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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

ダビデ像

2010年08月06日

ミケランジェロが彫ったといわれるダビデ像とその有名な話にダビデ像の鼻の話があります。その像を注文した注文主がミケランジェロに鼻がもう少し低いほうが良いといわれて、ミケランジェロが鼻を削るふりをして、注文主は満足したということです。

私自身は、その対応には疑問です。できないものは出来ないとはっきりといえばよいと思うのです。芸術家や職人ならやった振りをしてては駄目でしょう。良いもの悪いものを見極める目は一番大事ですが、その話が一人歩きしてしまうことを危惧します。

布をおつくりするときも、いろいろな相談を持ちかけられます。すべてを予想してお客様の言われることを行うとどうなるか説明いたします。布を駄目にしてしまわないとその言っている意味の分からないお客様もおられますが、一度、二度は、駄目な見本を作ってでもその意味を見せてあげます。それは私自身が経験して理解していることで、その人にとっては初めてのことだからです。分かる人はその意味が分かりますし、分からない人はずーっとそのままです。私自身も自分自身のリスクで多くの経験を積むことで、作業している人以上の気持ちで全体を統括しています。

イタリアのプリントやテキスタイルのデザイナーはお客のリクエストで色を変えないという話を聞いたことがあります。そのことには自分のデザインを変えないという意味以外にも大きな意味合いが潜んでいます。自分自身で類似品を作り出さないことがオリジナリティを長続きさせるコツではあるのです。

ミケランジェロの場合、鼻を削ることは、自分の作品でなくなるという意味合いが含まれていたと思います。削る真似をしなければよいという簡単な結論です。その削る真似をしたという話が何百年も残るのは、ミケランジェロにとっては恥ずかしい話ではないかと思うのです。


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