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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

難しさ

2012年08月06日

超高密度の織物を織っていますが、この織物というのは簡単に織れるものじゃあないなあとつくづく思います。これは糸に水溶性ビニロンを巻いて織る林与では珍しいタイプなのですが糸からしても細番手のリネンを使い、総本数からすると一時間に300本程度つなげるとすれば縦糸をつなぐだけでも普通の人の3日分の仕事。つないでから織り出すまでに数日使ってしまって、織り出せたと思ったら縦糸の送り具合の調整、最後にまた夜中、調整を数箇所掛けて結局織機に乗ってから2週間ほど掛かって安定させました。

どこをどう調節すると織れるのかということは本当に感覚的なものに近いです。調整も、目、耳、手、脚、体を妥協なくどこまで動かすか。シャトルを挟むとバランスが壊れてしまうので、シャトルを挟まないでどこまで調子よく織り進めることができるかが大事で、器用な人でないと綺麗に織ることは難しいものです。

この織物もなぜここまで織るのが難しいのかというと、無理やり難しいところまで密度を上げたためで、実用的に織れるかなあと思うぎりぎりのところで規格を定めたので、織るのが難しいのは当たり前といえば当たり前。織機の具合が悪くなったときも、一番困るのがなぜ悪くなったのかを織っている人が、その状況を説明できないと完璧に調整したつもりでいるだけに、どこを触って調子を元に戻してよいのかも分からないのです。

織機を調整するときの一番大事な調整方法のコツというものを知っているか知っていないかが大事で、シャトルの場合、調整箇所なんていうのはたくさんあるのですが、そのそれぞれを緩めてよいのか締めるほうがよいのか、的確に判断できないと調整も収束しないばかりか、バランスが壊れたときにどう立て直すかすら分からないと本生産の途中で座礁してしまいます。

怖いなあと思うほどのリスクの高さで、林与でも10回受けたとしてそのうち何回うまく仕事がこなせるかという自信がないのです。これは、おかしな話ですが同じタイプの織機でも微妙な織機の状態で織れる台と織れない台があったりするものですし、シャトルの調子ひとつでも調子の良いシャトルを挟んで壊してしまうと、次の調子の良いシャトルを見つけ、調子よく糸がでるようにゴムの調節など。今回もなんとか調子よく織れるところまで持って行けました。仕事というのは一つ出来ないとその仕事に追われて他のすべてが止まってしまいますので、一般的には安全な範囲でどう仕事をするのかが仕事をスムーズに流すかのコツではありますが、こういうリスクの高すぎるステートオブアート的な織物も惑星直列的な偶然の成果物的な天の恵みで、作れなくなるときがくることも当然あると感じるので、今挑戦しておくことは大事だろうなあと思います。


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