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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

本場もの

2010年02月13日

林与が、本場近江で麻織を続けていられる背景には本物指向だったことがあります。麻に関しては日本の麻業界に置いても代表できるようなものを作りたいという思いで、近江上布の時代からものづくりを続けています。買われる方からすると関係がないことかもしれませんが、林与のものづくりの背景には日本の麻の歴史に培われた技術があり、今の時代の麻織物、将来の日本の麻織物をどうクリエーションしていくかという大きな課題があります。世界は小さくなりつつありますので、世界規模で考えていかねばならない時代かもしれません。

私が家業に入った15年ほど前でも、麻の組合などでも「もうこの産地で麻を織り続けているのは林与さんくらいだ」と皆さんにいわれていたのですが、若かった私は、そのことの意味に気がつかずに「そうなんですか」と自分で作るのが当たり前のことように思っていました。麻以外のほかのものをメインにやっておられたところや資材系のものをやっておられた機屋さんなども廃業されていき、産地で織り続ける麻機屋として小さいながらも産地の大表格になってしまいました。

本物指向を貫こうと、品質にこだわれる高級ゾーンが主体となっており、そういう商品を見ていただいて、他の機屋さんの麻よりもきれいだなあとか、高級感があるなあとか感じていただけるような何かがなければないとおもっています。最近はカジュアルリネンも作り始めていますが、そういうものでも、カセ染めした糸を使用するなど、通常だと分からない程度の違いを大事にしています。縦糸で糊付が必要だからカセ染めにするのではなく、品質重視で、縦に使おうが横に使おうがカセで染めるという林与が林与であるがための高級指向のためです。カジュアル向けのリネンでも、林与のリネンが市販のリネンと違うのはそんな理由です。

多くのみなさまに、本場の麻機屋として大事にしてもらえることはありがたいです。林与自身の織物の歴史が、産地の明治以降の織物の歴史の大部分と重なり、しかも、今も麻を産地で織り続けているということで、他で作られる麻織物とは違い、近江の麻織の歴史を一日一日綴ってるのがこのリネン日記だったりするのです。

新しいものを作るとき何度も何度も試作の繰り返しです。ものづくりの過程で、ちょっと売れないなあと思う布も作れたりするのですが、ものづくりをしている私ですので、そんな布も私にとっては意味のある大事な布で、そういう布にこそ思い出がたくさん詰まっており、財産として売れるもの以上の価値があると思い、たくさんの試作布を手元に眺めながらのものづくりです。今の時代、右から左にものが簡単にものが出てくるので、オーガナイザーやセレクターという人は多くなってきていますが、本当に経験をつんだ基礎から新しいものを構築できる本職というのは減るばかりです。自ら経験するというものづくりの基本の重要性に気がつける人は少ないです。

ものづくりに関しては、そのハードルの高さは高ければ高いほど良いのです。もともと滋賀県に麻織が集中していたのもそのあたりの事情で、本来、織物としては高度な技術が必要だったのです。伊藤忠、丸紅の起源である伊藤忠兵衛が、滋賀県と京都の逢坂山を越えるときに、もっと険しければ良いのになあと言ったのと同じ理由です。


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