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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2014年1月
リネン日記:25
2014年01月08日
今日は、朝一番で東京早稲田にある富田染工芸さんにお邪魔しました。ルーブル博物館などでも型紙で捺染したストールを販売されているのですが、麻のシリーズも展開されたいということで、林与のリネン素材や本麻素材を検討下さっておられます。私自身も近江上布柄の展開を考えたときに、シルクに捺染ということで分野が違うものの型紙捺染に関してはネットで調べて、日本の型染の世界で一番気になっていたのが富田染工芸さんでした。

今回、特別のストール用の麻生地を探しておられるということで、JETROさんからのご紹介をいただきお会いする機会をいただきました。お会いしてお話をお聞きするとものづくりに対する考え方というものがまったく同じで、仕事に対する姿勢や繊維業界を見つめる目も仕事における価値観を守っていこうとされるときに目指される方向性も同じなのです。

お話をしていて、やはり、親方の大変なのは技術的なことではなく、仕事があっても成り立たせるということだろうかと思うのです。お話を聞かせていただいた後で、工房を見学させていただきました。普通は型紙の多さに目がいくのでしょうが、私が興味深かったのは、蒸し器や糊抜き機、加工までも自社で持っておられ、社内で一貫した生産ができること。

型紙を使って捺染するだけじゃなく、すべてに精通されているところがまさに魅力。わたしも、子供の頃の近江上布を生産していたころの家の現場と似ているのです。ものづくりするということは、やはり自分のなかにすべてを持っていないと難しいのだろうと思いました。人の力を感じるのです。給料なしでも弟子入りしたい気分になるような世界です。
2014年01月07日
今日は、朝、加工工場に加工出し。年明けを感じるのは、年明けの第一週、第二週が行事やお客さんで埋まってしまって、今年の秋冬やすでに来年の春夏に向けての企画の話。

一般のお客様も秋冬素材探しから春夏素材探しに動かれて問い合わせなども多く、業者さん関係でも3月だとまだ生産のキャパが空いているので、3月の生産の検討をお願いする。この2年ほど、新しい見本も作れないほどに忙しく仕事に追われている。

この忙しさというのは、会社の中においても仕事のできる出来ないの偏りから生まれていることも多いと思う。織物会社が織物を織っていればよいというのが本来は理想の形だろうが、材料から販売まで、他の部分でできないといわれることを不本意ながらもしわ寄せを吸収することで、自分のやった仕事というのが売れるものがつくれ、売れる形となっていく。

自分自身で仕事することを増やすことが仕事の獲得に繋がっていくのだが、それをされる人というのは世の中見ても少ないもので、自分が仕事をせずに他の人に頼むと結局、そういうのは長続きせず自分自身の仕事自体がなくなっていく。日本企業が海外で生産をし始めると結局、海外メーカーが仕事をしているということになるのと同じだろう。
2014年01月06日
この3日間、正月ということで京都の染工場に無理をいい、現場を借りて詰め込みでの後染の作業。一度ではうまくいかないばかりか、何度も色を出しなおして、浴比の問題なども含めて、簡単ではない問題を乗り越えないといけない。

日本の染色も含めて織物の世界というのは引退間際の方が指揮されていることが多く、どこの工場に頼んでも5年先に同じものができるのかという確約はないもの。この案件以外にも見本を作って本生産のところに差し掛かって、引退されてしまわれるというようなこともあったりで同じものが出来るという約束がひっくり返って大変なこともある。

1着が100万円を超えるような高級な絞り染めの染め工場で3日間仕事をしたことで、染色工場の社長の話を聞きながら、京都の染工場の中での作業というものの流れも勉強が出来たという大きなメリットもある。普通の家に見える建物の中に、染浴が並べてあって作業が行われている。

京都で仕事をするということは、滋賀県で仕事をするというのとは違った制約がある一方で、京都の人のほうが仕事しないと生きていけないという感覚を持っておられるのも感じる。田舎は広く裕福ということで働いている多くの人に焦りがないというのもあるのだろう。
2014年01月02日
年末に、菱沼良樹氏からメールをいただき、林与の生地をプリントベースにお使いいただいたアヤメのグリンのドレスが、シンガポールでのクチュールコレクションでの新聞記事に掲載されたことを教えていただきました。

シンガポールでのクチュールショウでは世界から40名のデザイナーが招待され、日本からは菱沼氏の他、丸山敬太氏、小篠順子氏、桂由美氏が参加。高級ラインでの日本人デザイナーの存在を発信されています。

私自身の今年の目標は、国際展を含む4つの展示会に出展することで、仕事以上の力を展示会に使うことになろうかと思えます。私自身は展示会で見せるものと売るものは別であってもよかろうという気持ちが多く。デザイナーのように自分の作りたい生地を提案するという一番の基本の部分を大事にしつつ、その布がどこまでデザイナーの皆さんに語りかけることが出来るのかというあたりを、信じています。

実際には、布を作る工程や技法などよりも、人生観とかが大事で、布というのはそれを表現するための言葉のようなものに過ぎません。たぶん、織物を作るものとして力を注ぐという部分大事にすることが、デザインとかよりも大事に思うところで、それを抜きにした色柄風合いなどの見たくれだけのものに偏り手を抜いてしまうなら、古い織機に頭を悩ませながら織物を作り上げる意味などなかろうかと思うのです。

自分が何をしたからどんな風に考えて、どんな織物をつくることになったのかとか、誰とであったからこんな織物を作ろうと考えたとか、織物の本質を考えたときにどんな織物を自分自身で経験しておくべきだろいうかとか、他の人には関係のない制約などがあってこそ自分らしい布が出来上がってくることになり、そこに意味があるのだろうと思えるのです。
2014年01月01日
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

ジャガード織機の調節を繰り返しながら年を越しました。年末年始というのがピークのときなので、仕事をしなければピークのときに仕事をしないお店を開かないようなものなのかなあと思うのと、私自身は普段時間におわれて仕事をしているので、外の世界が止まっている時間に時間のかかる仕事をできるのはよいことだなあと思えます。

私自身はこういうのが織物の世界での職人的な気質ではなかろうかと思うのです。普通にしていれば織物なんて特別なものは出来てこないし、技術にしてもタイムオーバーばかり。自分自身で覚悟の努力しなければ人よりも上の技術は身につかないだろうと思います。

昔は、織物の世界にも神とか鬼のような技術をもつ人がいたのだろうと思います。たとえば、昼に田畑、家の仕事をして、夜に時間を費やしながら手機を動かしたようなおばあさんにしても、仕事は今の時代以上に厳しく美しいものです。そんなおばあさんが今の時代にいるのかというといないだろうと思います。

私自身はメンタリティの面でもそういう昔のおばあさんを当たり前に超えていないと、らしいモノづくりはできないと思うので、普通の生活とは違う生活の中でのモノづくりというものの中で、普通とは違うデザイン的な感性も高まろうかと思えます。仕事に対する感覚も特別であるのが大事だろうと思っています。

展示会などでも、70歳手前あるいは超えておられるであろう機屋の方が、毎回何件か、はじめましてとご挨拶に来て下さることがあるのです。40半ばの人間の話をわざわざ聞きにこられても得るものは少ないでしょうが、意気込みみたいなものを見守りに来て下さるのだろうと思うのです。

数ヶ月の経験が一生の経験を上回ることも普通にありえるのが織物の世界で、そのためには素直さが一番大事だろうと思います。お話をしていて競争心むき出しの方が居られたりするのですが、自分のできる範囲がすべてですので、出来上がったものにしても他の人と競争をする必要はないと思っております。

自分がつくるものが自分のつくったもの、人がつくったものは人のつくったもの、価値はまったく別物で、人の作ったものがよく見えて真似ようとすると自分を失い、邪の道に入ります。たまたまでありますが、林与がテレビを見ないのも、流行を追わない自分のスタイルの発信に繋がっているだろうと思います。麻織物の価値観というものは麻織物を作るものが自分の中にもってこそ一番意味があろうかと思うところです。また、そこに家ごとの布の特色もあらわれてよいんじゃあなかろうかと思います。