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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

湿度

2023年04月27日

今、5月に近づいて5月というと五月晴れでカラッとしたお天気の季節なのだけども、それが本当に麻を織るのには厄介で、もう7年くらい前になるだろうか、織ろうとしてもキズになって5cmも織進めることが無理だったり。

キズで良いなら織ってしまうも可能なのだけども、どうしても切れた糸がももけてしまって周りの糸にまとわりついてドロッパーが正しく反応しない。あの時は、3台の織機に掛けたのだけども3台とも同じ現象が起こって織機の問題ではないかった。

麻織物を織るときに、気温が低いことが大事で、雪国のような環境が麻織物には適しているのである。気温が下がる夕方から夜中に掛けては織りやすく、朝方から昼にかけては織りにくくなる。気温が下がって麻糸が水分を吸収すると織りやすくなって、気温が上がって麻糸の水分が放出されると織りにくくなるのである。

今は、火災などの心配もあって工場の中で火を使うことはしないけども、昔はストーブを何台も使って工場内を温めていた。上にやかんを乗せて。また、夏場も水冷式のエアコンで工場内を低温に保っていた。働く人も少なくなり、全部の織機以上に電気と水を大量に使うので水冷式のエアコンも今は使わなくなった。そういうのも湿度には影響をしているのだろう、昔のほうが人も多くてしかも麻を織るにもよい条件で織ることが出来たりしたけども、今の時代というのは少人数で昔よりも恵まれない条件で織らないといけないというのが、普通の現場の話である。

林与だけじゃなく、糸を巻いてくれるおじいさんにしても工場の中で灯油ストーブを1台使って、1日仕事していたら灯油代で半分くらいは工賃が消えてしまうだろう。それほどに灯油も何倍にもなってしまって、おじいさんのいうように工賃は25年前のままなのだけども、織物の価格は20年前よりも下がってしまっているので25年前の一番良い時の価格を守るのが精一杯のところだったりする。

工場の中で灯油ストーブを焚いても動ける人だとよいのだけども、動けない人だと灯油ストーブにあたっていたりで、寒さにも立ち向かえる人でないと織物の現場は難しく、子供のころから寒い中でも暑い中でも厳しくスポーツをやってたような人がやはり精神的にも身体的にも耐性があるように思える。世の中が恵まれていくと、日常生活ではそういう耐性みたいなものが必要なくなってきて、結局、織物の現場作業というのは難しくなっていくのだろう。

加工工場さんなんかでも、もうなくなられた社長と話をしてると、今の若いものは1日仕事すると疲れてばててしまうということを言われていた。冬場も水仕事なのでとか。繊維産業の製造現場自体が今のオフィスワークのような現状とは、かけ離れているのは、やはり、繊維産業が国際競争にさらされてしまっていて、放置されて消えゆくような位置づけに国としてはあるのだろう。

繊維産業って日本の問題を凝縮したようなところがあるから、たとえば半導体不足なんかも日本の自動車産業が海外でつくられる安価なものをなくしては成り立たないというような現状で、それを税金を投入して国内生産に切り替えようとしているけども、たぶん、半導体不足が解決したときにはまた成り立たなくなって、国内生産は海外生産に切り替わってゆくだろう。

日本の職人さんと呼ばれる人たちでも、つくれば売れたバブル以降はもうなかなか通用しにくい状況になってしまっていて、物事をわかって新しいものごとも吸収して前に進めていけるような人は本当に少なく、することはいろいろあっても人がいてもできないというようなことが多くなりすぎた。海外は仕事を得ようと旺盛的にいるのに、国内は仕事が嫌だみたいな風潮が蔓延していて、国内では仕事ができないことが多くなって難しくなっていくばかり。新しい物事をどんどん吸収してレベルの高い物をつぎつぎと生み出していくような力がなければ、過去よりもどんどんと落ちて行ってしまうだけ。

織機の調整なんかも織れるところまでもっていくのが難しかったりするのだけども、織れる織機を渡しても織るのが嫌だとかいう話だと、一番簡単な仕事のところでもう無理なあたりだったり、それは今に始まった問題じゃなくて昔から年配者も同じ話で、織機をうまく調整したり問題を解決したり自分で仕事を進めていけるような一人前の人というのは何十年やっていようが現場では本当に少ない。


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