2023年12月26日
11月に奥田染工の社長が44歳で急遽され、捺染の世界なので分野は違えども、境遇的に似ているようなところがあったりもして、それを感じたテキスタイルツリーの成田さんが、奥田さんのことを教えてくださり、京都でテキスタイルマルシェがあったときに、大阪出張の帰りに五条のひなやさんで最初に出会ったのがきっかけ。その時は近江上布の柄を広幅で再現したいという考えがあったので、それを相談してみるも奥田さんの工場では難しいとの判断でそのままだったのだけども。
そうしているうちにテキスタイルマルシェ参加のお誘いがあって出展し始めると不思議にいろいろとつながりがあるのが、月島でセコリ荘をやっておられた宮浦さんが一緒にいろいろと活動されてたのが奥田さんで、SNS感覚での繊維業界へのアプローチみたいなのは、自分たちが自分たちをプロモートしていくみたいな考え方。
新宿伊勢丹婦人雑貨売り場であったテキスタイルマルシェでは、二宮先生とのお出会いがあって、二宮先生というのは若いころに奥田染工の先代に染色のことを教わられたとのことで、その二宮先生に、近江上布柄を広幅で再現するプロジェクトで、捺染をやらないといけなかった時に、ゴールデンウィークの日に午後からはん4時間ほどで、実践的な捺染の基礎を教えてもらい、染料や助剤などの具体的に必要なものも教えてもらって、近江上布柄の広幅絣プロジェクトは、出来たりもした。
奥田さんとはお仕事では1度依頼をしたことがあって、それは普通はプリントでしかできないような柄で、50mの本生産なのに、まずできるかどうかのテストプリントなどもやってもらって、仕事というよりもデザイナーさんがつくりたい柄だったのでそれを一度やってみるという思いで、そんな手間ばっかりが掛かる仕事だったけど受けてくださった。
八王子の工場の現場に行ったときにも、トタンで囲まれた奥田染工は、入口が分からない。トタンの周りには奥田染工の看板もなにもなく、トタンの中に入って中にたどり着くと、そこに奥田染工の現場があった。昭和の雰囲気でいろんな古いものが残っていて、なかなかこれを少人数で切り盛りしてゆくのは大変だろうなあと思ったが、そのときも若いデザイナーの方がおられ、自分で作業して自分のコレクション用のプリント生地を作り上げているということをやっておられた。
展示会などでも、奥田さんというのはユーモアがある側面、理論派的なところがあったりもするので、普通のビジネスライクな業務的なスタイルじゃないので、林与のところに来てくださってずっとしゃべっているみたいなことも多かった。宮浦さんの糸編主催の合同就職説明会みたいなイベントの時も、文化服飾学園で先生もされていたので、会場に来ていた教え子の女の子で、その女の子をこの子は根性あるよとお薦めしてくださったりで、かなり魅せるタイプの生徒さんだったので地味な現場に合うんやろうかとかざっくばらんにその女の子も一緒にみんなで話をしたり。
他に、八王子で蒸器のでものがあって、それを軽トラで引き取りに行くことにしたのだけど、積み込むのに人手が必要で八王子と言えば奥田さんて、奥田さんに手伝ってもらえるかなあって頼んだら快くスタッフの方も一緒に手伝ってもらったりとかで、謝礼も払うつもりで用意もしてたけど受け取ってもらえずで、ファミレスで好きなものを注文して食べてもらうだけみたいなこともあった。
しっかりとしておられたので私と同じくらいの年齢化と思いきや10歳ほど若かったというのも、やはり若いころに先代が亡くなったことでしっかりと若いころから自分で物事を判断して成り立たせてこられたというあたりが、当たり前の強さみたいなものだったのだろう。
先日、糸編の宮浦さんから電話を久しぶりにもらって、宮浦さんとマブダチ同士みたいな奥田さんが亡くなられたことも気がかりで尋ねると、私もやることだらけで身動きが取れないことが多いけども、何か林与ができることがあればみたいな。奥田染工さんにレピア織機が入ったようなブログ報告があったので、そういうので困られたら助けられるかもですのでスタッフの方に伝えといてくださいと。
いろいろと作業に追われてしまって、プラスアルファのことができていないような、やれるときにやっておくしかないんだろうなあと思って、3月のFABRICa NIPPONのイベントへの出展も今の林与の状況では無理だと思って見送りを考えていたが申し込んで、無料手織り体験を実施することに。主催の方に迷惑は掛けないようにいろいろと私のやろうとしていることもOKの返事いただけ申し込ませていただいた。会場への入場に年齢制限もないとのことで、ご家族ずれでお越しいただいても一般の方も入れるとのこと。
ものが売れる売れないよりも会場に来た人が楽しめて盛り上がるとうれしいなあと思う。これは手織り体験を今まで10数回くらいはやって来て、無料で気軽に超簡単な手織り体験を楽しんでもらおうという試み。自分が織っているところを見てもらうじゃなくて、自分で織ってもらって経験してもらうが大事で、だれでも簡単で楽しいと思うし、織物に興味をもつきっかけになってもらえれば良いなあと思う。
宮浦さんが林与のスタイルが好きだといっていただけるのもなんとなく似ているかもとおもうところで、セコリ荘や奥田染工さんって林与の感覚と似ていてそういうのがいいなあと思っている。小さなお子さんが夢中になって初めての手織りを体験してお母さんがもう終わりにしようといっても、もっと織りたいと思ってくださるとか、感無量。そういうとことんまでやりたい感覚が日本の繊維業界を支えるための本質的なところではないのかと思っていたりする。