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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

加工

2024年03月07日

昔の生地の加工してある生地に関して分からないことがあって、その件で業界の方何人かに問い合わせをして、今の加工だとどのような加工に相当するのかを加工工場の方に尋ねにいった。その生地というのがリネンなのに非常に柔らかくしなやかに上品に仕上がっていて、ちょっと綺麗すぎるかなあと思うほどに、リネンに見えない仕上がり。昔のリネンというのはそれほどにきれいなリネンが多かったのだけども、その加工ももうその加工設備を持った加工工場が廃業となり、同じ加工はもうできないので、今の加工方法の中で近い加工を試してみる所から。

単に加工方法だけでなく糸のチョイスなども林与なりに考えて、ちょうど定番のソフト仕上げをつくるタイミングで、ソフト仕上げとは異なる皺になりにくいやわらかなリネンのシリーズを作れないかと思うところがある。海外展開を積極的にやっていたときに、求められていたようなきれいなリネンのテイスト。高密度の平織のタイプと綾織の2タイプで展開をしてみようかなあと、半年後とか時間が出来た時につくろうかと思う企画。

今の現場の仕事も林与以外ではできない作業が多くなりすぎて、そういう作業は人が育てばできるような仕事でもないような気もする。麻の整経にしても、今の整経は、必要量の糸を柄に合わせてカウントして、ぎりぎり使い切るような計算が必要で、一回勝負で失敗が許されないところがあって、エクセル使って必要総メーターなどから何カウントかを計算して、木管に巻く。そういう作業ですらも林与の会社では、林与だけしかできなかった仕事だったりで、私も仕事をし始めた最初からそういう計算をやって、そのやり方で最適な糸の使い方を常に考えたりしてきた。

そうすることで複雑な先染めの仕事でも、10回やって9回10回は整経がうまくいくようにデータなども記録したりして、毎回毎回そのデータをつかって簡単に再現できるようにもしてきた。作業的にも整経時の糸のテンションの管理などにも気を付け、同じ番手の糸でも色糸はおもりを多くして、白の糸はおもりを減らすなどして糸のテンションが均一になるようにしたりとか、普通だと逆にそういう匙加減をすると問題も起こりやすくなるのでやらないような調整まで自分の手が糸から感じるテンションを判断して調整を加えるとか。

また、荒巻ドラムにまくよりも、荒巻ドラムからビームに巻き取る作業で、巻き取り幅の決定はミリ単位でのシビアな調整が必要で、失敗して巻き始めてもある程度は糸を移動させながらビームに均一に巻くという作業も、毎回毎回のことで、そういうのも林与が整経の巻き取りを最初おしえてもらった人以外はやろうとしない作業。麻織物において、自分自身で整経ができることで、先染めの麻織物を自由につくれるし、特殊な織物でも小ロットでの試行錯誤的な生産が可能。

また、経糸は綛染めにすることが多いのだけども、外のチーズアップでは対応できないような、100番手を超えるリネンのチーズアップなどは自分でチーズアップしたりすることで、生産を可能にしたり、150番手リネンを織ることができるのも、自分で糊のついた糸をチーズアップしているから出来たりする。

林与の工場では、タイイングマシーンで糸を繋ぐこともあるけども、手で経糸を繋ぎ変えることも普通にするので、タイイングマシーンでは繋ぐのが難しい100番手を超えるリネンや、超太番手の5番手8番手のリネンなども織ったりもでき、手で糸を繋ぎ変えられるだけで、ものづくりの可能性が広がるので、ぜひ、織物工場の機場で作業をされている方々は縦繋ぎを習得されているほうが良いのじゃないかと思う。

縦繋ぎも何千本の糸を1時間に300本くらいのペースで繋いでいくのだが、肩が凝るとか肩が詰まるとか、慣れるまでは地獄だろうと思う。そういうのを他の織機を動かしながら当たり前にできるようになると、林与的には、織り手さんとしては3か月から半年での目標のあたり。できる人だと1年目くらいで、経糸のテンション管理や、積極送り出しの調整とか、2年目くらいでドビーの開口の調整とか、ドビーの開閉のタイミングの調整とか、3年目くらいになると、機づくりとか、ドビーカードのパンチングとか、できるだけ早いタイミングでいろんな作業ができるようになった方がよいだろう。早く自分で作業ができるようになるほど、活用する回数も多いので、当たり前にいろんな作業ができるようになる。

林与も整経作業ができることで、その経験が織りにも生きていて、織機の調整に関しても織機の調整のコツを理解できているから、問題なども見つけやすい。他に調整が必要なことが多いのが、レピアのヘッドの調整とかだろうか。一度一緒に作業をしたら次からは自分一人でやるくらいの覚悟がないと、物事の上達にも時間が掛かるだろう。

林与もまだ、筬通しなどできたりするけども、黒い糸などの筬通しができなくなれば、高度な先染め織物は正しく織れなくなる。白い生地と比べると黒い細番手の生地は、3倍くらい織るのが難しい。麻の先染め織物を手掛けられる機屋が日本でも少ないのもそのあたりで、もうそういう作業をこなせる人というのが織物業界でも非常にまれな存在になっている。先染め織物というのはそれだけの手間を費やしながら何倍も高く買ってもらえるということもないから、消えゆくのは自然の流れなのかなあとも思える。

林与がなぜ織物全般をこなすのかというと、織物作業全般をこなしたいという思いがあるからだろうと思う。他の人がやってもできないことを自分がやればうまくできることも案外あったりして、他の人に頼んでもうまくいかないときには、自分が解決してきたことも多い。それって大したことはない話にも思えるかもしれないけども、新たに移設したシャトル織機がまともにうごかないときにも、職人さんに任せても駄目な時には、自分が解決しないとそれはタダの鉄くずに終わってしまう話で、そういう問題の原因に案外短時間でたどり着けることが多いので、まだ、織物工場を経営していられるのだろうと思う。

最初の日から、油にまみれた織機の下にもぐって織機の問題を直したりすることなども覚悟して積み重ねてきたからできることで、普通の人だと織機の下にもぐって修理をしようなんて気持ちにもなれないだろうけども、林与のおじさんが機械に問題があったときに、それをやっているのをみて、次からは機械が壊れたら自分が潜って解決しようと最初に見た時から覚悟決めて実践してきたので、目の前に問題があればそれを解決するのが林与の仕事みたいな感覚で、他の人が解決できない問題を報告受けても10のうち9はすぐに答えが見つかる話、とくに織機の問題というよりも作業している人のうっかりとか、正しくない作業が問題の原因になっていることが多かったりするので、織機だけでなく、働いている人の作業手順の説明を受けて、その手順に間違いがないかどうか確認することが多い。いったことと違うやり方をやって問題が起っているというケースが多かったり、原因を見つけるのができないのが、不規則な作業手順だったりして、問題の原因を見つけるためにも作業手順というのは、問絶対に守ってもらわないと駄目だったりするが、それを守れない人というのは多い。一呼吸で、ドロッパーに糸を通して飾りに糸を通すとかも疲れないための作業手順で、間にもう一呼吸入るとすごく疲れるだろうし、遅くなる。結論として、仕事が大変なままか、仕事を挫折することにつながる。


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