2012年03月07日
今日は夕方の出荷に向けて反物の検査など行う工程がありました。最後に巻き上げた段階で反物の裏表表示をつけます。通常、平織の反物というのは、両面ほとんど同じ加工工程を通るので見極めをつけることができず、最終の検反面をもって表とすることが、裏表の判断基準だったりします。
厳密には、織物を織っているときの表面が表ということで表示して加工に投入されるので、それを信用すれば巻き上がりというものは常に一定になっているはずなのですが、作業員の勘違いなどで裏と表が混同してしまったときなどには、最終の検反面を表表示するのです。
裏表がよく議論されるのですが、裏表だけでなく、生地には上下左右というものがあります。ハンドメイド皆様ですと、通常のリネンに関しては裏表上下左右を気にしていただく必要がほとんどない場合が多いものです。林与の生地に関しましては両面毛焼など裏と表の差が少ないのできれいに見えるほうを表に使っていただければよろしいかと思います。
生地一般の話になると、片面起毛などの処理が施されている場合、裏表が重要になってきますが、基本、再現性に縛られないハンドメイドですと起毛面を表に使っても裏に使っても自由は自由です。起毛などの場合は、毛羽方向が生じますので上下の問題が出てきますので、統一した方向で生地を使うことは重要だと思います。
実は生地だけでなく、糸にも紡績の方向というものがあるのです。紡績の順方向と逆方向です。特にモールの意図などではそれが顕著だったりして、巻き返しの際に注意をしたりいたします。リネンやラミーの糸の場合も順方向で織機に掛かるとスムーズに織れるという想定ができますが、糸自体が不規則なもので、そこまで厳密にする必要はないというのが経験上の結論です。途中の工程で工夫が必要かとは思います。
強撚の糸を使う際には、糸の順方向、逆方向だけでなく、チーズを扱うときの右巻、左巻も撚り回数を左右するので甘撚のものを扱うときには特に重要です。チーズの巻きも大きいときと小さいときでは、チーズから出てくるときに解撚や追撚が掛かってしまう回数が同じ1mでも違ってきます。そういうのもセンシティブなものづくりをするときには注意しておかないと整経の最初と最後で布のイメージが変わることもありえます。ほとんど気づかないケースが多いですが、布の右側と左側では厳密には糸の撚り回数が違っているのです。縦糸に扁平糸などを使うときには注意しないといけない点かもしれません。
木管なども片側にカラーのペイントが施してあったりして、木管の左右が区別できることで、取り扱うときに同じ方向で糸を扱ってあげることができるようになっています。途中の人がそれを意識できていないと後工程の人が一生懸命やっても駄目で、一貫生産というものは重要だなあと思います。ひとつの工場の中でも作業工程が増え、ものづくりに多くの人が介在すると一貫生産が成り立ちえなくなります。