたが、そういう方とは違う自国に帰ってから生きるようなものを日本で学んでおきたいというスタイルです。仕事であるとしても、お金と物の話ではなく、人の話であったりして、実際に仕事で大事なのは学校では学ぶこととは違う部分であるのかもしれません。
2011年07月03日
今日は、日曜日、日曜日というのは何をしようかというよりも、遅れ気味のことをするのに非常にありがたい時間です。回りが動いていないのがありがたいのです。

リネンをウエディングドレスに活用されたいといわれる方が2件ありまして並行動いています。ウエディングドレスというのは贅沢が許される世界ですので倉庫の生地も含めてよさそうなものをピックアップさせていただきました。

ヨーロッパではウエディングドレスもリネンで作られていたのです。そして、おばあさんや母親が来たウエディングドレスを仕立て直して使うというような、生地というのはファミリータイズを生み出すような役割もあったのです。

色は、やはりウェディングのコンセプトからして白系が多いようです。合成繊維やシルクだと純白のものがベースとなるのでしょうが、リネンなのでオフ白のものを探しました。純白のものもよいかも知れませんが、黄色く焼けてしまうので永くは持たないので、メモリアルとして残すためにも蛍光晒や本晒よりもオフ白がよいのかなあと思います。リネンらしいナチュラルっぽいテイストも少し含むことができます。

夕方、彦根のショッピングセンターの本屋さんに立ち寄りました。雑誌掲載の依頼などの件で雑誌の確認を行いに行ったのです。「リネンで作る小物」も田舎の書店なので置いてあるのかなあと思いながら探しましたが、手芸コーナーの一番前の目立つところにディスプレイくださっててびっくりしました。
2011年07月02日
今の季節、川沿いには、赤苧や青苧がよく見かけられます。もともと、このような草から繊維が取られ麻織物が織られていたのです。着物というのは、いろいろな草の繊維を織ったものを総称して麻と呼んでいたのが昔の織物です。昔、裃などは大麻だということですが、普段着る着物用では厳しいところがあったと思います。昔はこういう草を見て雑草とは思わなかったのでしょうが、今の時代には雑草にしかみえません。

百年以上も使われなくても自生していてくれるというのが、麻がエコである象徴の一つです。そういうのを見ると日本の自然もまだまだ残っているなあと思います。これは、別に麻だけでなく、柿の木にしても、今はたわわに実をつけてもそれを人が取って食べることがなくなっても、翌年にはしっかりとまだ実をつけてくれているのです。柿の木をみると柿の成るのを楽しみにしていた昔の価値観そのものがエコなんだと思います。毎年、自分で実をつける柿を食べるだけでも、お店で売っている果物を食べものに掛かる輸送に使われたり、冷暖房に使われたり、廃棄処分される分のCO2削減に何倍も寄与できるのです。CO2削減を考えるよりも普通に見える無駄を削減することのほうが地球環境にとっては何倍もの意味があるのにと思うことが多くあります。

今の時代、お坊さんが着る袈裟なども、リネンが使われています。これは、お釈迦様の生まれたインドでもリネンが使われていることと関係しているのではないでしょうか。本来、日本の麻なら苧麻(らミー)が使われないといけないのですが、インドでは、イギリスの植民地であったこともありリネンが使われるのです。日本のお坊さんがリネンをお召しになられるというのも不思議な気分ではあります。

今日は梅雨が明けたかのような蒸し暑さの少ないさわやかな一日で、お昼前に加工工場さんにお邪魔しまして表で30分ほど立ち話です。本麻の小幅の織物を加工工場に何百メートルか投入しました。本麻の小幅織物というのは案外あるようでないのが今の時代です。小ロットの極みとなりつくろうとするとコストが高くなり百貨店などでも販売できる上代には収まらないのです。その分、綿麻とは違う世界をお楽しみいただける贅沢です。
2011年07月01日
7月になっても、サイレンとスプリングです。地球温暖化の問題を考える前に、この何十年かの間に加速したサイレンとスプリング現象を考えるべきでしょう。ちょう、せみ、くわがた、かぶとむし、赤とんぼ、すべてが何十分の1の世界で、それとともに生きるべき、魚類、鳥類なども消えてしまっています。

人間が意図的に魚を放流したり蛍を放流したりして楽しむバーチャルエコロジーは、残酷です。人の手が絶えれば、死滅してしまうのです。トキに関しても、トキだけを保護しても何の意味もないのです。トキが生きられる自然環境がないのですから、トキを自然界で繁殖させようとしても無理なことだったのです。

これは動物だけの問題ではありません、人間にも言えることです。今、たくさんの方が化学物質アレルギーや体質の問題で悩まれています。人間が普通に生きることのできない自然環境になってきてしまったということです。今日の夕方には、京都のお客様のところに伺い、その脚で、五条にある田中直染料店に伺いました。

学生時代に7年間住んでいたよいイメージのある京都の街ですらもコミコミしていて住みにくさを感じてしまうのは田舎ですらもが住みにくくなっているのでかもしれません。生活環境がコンクリート化してしまうと厳しいなあと思うのです。

失ってから気づくものも多いと思います。今日は、機料屋さんが来られていましたが、この15年で近江の産地でも機屋さんというのは廃業が続きました。これは、保険や金融商品などに力を入れる政治的な方針と表裏の関係で、片方を持ち上げれば、片方が締め付けられます。100年以上続いた企業さんが消えていく背景というのも、世界で一番安いものを作る繊維産業の中の戦いだけでなく、日本人全体のビジネスモラルや価値観の変遷によるところが大きいのです。

日本的なものづくりを守ろうとしたところほど日本的な重いものを背負っておられるのでこの15年ほどで消えていかれたように思います。人が国際的に標準化したということが日本の特色が薄れてしまう一番の部分ではないでしょうか。昔、日本は教科書どおりのステレオタイプで面白くないといわれた時代があったのですが、不思議なことに、そのころのものづくりのほうが本質的で他国にない特色にあふれていたような気がします。