for English speakers: Welcome to HayashiyoWelcome to Hayashiyo
リネンや麻を織る日々をつづっています。
ホームリネン日記2011年8月
2011年8月
リネン日記:29
2011年08月09日
今日は午前中来客がありました。午後からは、染糸などがそろそろ上がってきているのでリネンの超細番手のチェック柄のシリーズの柄組を考えています。糸の染まりあがりというのが予定よりも遅れ気味で、お盆明けになるとのことでこれは困った形です。

リネン120番手クラスの先染柄の量産技術の確立に挑んでいますが、リネンの糸というのも中国紡績でもかなり限界に来ている感じはいたします。リネン66番手とリネン100番手では1.5倍の違いですが、この違いが風合いの面で大きいのは、リネン66番手のストールとリネン100番手のストールの違いに表れています。

さらに、100番手と120番手では2割違うので、この差というのは大きいのです。昨年のインターテキスタイル上海などでは、リネン110番手のブラウスなどを展示しましたところ、市場では珍しいということでよい反応をいただきました。今年は、120番手クラスの先染を上海に持ち込みたいと計画をしております。

2年前にインターテキスタイル上海に持ち込んだ林与の125番手やビンテージアイリッシュリネン140番手などのソフトな柳流感のあるストールが国内だけでなく海外でも人気のリネンストールとして定着をしているのを感じます。林与のような小さな会社のものづくりが日本や世界のファッション業界に影響を与えるというのも不思議な気はします。

リネンの100番手超えの細番手の世界も海外に向けて情報発信をしているので、しばらくするとリネンの細番手市場というものが確実に形成されてくるものと思います。この世界というのが実はヨーロッパでも難しいようなリネンの世界で、日本の伝統に培われた麻織の技術を発揮できる分野ではないかと思うのです。
2011年08月08日
今日は午後から新聞の方がひこねの組合にお越しでした。今日は一日、リネンの細番手の厚地でつくったメンズシャツを着ていたのですが、これは秋冬向けの素材だなあと実感します。一日来ていると、暑くて汗でシャツがびっしょりで、リネンながらダイエットシャツにもなりそうです。無いものを作ると、いろいろと勉強になることも多いものです。

市場では、麻のものが素材としては皆さんが追われる注目素材という感じになってきています。今も、こんにゃく糊加工などの先染のものは常に目を引くアイテムなのですが、残念なことに、林与の場合、高価すぎて市場に出回ることはほとんどありません。数ヶ月前に特別に出させていただいたこんにゃく糊加工の本麻先染は難有にも関わらず、非常に好評でうれしかったです。

連日、5月後半から7月一杯は予定が詰まりすぎていて、身動きが取れなかったのですがようやく落ち着いてきて、10月の展示会に向けて新たな作品をつくるなど動いてみたいと考えています。織物をつくるというのは、見本であっても何人もが数日フルに働くのが当たり前です。

数年前から取り組んできたリネンの細番手のプロジェクトで開発した素材でつくった、リネンブラウス、リネンワンピースなども非常に好評です。製品にまでするのは勇気のいるものですが、林与がそれをやってみてよい感じなの確認しています。そういう素材が気になられる、デザイナーさんや百貨店のバイヤーさんなどは、一度形にされてみると今までの素材との違いというものがお分かりになられるかと思います。
2011年08月07日
今日は、長栄座の二日目です。今日もお婆さんから引き継いだ着物がこういう着物だとおっしゃってくださるご婦人の方にお出会いしました。価値観というのはそのものの品質だけにあるのではなく、お話を聞いていると見る方の中にあるものだと感じるのです。お婆さんの話が出てきたりすると、それを評価されるだけの人生観をお持ちであるというのが伝わってきます。林与にしましても、はじめてお会いした方に林与の歴史や自分のおじいさんや親戚の人の話をするので、布そのものの世界を超え、人のつながりに広がります。

林与の昔の近江上布をみて懐かしいなあとか、見ていて癒さされるといっていただけました。ご覧になられるだけでなく、しっかりと触っていただけましたので、その硬さなども実感いただけ展示してよかったなあと思うのです。今回展示をさせていただいて、興味を持っていただける方も多かったのです。長栄座という昔を偲ぶようなイベントで、こういう昔の日本的なものづくりの世界を見ていただくのは、林与にとって一番よいチャンスだったと思っていましたので実行ができてよかったです。

2011年08月06日
今日は朝一番に長浜のDENさんにお願いしていましたリネンの細番手の試作品を取りに行きました。会社に戻ってからすぐに米原の会場について、午後1時半くらいに準備が完了しました。

準備が完了して、会場も少し暑かったので額から汗がほとばしる中、林与の近江上布のタペストリーに興味を示してくださって声を掛けてくださったのが舞台衣装などを作られている桜井久美氏でした。昨日の会場準備のときから興味をもってくださってたというお話を聞きまして、このような場に持ち込んでよかったなあと思います。

ご年配の皆様方も家にも大事にしている自分のお婆さんの頃の着物というのがそっくりな感じだと何人も懐かしそうに生地を触ってくださってました。明治時代の芝居を再現するようなプロジェクトですので着物の世界の方が多いので、そういうものを評価くださるみなさまに見ていただけたことは良かったなあという思いです。

日本の失われつつある昔の時代のものや日本らしいものというのに大きな思いを持ってくださっているのを痛感します。他にも以前補助金事業の審査員をしてくださっていた方が林与を覚えていてくださって声を掛けてくださいました。DENさんにつくってもらった、今回は非売品ではありながら非常に好評でリネンの細番手の市場というものを切に感じるところです。

合計8点をハンガーに掛けておいただけではありますが、興味を示してくださる方が多かったので、夕方駆けつけてくださったDENさんにも反響などを説明いたしました。今の時代、布というものを非常に暖かく評価くださるのをありがたく思います。

滋賀県の段取りをくださった皆様も、今回がはじめての取り組みということでどういう形になるのかは分からないとおっしゃってくださっていたのですが、与一爺さんのころのものづくりが皆さんにご覧いただけたり、新しく取り組んでいるリネンの細番手が非常に高評価で十分なありがたさを感じました。以前、ファンドの審査をいただいた審査員の方などを林与を覚えてくださっていて声を掛けてくださり、地元でのPRというのは初めて位だったのですが暖かい目が一杯な気がいたしました。
2011年08月05日
今日は午前中、彦根でのアポイントメント、午後からは米原の伝統産業会館での展示の準備に向かいました。慣れない準備現場かと思いきや、いきなり工業技術センターの小谷さんがおられ、アットホームなスタートになりました。しばらくして、隣り合わせのブースのファブリカ村、北川陽子さんもお見えになられご挨拶、手際よく準備を済まされるのに感心です。

林与のブースは結局、林与の看板ロゴをどのようにしっかりと見せるかと、近江上布のタペストリーをどのように展示するかで、一休さん状態でした。パーティションの上で厚い布が長方形にうまく落ち着かないなあと悩んでいるところに、鋲と金槌をもったヒーロー(小谷さん)が現れ問題解決です。滋賀県の産地の皆さんが頼みの綱にするだけのことはあります。

さてさて、会社に戻るともう一枚の近江上布タペストリーが出来上がり、パーティションの裏表に上から掛ける形での展示をすることに決めました。あと、明日、洋服などは出来上がってくるとのことで楽しみ。本来はメインになるべき商品展示はアバウトな感じでよいかと思い、すべてが明日を待つばかりになりました。
2011年08月04日
今朝は彦根での打ち合わせがありました。最近の電子ガジェットらしく期待を裏切らずエクスペリアの調子が悪いんで、電池が充電できなかったりで、私の使い方が雑すぎるのか、昔、アメリカでラップトップパソコンなどが開発されたときに持ち歩いても壊れない一番大事だった丈夫なものという感覚が消え始めているような気がします。日本のノートパソコンなどが小さすぎてちゃちっぽいということで、日本人がものを丁寧に扱うとか、極端なクレームを言わないというのが小型化に貢献してきた一因だったとは思っています。繊細な技術を育むには非常に良い文化です。

麻のものにしても、アメリカではあまり普及しなかったのは、日本では何万円もする麻のシャツというのはドライクリーニング指定されて百貨店で高級品として販売され続けていたのですが、アメリカは他のものと一緒に洗って高温タンブラー乾燥してしまうというリネンにとっては非常に厳しい文化をもっているのです。

アメリカでデニムのジーンズを買うときにお店で自分のサイズに合わせてカットすると大変なのです。アメリカでジーンズを買うときには洗ってタンブラー乾燥すると5cmほど長さが短くなるというのを想定して買わないといけないというのをアメリカ人の友達が教えてくれました。カリフォルニアを中心とする南カリフォルニアの服飾文化がカジュアルであり続けるのも良いものを買ってもメンテが大変だということです。住んでいたアーバインという街では、街並み保存が進歩しすぎていて、電柱の禁止、看板の禁止に加え、洗濯物を屋外に干してはいけないという条例までも存在していたので、全体の総意の結果、リネン文化が栄えるような可能性は低かったといえます。

日本で着物が衰退したのも、国の政策の一環であり、学校に着物を着て行けないような指導から始まっています。そういう刷り込みは、一代で総体としての日本文化が崩壊してしまうのです。善悪よりも、損得勘定で成立させたり運用される法律で縛ってしまって本質を忘れてしまうと、極端な話、日本の独自文化の否定にすらつながっていきます。

普通のものづくりをしていては、普通のものしかできないし、他に頼んでいては、他の人の力量でしかものごとは進まないのです。自分でやるからには普通と違う何かをしないと他と同じ尺度、たとえば高い安いで評価されてしまいます。日本の国にはすでによいところがたくさんあるのにそれを否定要素に変えてしまうかどうかで、その先の方向性なども180度変わって来るのです。
2011年08月03日
「長栄座」のブースの飾りの準備で、近江上布を貼り付けたタペストリーを両側の壁に貼ろうかと考えています。柄を見ていて夏らしいなあと実感するのです。机の上でレイアウトを考えているときに、何かこれって、花火のような世界だなあとふと気が付いたのです。絣に織られているところも花火の火が散っているような感じで、昔の近江上布が草花をイメージしただけでなく、布の上に描かれた花火であるという私自身の中の結論です。

これは、林与の近江上布に思うだけのことなのかも知れませんが、一つ一つが打ち上げ花火のような儚さを持つ美しさなのです。ちょっと残念なのは、それを見てから他の布を見ても他の布の世界というのが浅い気ががしてしまい。脱帽状態です。

昔の糸がすごくしっかりとしているのも布の価値を感じさせます。半世紀以上も昔の布ですらも、ハイカラな感じがして、今こういう柄をくむことができるのだろうかと思います。とりあえず、狭いスペースながらも400種類くらいの柄を展示できるかと思います(生地の撮影はできません)。
2011年08月02日
今日は、午前中、彦根での会合、午後は近江八幡での会合に出席しました。昨日、今年の6月に織った本麻の無地の織物が加工から上がってきました。着物に仕立てないなあと思いながらも、キングサイズで作ったので自分用の着物に仕立てるのもよいのかなあと思っています。

着物の世界の方とお話をさせていただくと、本麻に関しては硬くて張りのあるものを求められているのが伝わってきます。今回のはしっかり目に織ってあるので、アパレル向けというよりは甚平向けの肌触りっぽく仕上がりました。

加工も途中、仕上がりの立会いなどをさせていただいて、林与自身が満足のいくような仕上がりを検討いただきました。加工に投入してからも1ヶ月以上掛けての一つの形です。本麻の無地物というのも本場のものというのは非常に少なくなってきているので、贅沢な一品だなあと思います。

会社に、本場白絣というポスターがあるのですが、それをみていても昔のものづくりというのは完璧すぎたなあと感じます。工業製品でありながらも自然と一体の加工なので産地というものが非常に大事だったのを感じます。昔の日本の産業が装置産業ではないところが今の時代に真似のできないところで、昔の産地のつくりあげた特産品の形のほうが素材としての本質を語る分では狭く深くで、今の移り変わる浅く広くのものづくりとは対極をなすところです。
2011年08月01日
昨日は書き忘れたのですが、犬上川の手前で多賀大社にも立ち寄りました。もうすぐ、万灯祭ということで、その準備に関係者の皆さんが追われておりました。境内では、蝉の鳴く声がけたたましく、神社の中を流れる小川にも、小魚が宿っています。日本の変わらない夏を感じ安心しました。

観光やビジネスでなく本質が機能しているというのは、なかなか評価されにくいのでしょうが長く引き継がれる秘訣だと思います。地元行事が、お客さんの飽きに左右されるようなスタイルにしてしまうと、継続は難しく、地元行事は支える人たちの気持ち的な部分から成り立つべきだと思います。それがなくなれば別に続ける必要すらないと思います。

日本には、世界的に有名なブランドが注目するようなものづくりがたくさんあるのに、日本国内でそれを評価する目を養わないと取り戻すことのできない世界になってしまいます。一方、伝統的な産品というのが今のライフスタイルに合うのかというと、普段、着物を着ている人がたくさん居るのか?今のマンションに仏壇が置けるのか?日頃の生活で焼き物を活用できているのかなど、伝統工芸というものの需要に関して陰りがありますが、海外からはその商品云々ではなく日本文化への憧れやそこにある哲学的なものへの憧れで、似たものはいくらでも手に入るとしても本物を求めたいとされる方も多いものです。

今回8月6日7日の米原で行われます長栄座のイベントでは林与の近江上布を始めて滋賀県内でごらんいただける機会になります。昔の日本人のものづくりを見ていただく良い機会ではないかと思います。日本の麻の世界の価値観がそこには詰まっています。ロビーでの展示というのもはじめての試みですので、どこまで小さなブースを形にできるのかは会場で準備してみないと分からないところが多いです。

今日の夕方は秋の風が吹いているかのような涼しさを感じました。8月に入ったばかりなのに少し変ですが、晴れているのに暑くもなく過ごしやすい一日です。