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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

キュービズム

2018年05月14日

私が高校のときに一番興味を惹かれた画家がピカソ。ピカソのキュービズムの世界に惹かれたのではなくて、ピカソの描いたアルルカンに扮するポールという絵に惹かれた。子供のポールをなぜピカソがキュービズムで描かず写実的だったのか。なぜ、キュービズムの絵が気持ち悪いのか。

キュービズムは、写実だけでは描けない人間の内側を描く技法。美しく見えても人というのは複雑なんだよというのをキャンバスに表していると思う。ポールは内面がどろどろしていないからそのまま描かれたのだろうと思う。まあ、子供にモデルになってと頼んでぐちゃぐちゃに描いちゃったら子供に泣かれるだろうからという要素もあるだろうけど。

モデルがすごいとかじゃなく、ピカソの人生観がキュービズムの原点で、モデルの内面というのはピカソがそのモデルを見て感じるところ、人は美しくを目指すけどもその一方内面が美しくなくなって内面まで見えてしまう画家だったのだろう。これは個に対する問題だけではなく、ピカソが社会に対して感じていたことだろうと思うのだ。

絣というのも織る手間が布に表れるからよいのだろう。横絣織物がなぜ世の中に少ないのかというと手間が掛かるからというところ、それが良くてもつくるのに思いを絶するような時間と手間が掛かる。なぜ、林与が横絣にこだわったのかというとそういう織物の価値の原点を見つめなおしたいから。織物に手間を掛けると言う作り手自身が織物に価値を感じるだけでなく覚悟がなければできない世界。ほかとは違う布の力を感じるのもそういう人の作業が詰まっているから、自分が眺めていても苦労はあったが面白い布に思える。そして語るのは一本の糸を切らないように何度も巻き返し最後に柄を合わせて織り上げる作業の話。

そんな苦労をのせるだけの価値があると思うのが、与一じいさんの近江上布のものづくりのセンス。色柄において、今見てもモダンに思え高級感のある色柄は世界のいろんなテキスタイルを見てきたデザイナーの皆さんでも今までみたなかで一番すごいと驚いてくださる方が多い林与の近江上布の世界。一着分の生地に何十時間もの時間を掛ける甲斐があるのもそこで、売れなくてもつくり上げるだけでも良い、すごい布の世界を再現したい。


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