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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

織物の魅力

2010年11月05日

今日、繊維ニュースという繊維関連の新聞を読んでおりましたら、女性デザイナーの玉木さんが、播州産地でシャトル織機を2台導入されて機業を起こされたというお話を読みました。林与自身、織物をデザインしている立場で、デザインするというのは実際に作業する何十分の1の時間とコストで出来るのですが、実際にそれを作業に移すとなると何十倍の時間とコストが掛かる部分をテキスタイルをデザインされる方がわかっていただけると、織物を評価する基準も変わってくると思います。

デザインだけにとどまらず、生産するときになにがどう難しいのかを分かることで、織物の価値が生まれてくるのです。私自身が、大量生産のものに魅力をあまり感じないのはそのあたりなのです。不思議なことに、以前お付き合いのあったブランドさんの洋服というのは、縫製など素敵だったのですが、海外で縫製されたものと国内で縫製されたものでは、小ロットで作られる世界ですので縫製の技術などに関しても雲泥の差を感じたりしました。

小ロットで作られるものというのは、コストを抑えようとすると民芸的な手作りの水準になりがちなのですが、それを何万枚も作られる量産品以上の高い水準に持ち上げようとすると、本質的なものづくりの力と品質水準が必要となってくるのです。

時々、専門家的な方が林与がいろいろなものづくりを残しているということで期待を持って、工場に見えられることがあります。お越しいただく際に工場が埃っぽいとか改善的なことをご指摘いただくことも多いのですが、一番大事なところが見えておらず、専門家の皆さんが、まさに海外の量産工場を理想とされたイメージです。日本でなぜものづくりができなくなったのかというところそのものであったりしまして残念に思うところも多いです。私自身、世界の半導体工場で働いたのですが、それは、まさに海外に移転すべきマニュアル化された世界で日本のものづくりの価値を生み出すものではありません。実際にその工場での生産も海外移転してしまいました。地場産業を考えるときに、コンビニチェーンみたいなスクラップアンドビルトの理想とする視点を変えないと難しいかなあと思います。

今日の記事を読んで、デザイナーさんのような方が自分自身で力織機を使われようとするところが、日本でものづくりを残されようとする意気込みだと感じます。専門家の人というのは、海外に移りがちな時代の流れに乗ったコスト削減の生産体系を持ち込まれようとして、逆に日本のものづくりを殺してしまっているところがあったり、また、そういう、シャトルで織れば通常のものよりも売りやすいというようなレベルで考えられていたりするとそれは本質を理解しない浅い世界だといえます。織る側からすれば、レピアで織ったほうが簡単に安く作れます。きわめて行けば、日本で作るよりも海外で作ったほうが安く。損得を考えれば、一番安いところで買って売るのが一番よいのです。その正反対な世界が、一番、損得を考えないのが自分で満足のいくものを作ることだと考えます。

今日は、午後からシンポジウムの打ち合わせで、レピアの修理に機械屋さんが来てくれる話になっていたのですが、打ち合わせのほうが夜にまで伸びてしましい、帰ってみると織機のほうが、巡油システムの配管に漏れがあり正しく油が行っていなかったということで中のギアが摩擦で削れてしまったということでした。35年動いてきた機械なので、もし、この管に油漏れがなければ、この部品にしても一生ほど使えるようなものなんだろうと思います。本来、蓄積された技術をしてすれば、昔のものより、今のもののほうがよいものでなければならないのですが、より安いものをつくるという方向性だと、どこまで、一年前より、今年はより安い方法なのでどうしても、製品のライフサイクルにあわせてどんどん品質は落ちてゆきます。


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