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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

ロットの違い

2010年08月21日

糸のロットの違いというのは、非常に大きいものです。ある商社さんから買う糸と別の商社さんから買う糸では同じ紡績メーカーの糸でも、問題があったり無かったりします。同じメーカーの糸でも商社さんの説明は異なることもあります。

仕事をしていて、値段を下げるために一工程減らすということが良く行われます。糸づくりの工程では糸の紡績メーカーは大事だと思ってやっていることでも、糸を使う側の機屋さんがそれをもったいないと判断すれば、だんだんとその工程が無駄な工程になっていってしまうのです。

同じメーカーの同じ銘柄のついた糸ですら、その品質が異なるというのは不思議なことですが、それほどまでに紡績メーカーのほうは柔軟に対応しているといえます。中国の紡績メーカーというのも、中国国内向け、資材系のインド向けなど、日本やヨーロッパ向けなど以外の価格重視の糸を作っているので、どれだけ良い糸を作ってもらうかは注文する側の責任でないかと思います。

フラックス原料にしても、ヨーロッパの大手のフラックス原料メーカーですらが、資材向けには中国やエジプトからの原料を使用しているのは当たり前のことですし、中国やエジプトにフラックス工場をもっていたベルギーの紡績工場が、ベルギー産リネン糸の顔みたいなご時世で、糸の良し悪しは本物を知る人間だけが判断できるのではないかといえます。

原料は原料の産地だけでなくそのグレード、紡績は紡績技術だけでなく経験値が大事です。リネン糸の世界でもほんとうに良いものが何なのか分からない時代だったりします。というのも、安いことが良いという一般消費者的な判断が、ものづくりの工程で行われてしまうことも一般的ではあるのです。

今の時代、オールマイティ的に無地に使える糸がなくなってしまっているのが実際のところです。何か糸に由来する問題があれば、使い方が悪いというような判断が多々なされるようになり、メーカーさんや商社さんによってその根本的な問題が解決すること自体放棄されているケースもほとんでです。

十数年前に、ある糸商さん経由でのヨーロッパ紡績のリネンがまったく織れないという事態がありました、再度、同じ銘柄の違うロットの糸を送ってもらうと、同じ設定で問題なく織れるのです。そのことに糸商さん自体が責任を感じておられず、糸を扱っておられる方が糸のことを分からなくなってしまっておられるのは実感するところです。長年使い続けたヨーロッパの糸の信頼性というものが1回の出来事で崩れてしまうのは悲しいことで、実際に、それは一回のことではなく、ヨーロッパ以外の他国の糸に抜かれていくような結果につながってしまうような前触れだったのだといえます。


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