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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2012年4月
リネン日記:25
2012年04月30日
夜、車でクロネコのベースまで荷物を持っていこうとしましたら、高速道路が大渋滞、連休の中休みで移動が多いようで、世の中はゴールデンウィークなんだなあと実感します。他にも、仕事をしていて、染めたい色があったり、あの加工がどうなってるのかと何度も気になりましたが外の世界はお休み中で今日は自分の仕事に集中しようと思うばかりです。

今、数件海外との直接の取引が動いていますが、納期的なもので、作って出荷するところまで考えると、出荷する前に出荷サンプル確認などに5日、出荷と船積みで1週間で、そこに週末が絡むと2週間ほどの時間が消えてしまいます。色味の許容範囲の問題や確認事項が発生するとどんどんと遅れがでるので、経験上からしても海外のシッピングサンプルなどはスムーズにOKが出にくいものです。

海外との取引はこちらが判断できる状態でないと相手の判断に任せる部分があるとどんどんと遅れが生じてきてしまいます。通常は糸をつくるのにも1ヶ月以上の待ちがあったり、染めるにも1ヶ月以上、加工で1週間など、本来はじっくりと織らないと特殊なものはぎりぎりのところまで規格をあげたりするので品質的によくないのです。

通常のものなら簡単でも規格を通常の1.5倍以上に上げたりするといろいろな弊害が出てきます。普通だと織れないといわれる2倍近い規格の縦横インチ200本を超える60番手の平の織物なんかにしても楽しめる方に楽しんでいただければよいんじゃあないかと思います。
2012年04月29日
今日、上島佳代子先生からメールが届きまして、「美の壺」の放映日程をご連絡いただきました。今度の5/2日(水)にNHKの『美の壷』BSプレミアムの夜7時30分~、再放送は総合テレビ5/6(日)朝4時30分~とBSプレミアム5/8(火)昼11時~です。

コラボいただいたスズキタカユキさんのプルオーバーブラウスや上島佳代子先生の作品などを通じて林与のリネンの一部をご覧いただけるかもしれません。林与には、詳細がわかりませんので可能性というだけではありますが…。

上島先生は、今年はリトアニアのリネン散策に旅立たれるとのこと。リトアニアって、何語なのでしょうか、上島先生もリネンさえあればどこでもへっちゃらな方だなあと思います。2年前にドイツのアンティークリネンを送ってもらったのが林与の事務所にあり、それの再現も林与の課題になっているままなのも思い出しました。

今日、倉庫に行くと昭和29年の湖涼会に関する手紙が出てきました。山田、川口、前田、中村、野々捨、林与の名前が並んでおり、織物が日本の基幹産業であった良き時代の業界の名前が並んでいました。一方で、産地での麻織を残していくことの難しさを感じずにはえられません。
2012年04月28日
今日は、車で走っていても暑いなあという夏を感じさせる陽気でした。今年は、桜も遅く寒い冬だったので、ジンクスとしては冬が寒ければ夏は暑いという流れが当てはまりそうです。これが異常気象というよりも季節が正常化したように思うのは私だけでしょうか。

先日ですが、近くでスズメがいるのを見ました。スズメなんて子供のころは毎日見るのが当たり前だったのに、今は、見かけることが少なくなってしまって、久しぶりに見たので今年に関しては環境が戻り始めているのではないかと思います。

ゴールデンウィークが始まったということもあって田植えも始められているようですが、林与はもう田んぼをしていませんので、田植えとは無縁なので農業のことはえらそうなことは言えません。でも農業のように自然に対して労力を使う作業をして食べ物を作ることは仕事の基本だろうなあと思います。逆に言うと、自分が働かなければ食べるものが手に入らないというような厳しさがあるところが、やっておられる方々を偉大に思えるところです。

農業というのはやれば確実に取れるというのではないところも仕事の本質的な要素を兼ね備えている部分ではないかと思うのです。農作物に価値があるのは、そんな不安定なものなので誰もが手を出せるものでないところではないでしょうか。ビルの中で一本の木に1万個のトマトが栽培できる技術があったとして、ビタミン剤がトマトの形に進化しただけのような。

技術的に進化した形というものがものづくりの本質を欠いてしまっては、そのものに宿るものも変わり果て本質を持ったものが消え果るというような悲しい結果に終わることも多いものです。たとえば、農作物で品種改良が重ねられたものが安価な産地に持ち出されてその品種改良という地道な努力を奪い取ってしまうというようケースはよくあることです。

日本の繊維業界がかつてよいものを作れた背景には、全体がチームとしてものづくりを支えていたところがあったといえます。それは今の時代のジャストインタイムな方式とはまったく別の方式で、私自身はその方式が日本的な方式だとは思っていません。ジャストインタイムな方式というのは、戦後の高度成長期の利己主義的な経営というのが本質で、最終は海外生産に移行してしまうようなものづくりだったりしてしまいまうので、日本的なものづくりを守ることができず、技術流出につながり、頭を使っている他国に技術を奪われて次の世代というものは日本ではやっていくのが難しくなるだけです。

今日は午前中には、近くの裁断屋さんが弊社に来てくださいました。裁断というものは洋服などをつくる一工程に過ぎないと思われるかもしれませんが、その裁断工場自体が、消えつつあるというのも、ジャストインタイムの弊害であったりいたします。そろそろ経営の専門家の皆さんも気がついてもいいんじゃあないでしょうか。
2012年04月27日
私自身は、もちつもたれつのような関係が、三方善の理想的なスタイルだと思うのです。これは日本だけの精神でなく、GIVEANDTAKEということばや、WINWIN SITUATIONというような海外で使われる言葉と同義です。

長く続くため精神だと思うのですが、商売をしていても何かよい要素があればそれを相手から取りに行くだけのタイプの人というのが多くなっているといえます。人が生きていくうえでの支えとしている特別なものを取れば自分の生きていくうえでの支えとしている特別なものを差し出さなければ、関係というものは長続きしないのです。それは時に対価だったりするかもしれません。

日本の商売って海外と違うのは、お付き合いという部分を大事にすることだと思います。損得勘定ではなくてみたいなところがあって、たぶん業界でも高いかもしれないけど林与の生地を使ってくださるところも多いのです。そういうところで林与は生かされていますので、その分、コンビニなスタイルにならずまっすぐな感じの商売を続けることが、買っていただくものに価値がこもるかと思うのです。

物を企画するということは簡単だと何度か書きましたが、商売をしている人ほど一般の人以上に物を買うことができる人というのは本当に少ないのです。ものを作る力がなくなったときにそれは物を買うしかできなくなるということなのですが、今は外国でものを作ってくれるところを探すほうが簡単だったりするものです。

最終的にものが余ったときに買ってくれるような存在が一番ありがたくて、ものが足りないときに売ってくれるような存在こそが一番三方善の精神に繋がります。これはまさに問屋機能で、この機能が働くことこそが大事で、それがなくなってしまっているのが今の、ジャストインタイムな時代の流れではないでしょうか。仕事が少ないときにリスクを背負ってものづくりしたり、忙しいときに無理をしたりするようなもちつもたれつの精神も、三方善の精神そのものだということがお分かりいただけるかと思います。

今の時代、作り手側でも暇なときには仕事がほしいけど、忙しいときには仕事がしたくないというケースのタイプの人も多いものです。暇なときに遊んでいる人が忙しいときにがんばれるかというとなかなか難しいもので、暇なときに遊んでいたら暇なときに仕事をしている人との差が広がっているだけで忙しいときにも一人前の仕事ができるかです。暇なときほど大変だという本質が見えるか見えないかで、忙しいときに仕事のありがたみがわかりがんばれる人なのかどうかもわかります。
2012年04月26日
この1週間ほどアパレルさんの製品の修正に時間を使っていました。リネンを縦、レーヨンを横に織る織物なのですが、この組み合わせがあまりよくないようで、リネンの糸のフシが目立ちすぎてきれいに仕上がった製品に修正を掛けるのでなかなか難しいのです。ベストな選択をしながらも織キズではない部分でのリスクというものが増えており、特に先染のコントラストの高い部分はリスクが高いです。

先週には、あるお客様から高品位なものの生産のご依頼がありましたが、それを進めることができるかどうかは作り手側のリスクを十分に理解いただいているかどうかで変わってきます。珍しいものというのはリスクが高いとか手間隙かかるので珍しいのです。

リネン25番手のものを織っていますがコントラストの強いものはかなり今年のロットは問題も生じそうです。複数のルートからの糸の手配でベストな選択を考えていますが、織機も止まらずに動いているのに、5cmほどの白っぽい部分が見えるなど、同じコーンの中で糸の太さにムラが生じてしまっているのを何度も確認しているだけに、糸選びは慎重にしないといけないのを感じます。
2012年04月25日
今日は、夕方、ある観光地の観光客の集うおみやげ物屋さんに行きました。麻の暖簾が売っていたので、「中国麻」としっかりと書いてありました。観光客相手に中国産を表示してものを売るのはセンスがないなあと最初感じてしまうのですが、なぜ大きく中国麻と書いておられるのかを考えると、しっかりと誤解を招かないように正直に販売されているのが立派だなあと感じました。普通おみやげ物屋さんというのは、手ごろに買ってもらえるようにイメージだけが先行して安価な海外製品がほとんどだったりしてしまいます。

彦根に来て周辺の近江上布の話などを聞いたら麻のものがほしくなるはずで、彦根のお土産を扱う店で並んでいたらそれがその産地さんのものと思ってしまいます。同じようなお話は、別のところで地場産のものを販売されている方も危惧されています。自分が販売しているものが本当に地場で作られたものなのか。

海外の麻のものの欠点は昔から言われているのが染めの問題です。糸などを染めると中まで染まらないのです。堅牢度が悪く、色落ちをして洗濯すると他のものに色移りしてしまいます。量販で販売される安価な洋服でも、ドライクリーニング限定なのもこのような事情が影響をしているのではないかといわれます。特に濃い色の色落ちは悪いのです。逆に色落ちさえ気にしなければ家庭で洗えば使い古したようなユーズド感が得られる可能性があります。

色落ちの問題は、染料なども国内のメーカーが撤退して海外のメーカーの染料を取り扱うようになってからより顕著になってしまっているようです。糸の中まできれいに染める方法もあるのですが、「リネンの染めに命を掛けていた」とおっしゃられる業界においてはリネンの染めの神様的な存在だったところだけの秘密で、電話で私が中まで染まらない問題に関して相談をしたときに特別にその技を教えてはくださいましたが真似をすることは現実的には難しいものだと思います。

こだわり始めたときにその差に気がつく人がいるかいないかでだんだんと技術というものはなくなってしまっていくものです。日本で販売されている麻のものの9割以上が海外産の生地となってしまっているのが現実で、同じセルローズ繊維ということで、綿と同じ感覚で麻を染めてしまうがためにぼんやりとした色に染まっている麻生地が増えてきてしまって本来の麻のもつ光沢感がみられないケースが多いものです。

麻の産地に関するお問い合わせなんかも2番目くらいにたくさんいただく質問なのですが、現実はブラックボックスであることも多く、アパレルの方や百貨店のプロの方でも誤解されてPRされたりしていることが多いので最終の消費者の方にまで正しい情報が伝わっていることは少ないものです。一般の方のほうが業界で商売されている方よりもこだわって物を探されておられるケースが多いのも感じます。

安く買って高く売るのが商売だと豪語されたかたがありましたが、その本質は見抜かれてしまうので長く続かない形だと思います。長く続けていくからには損得を抜きにした部分で業界をどう担っていくかが大事で、損を承知でやらないといけない厳しいものづくりができないと他とは違う特別な世界というのはごまかしで作り上げることになってしまいます。それが産地にこだわったり、自分自身がものを作ることだったりするのです。
2012年04月24日
麻の生成というのは色のコントロールが難しいのです。生成の色だけでなく品質をコントロールしようとすると、いろいろな畑から取れた原料を混ぜるような工夫が必要だったりいたします。これは、あまり一般には知られていない品質を安定させるための技術なのですが、業界では当たり前に行われていることなのです。

昨年の作柄というのはここ何十年で最悪だったといわれていますが、過去の在庫の原料などを使ってその差を埋めることが行われます。お米と同じでリネンが高騰する年の作柄というのは悪いものです。

麻本来の生成がアパレル向けに使われることはほとんどありません、干草のような臭い匂いがしてしまうからで、精錬や軽い漂白が行われていることがほとんどです。それでも十分に麻本来の生成のイメージは保っていますので本来のものを求められたい場合には、生成も匂いがするものを探されるほうが良いのです。

リネンの色の生成が、亜麻色の髪といわれるように、本来は金髪を想像するようなゴールドなのがリネンの生成の美しさなのですが、リネンの生成の光沢感のあるゴールドな色の美しさを楽しむことは難しくなっています。
2012年04月23日
林与自身は、近江上布のルーツは一般には鎌倉室町時代といわれていますが、湖東地域でも古代に大国荘と呼ばれ江戸時代には豊国村とよばれた場所にあると思っています。私の住んでいる東円堂という地域が、かつて奈良の東寺や興福寺などのお寺の荘園だったことなどが当時の日本の最先端の織物に対する技術や需要がこの地にあったのではないかと思っているのです。

また、豊満神社にしましても旗神を奉るとされ、西暦200年くらいの神話っぽいのにも出てまいります。この辺りどこまでが真実なのかはわかりませんが、そういう言い伝えがあるのはこの地の織物の歴史というのが、一般にいわれる近江上布以前にあって、特に、豊国村では細番手の麻織物が盛んに織る業者が多く、能登川地域の座布団や寝装系や琵琶湖周辺の蚊帳などの麻織物とは違うものに特化していたように思います。私が徐福伝説を信じるのも、秦氏というのも秦から来た人を一般に指して、その子孫が日本に織物技術を波及したと考えるのです。

実際に、上布と呼ばれるクラスの細い糸を使った緻密な織物を織ろうとすれば糸ソウコウや竹ソウコウでは難しく、鉄を加工する技術が必要であるのです。稲作なども弥生時代に中国からの伝承であるとされますが、それも日本の織物の歴史とかぶるのではないかと思います。徐福のような一人の人間が稲作、鋳造、織物などに関して高度な文化を日本にもたらしたと考えるのが自然だと思うのです。アンギンのような編み物に関しては農業の一環として誰もが考えうる程度のものですが、麻の細い糸を績んで織るような技術というのは日本中同じですので逆に伝来したと考えるのが普通ではないかと思います。

地場産業なんてものも、今の自動車産業と同じで、実際には一族の産業である側面が歴史的には大きかったわけで、技術に長けたものがその開発を背負って地域を潤してきた形ではないでしょうか。近江の地でも、わずか車で30分ほどの範囲で、同じ麻でも、寝装系、蚊帳系、着物系など分かれているのも、どの一族から分かれたかで取り扱うものが異なっているというのが本質的なところではないかと思います。

近江上布の織物の歴史に関して大国荘のことが語られないのは不思議だなあと前々から思っておりましたので、林与の近江上布のルーツに関する持論というのも面白い話だとは思われないでしょうか。
2012年04月19日
今日は午後から、京都新聞の方が取材にお越しくださいました。株式会社SQOさんが弊社素材で取り組まれているリネンシャツのプロジェクトに関する取材で、株式会社SQOの小林社長も東京からお越しくださり、手がけておられるリネンシャツに関する熱い思いが記者の方に伝わったのでなかろうかと思います。

小林氏が、記者からの、どんなシャツをつくろうとされたのかという問いに、自分が着たいと思うシャツを作ろうと思いました、とストレートに答えられていたのが、今回のリネンシャツプロジェクトの本髄ではないかと思うのです。私自身、小林氏というのは、フェラリーに憧れる少年のような強い思いを、麻シャツに対してもっておられるような印象です。

弊社以上に、今回のプロジェクトで力を発揮していただいたのが、長浜の布工房DENさんで、小林氏の思いに応えるべく襟の形だけで20型以上新しく検討をされておられます。林与の素材というのは、林与が四代続いて無理をするタイプですので、麻のものづくりの世界では麻織物にこだわり続けた家系ということで日本でも珍しく、そのものづくりは特別に見ていただくケースが多いので恵まれているのです。

林与のものづくりのスタイル自身が林与らしいというか、結果として、日本の麻織物のモデルちっくな形でありたいと考えているところもありますので、麻織物の本場のものづくりにふさわしいものづくりというものを残して生きたいと願っているところです。
2012年04月18日
今日は、朝一番でタイイングマシンの専門の方からアドバイスのお電話をいただきました。商いでされているのに、ノウハウを教えてくださいます。私自身が手が動いて調整をする人間だというところを買ってくださっているのだとおもいますが、ブラックボックスに見えるタイイングマシーンも、部品さえ正しければあとは調節の問題ですので、自分で解決できると信じて触って生きたいです。その後、午前中には、一宮からお客様がこられました。

昼からは、海外のサンプルの収縮物性の問題を検討しました。サンプルなので長さが足りなく、端のほうでテストをしたりすると物性がどうしても悪いということが原因ではないかと思うのですが、今回は安全を考えて加工を2回施すことにしました。

夕方は、予定通りに出荷をあげていただいたものがあって出荷時間ぎりぎりで出荷いたしました。風合いも非常によい感じです。織るだけでも1ヶ月以上の検討を重ねて動いたものだけに出来上がった反物を眺めると充実感があります。

並行してストールの製品作業があり、また、製品などの修正作業も荷物が届いて、もうすぐ暇になりそうかなあと思っていても、作業は山積みな状態です。プレミアムテキスタイルジャパンのトレンドインデックス素材の提出なども行い、ブース形の決定も行いました。時間の関係で今回も十分な準備ができるかあやしいですがプレミアムテキスタイルジャパンも楽しみなイベントの一つです。
2012年04月17日
林与の私自身が自社でものをつくることを大事にするのは、私自身が仕事に携わったときから、会社の中でも手を動かして布をつくる作業に携わってきた部分が大きいのです。製造業の製造の部分をしっかりとやってきているのでこの経験を持つ人は少ないだけに今となってはメリットではないでしょうか。

つくろうと思えば自分が動けば1週間あれば在庫の糸を作って思った生地がそれなりに出来上がるものです。林与が世界でも珍しいスタイルなのは、私自身の性格の問題だと思っています。普通だと大規模でやらないとできないことが、数人の力で出来上がってしまうのは考え方とスタイルの違いだと思っています。

展示会などでも世界のリネン需要の多くを支えられている1000人を超える何社さんもの生地と比べても、同じリネン生地でも生地に違いがあるのは、私も展示会に行って驚きです。流行を追わず、自分でものをつくることが一番の差別化になるのだと思うところです。

他のものを見ないことそれが大事だという林与独特のスタイルなのです。日本の麻織物の文化を支えていくためには独自のスタイルが必要だと思います。鎖国じゃないですが、鎖国したような状態でものをつくるのも海外から遅れるのではなく、独自の進化した文化が発展するのではないかと思うのです。

働くということひとつにしても、自分ががんばるということには、自分だけの基準で、ほかがどうとかいう話になると、客観的な基準で弱くなってしまいます。ほかと同じものをつくってはいないので、自分なりに自分の生業を立てるだけの労力を惜しむようでは食べてはいけません。人というのは立っていれば半畳のスペース、寝て一畳、そのほかの分をどこに注ぐかで、人が惹かれるような何かが続けられると思うのです。
2012年04月16日
昨日から夜通しで昼ころまで掛かって20mほど織り上げました。織れないと思っているものがうまく織れだして疲れを感じるよりも、喜びを感じることができるところです。そこまでしないとできないのかみたいなところがあるかもしれませんが、そこまでしないと、完成できなかったり、どこでもできる普通のものに終わる可能性が高いのです。

苦労せずにものを作る方法を考えるよりも、苦労をしてものをつくる方法を考えたほうが、後々のためになるのではないかと思います。楽をすればその楽をした部分が経験となって次に楽な仕事しかできなくなります。

織物の仕事って地味なところがありますが、実際の作業は地味そのものです。その地味な作業をどこまでアクティブにてきぱきとこなせるかが大事なのです。後ろ向きではやらないほうがましだろうなあと思います。

海外の展示会などに行くと面白いです。日本では地味に思われる繊維業界が、世界的に見れば地味なことはなくて、繊維に携わる人たちが生き生きとされています。ものづくりって本来は生き生きとした雰囲気の中から生まれてこないと駄目なのだと思います。
2012年04月15日
今日は日曜日、集中して現場作業に取り組みました。サシコ組織のもので全部の段取りを組み、あとは、煩雑な作業を手作業で一本一本進めていくのみです。かなり複雑なものでも織れる自信はあって時間との戦いになることが多いものです。

より完璧を求めるとトライアルが多くなりすぎて時間的な無理が多くなりすぎて無駄な動きも増えるので、とりあえず、ベストだと思える想定のものを試してみてそれがたたき台になって完成に近づいていくものです。

ソウコウを増やしてドロッパーを増やすだけでも本来の織るという仕事からかけ離れた部分ではありますが、そういう地道な部分の作業があってこそ新しいものが生まれてきます。一本一本を数えたり一枚忘れて何時間分の作業のやり直しをしたりとか、そこには、頭じゃない人の作業という平等な世界が見えてきます。

どれだけ経験を積むかというのは頭じゃなくて体でなのです。理論的にできるかできないかではなくて、作業ができるかできないかがものづくりのポイントだったりいたします。今回は織れると信じて前に進んで、最初は織れない状態のものを何時間も掛けて時には何日も掛けて織れる状態にもっていきます。
2012年04月14日
ようやく、桜が満開になりました。東京ではもう散り始めているとか…。今年の桜は例年よりもピンク色をしているような気がします。桜というのは不思議で、地域ごとに一斉に咲くものです。同じ場所の同じ種類の桜は、樹齢も異なるはずなのに同じときに同じように咲いて同じように散っていく。地下ではひとつに繋がっているような気がします。植物は同じところに植えると運命共同体的に振舞うものです。

桜を見ていて一番日本らしい草花に見えますが、林与の近江上布に桜のモチーフがあったかと思うと、ほとんどないのではないかとふと思いました。見落としたのかもしれませんが、いくつかあってもよい気がしますが、なぜなのでしょうか、分かりません。たぶん、ピンクという色を麻にのせるのが難しかったのではないかと思います。

先日には、近江上布の柄を社内でポリエステルのちりめん素材にプリントしてみました。素材は異なるものの見ていると絣の微妙な感じもうまく再現されています。少し手を加えれば市販のプリント柄よりも味のある世界が広がるのではないかと思います。

素材感は別にしまして、柄のイメージとしましてはよい感じなので、着心地は別としましても一度服にしてみようかと考えています。林与の近江上布柄のワンピースというものも粋なものだと考えます。フラットベッドの大判プリンタをテストで使えるようなところはないでしょうか。自分自身でがりがりとやってみたい気分です。7月8月くらいに応援くださる方あられましたら情報をください。
2012年04月13日
昨日の遅くに糸が染まりあがってきて、時間を節約するため縦糸を半分半分で整形してサンプル枡をつくることにしました。朝にチーズ巻き屋さんに糸を持っていって、夕方前にはチーズアップが完了で、急いで整経をいたしました。

一方で機の調整がいろいろとあって、どうも縦の筬通しの割り振りがうまく行かない台があり、どういう風に割り振るのかを考えていました。想像では織ったらそれほど割り振りは問題ないだろうと考え、時間も切羽詰ってきているのでとりあえずの割り振りで行くことにしました。

2重ビーム用の特別の機を作ってみたもののこれが本当に織れるのかというのは、試織の段階でかなり苦労をしているので、ベースの糸も細くて切れやすくリネン100%で織りにくいのは間違いないです。夜には彦根で理事会がありました。
2012年04月12日
今日は朝一番に加工工場から生地が上がっているという電話をもらいまして、取りに行きました。小幅生地と2重織の生地が上がっていました。私が行くと常に用意してくださっていて、すぐに持ち帰れるように段取りくださっています。

時間に余裕のあるときは、加工から上がった反物を持ってきてもらうのですが、ほとんどの場合が急ぎですので上がったらすぐに連絡をもらって取りに伺ってすぐに風合いなどを確認して出荷の準備に入ることがほとんどです。

小幅生地のほうは、よい風合いに上がっています。これも時に硬く上がってしまったり、フラットすぎてみたいなこともあるので、常に一様に上がるとは限らないので、自分がどこまで納得できる仕上がりなのかが大事なのです。

今回も、2重織のほうの風合いが想像していた感じとは異なるので、加工工場に再度、加工工程の確認を行いました。
2012年04月11日
今日は、夜、京都の郵便局にEMSを出しにいきました。帰りに祇園の中を通って桜を見て帰りました。滋賀の湖東地域は桜は咲き始めくらいですが、京都では桜が満開になっていて、夜桜が綺麗ですね。

夜桜のバックが古びた旅館であるのがまたよい感じです。背景がビルの壁だと京都らしさが半減してしまいます。お寺や神社は非課税の部分もあり、また、保存の対象になりがちですが、古い旅館や料亭などはその維持というものが大変だろうとおもいます。

学生の時に見た京都の桜と、今見る京都の桜では、やはり、年をとって桜を綺麗だなあと楽しめる気持ちがより高くなっていると思います。バタバタな日ごろなので、車から降りて数分、京都の満開の夜桜を楽しんだだけでも贅沢な気分です。
2012年04月10日
今日は、林与自身が縦糸の指図ミスをしてしまい整経のやり直しです。急ぐということで進めていた案件だけに、織る横糸の番手の話をしたときに、縦糸の番手の指図ミスに気がついて、「こんな簡単な失敗をしてしまっては、そろそろ引退かみたいな」引導を渡されたような気分になりました。

重要な案件ですので、至急やり直す手配をいたしました。ちょうど、糸が染色工場から染まりあがってきて予定していたのとは違う形になりますが、経を半分半分別の色にして、2色のサンプルを同時に作る形に変更です。

番手ミスをした縦糸も新しいサンプルを作るために使う形にしました。ノーインベントリーな製造現場ではこういうミスが起こるとそれを作り続けるようなことはしないと思いますが、林与はものづくりの会社なので、そういうときこそ大きなチャンスだと思って、何かほかの別のものを作ってみようと織ってみました。

新商品というのが失敗の中から出来てくることも多いので、基本、失敗は成功のもとなのですが、軽く考えてその失敗を成功に変える努力というのは怠ってはならないと思います。この失敗で出来上がったカウンターも展示会などでご覧いただくと魅力的な布に見えるものと思います。
2012年04月08日
今日は春らしい穏やかなお天気で、18度くらいまで気温が上がっていました。外に出ていると隣のおじさんが孫をつれて散歩されていました。普通の日曜日よりも通りに子供が今日は多いなあと思っていると、豊満神社の春の祭典ということでした。

近江上布の起源は一般には高宮布とされていますが、それ以前の中世に大国の荘と呼ばれていたこの地域は織物が盛んな地域で旗神を祀るとされる豊満神社からしても、高宮布以前から大国庄(豊国地域)では麻織物を織る技術があったと私は想像しています。

私自身は、秦氏というのは一般に渡来人を指すとは思うのですが、やはり、中国の秦に由来する気がしていて、秦の時代に日本に来たという徐福が、日本の織物が飛躍したきっかけではないかと思います。今は国境のようなものがありますが、当時、中国も日本も逆に言うとたどり着けば人との出会いがあるだけというようなものではないでしょうか。土地自体も所有という概念すらなかったといえますので。

中国にしても国の中で今でも言葉が通じないというほどですし、日本国内においても地域ごとに言葉が違っていたので、織物のノウハウにしても血縁関係が広がるにつれて自然と広まったのではないかと思います。春の穏やかな日に古のことを想像してみました。歴史や考古学は文学的であって、人によって捕らえ方が異なり見識が異なってもよいものだと思います。
2012年04月07日
今日は、午後から、キッチンクロスの案件で東京よりお客様がお越しくださいました。林与のキッチンクロスをより多くの店頭でごらんいただける機会が今後は増えてくるのではないかと思っております。

ネットでのキッチンクロスも好調に販売をさせていただいて在庫がほとんどない状況でございます。在庫の拡充を5月の中ころから行えるかと考えておりますので、今しばらくお待ちくださいませ。

林与自身もHDタイプのキッチンクロスを、洗面所などで手を拭いたりするのに使っています。これはほんとよい感じの風合いに育っていくクロスですので使えば使うほどに愛着が沸いてくる感じです。1年ほど使うと、クタクタな感じになりますが、丈夫に作ってありますので何年でもお使いいただけます。

記念のプレゼントなどに非常によろしいのではないかと思います。