2022年04月04日
林与のリネンを使ったウェディング衣装をまとった写真を送っていただいた。アパレル向けなので透け感や厚みなどが合うのかなあと心配していたところも自分の中にはあったのだけども、ほんと綺麗な仕上がりでまとめていただいていた。私の知り合いの方の紹介で林与にたどり着いてくださって、その時に、たまたま、L43の白い生地が在庫に残っていたので良かった。
林与のシャトル織機もそれなりにパーツやシャトルなどもあとあと動かせるように手配をしているので、あと20年くらいは動かせそうだけども、リネンを織るだけでなく、織物工場という環境を維持していく上で織機を動かせる環境というのは、戦後のひと世代前の方々が引退のあとも、織機だけがあっても無理でたまたま私が当たり前に調整とかするのでなんとかなっているところがある。
織機があるだけでは駄目で、動かす技術があるだけでも駄目で、織ったものを買ってもらえないと駄目、すなわち仕事が回っていないと、生地をつくるだけでなく売れないと駄目というところ。今はサステイナブルな流れで、ファッション業界もサステイナブルな考え方が受け入れられ始め、ブランドさんが上から目線のものづくりはなくなりつつある。
たとえば300mの注文で、300mぴったり作れるのかというと、330mくらいは綺麗に生産する予定で、材料は400m弱分くらいを投入するとか、350mくらいが織れて、加工から上がって来て問題の多い部分や加工ロスなどで短くなって、300mちょっとの納品となるのが理想。ジャストインタイムシステムは、表に出せない無駄を想定してつくることで成り立つ。
たとえば、サンプルと量産とではどちらが時間が掛かるのかというと、サンプルを作るときの方が量産よりも時間を掛けることが多い。最終規格を決めるために、いろいろと何パターンか織ったりすることが多く、加工も一発で決まるとは限らないので加工がうまくいかなかったときのために余分にもう一回加工に出せるように生機を加工に出さずに残しておくとか、いろいろと試行錯誤に伴うロスはいっぱいあって、機屋というのが織物を織るだけでなく、布という部分は結局、商品となったときに、それが洋服であろうが小物や資材であろうが、商品のイメージを決める主要な部分となるので、デザイナーさんたちがお客様なので布のクリエイターとしての染や加工、また縫製とかも含めて、物性や、最終商品までの理解がないと、企画の話に対応できないことも多かったりする。
機屋が、そういう部分でお腹いっぱいになって仕事した気分になっても仕方ないのでそれは仕事外の部分として、地道な織物の作業の部分に落とし込んでゆく。何種類ものサンプルを試したときには何種類ものデータができてそれを管理しながら本生産の一つに決める。データだけでなく、途中作った布などが残ってそれらはゴミなのかというとゴミではなくて自分にとっては大事な資料となる。頭でこうしたらどうなるああなるでなく、実際にやってみてこういう結果になるという実体が手元に残るのである。それをやった人にだけしか見えない結果、実際のやってみた経験が自分の中に残るのであって、それが案外、新しい企画の話をするときにも空論で終わらないから失敗のリスクを減らすのにも役立ち、その差は大きい。
私が自分でやってみて自分で結果を知るのが大事だと思うのはそのあたり、織機なんかでも構造を理解しているかどうかよりも実際に織機を手を使って調整できるかできないかの問題で、頭で分かっていてこうすればよいああすればよいというのは簡単でも、実際にその作業を現実問題としてやってみることができるかできないか、やって駄目だったら1日掛かってやってみたことを今度は1日掛かってもとに戻して、別の解決方法を探さないと行けなかったりである。無駄に2日捨てられるかどうか、捨てられる人が強くって、捨てられない人というのはいつまでもそこで止まっている。2日とかいたけど、それが2週間かもしれないし、2か月かもしれない、半年1年、ときには、数年、そのくらい長い試行錯誤はあったりして、その間その織機は動かないで止まっていたりする。