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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

染色方法

2011年05月17日

今日は、朝から書類つくりを行っておりました。洋服が2点アパレルさまから届きまして、サンプルと本番との糸の差などの問題を夜に考えました。同じ銘柄の糸を使っても染色方法により差が出るのかという問題です。

リネンというのは、バット染料で染めるほうがよいというのが私自身の中での結論ではあるのですが、今回もそれを肯定するかのような出来事です。サンプルの時には、ある問題を想定して万全を期してスレン染料で染めた黒を使ったのですが摩擦堅牢度が悪いということで染料を変えて対応するということで反応染料で染を行いました。その結果、染色方法の差による仕上がりの差が見えてしまったのではないかと考えています。

実は染料の差が先染では後での問題となりがちであることを危惧してのサンプルでのスレン染料のセレクトでしたが、やはり、反応染料で染めたことでそれが結果として起こったといえます。このあたりになってくると理論ではなく経験という要素が結果を予測する上で大事になってきます。

理論で考えていると大丈夫でも結果が駄目ということが多いので、今の時代、日本中で企画機屋さんというのが減少している原因になっている一つの理由ではないかと思います。糸の問題にしましても、一部の糸商さん以外は、問題が起こったときに「同じ同じ」と言われることが多いのですが、リネンは毎回同じではないのです。また、最近の麻糸というのは何年かほおっておくと堅くなって織れなくなりがちです。

そのことは紡績メーカー自体が毎回同じではないことを説明してくださいますので、どれだけ問題をしっかりと見つめるかだと思います。問題を感じた糸などはフィードバックをしているものの適切なフィードバックがなされないと、紡績メーカーの存続に関わる問題になってきます。リネンの紡績会社の方にも問題を教えてあげるとその問題に気が付いておられないことが多く、面倒がられることもなく真摯に耳を傾けてくださいます。それが紡績の品質向上と生き残りに関わってくるというのを実感されている証だと思うのです。

ジャパンブランドの品質を考える上で、大事だなあと思うエピソードがあります。林与では、今では手に入らないデッドストックのカネボウブランドのシルクを今も使うことがあります。光沢感などがやはり一級で機屋が仕上がりとしてみるときに全体的な品質がジャパンブランド的で異なるのです。きれい過ぎて逆に糸切れなどの難が目立ちやすいという欠点があったりもしますが、トータルでみるとやはり違います。

そのカネボウブランドのシルクにしても、最後はブラジルと上海での紡績でした。日本の技術がブラジルや上海で生かされながらも、その問題の本質というのは届かなかったようです。ナイロンの混入の問題などを認識しており、それがまさか、シルクの紡績工場内で混入するものとは思ってはおりませんでしたが、シルクに詳しい糸商さんとお話をするなかでその問題も究明できました。

紡績工場で使われるナイロンブラシのナイロンが抜け落ちて、糸に撚り込まれてしまうというのが結論と思っています。そんな状態の糸がカネボウブランドで何年も流通していたのは驚きでしかありませんが、カネボウさんが紡績事業から撤退されるような理由の一つになったと思います。紡績工場のブラシを毛の抜け落ちない良いものに変えるだけで大きく改善する問題だったろうにと思うのですが、ジャパンブランドと海外ブランドとの差がなくなってしまうようなエピソードです。基本的な品質の高さは疑いもないのですが、そのような問題があるので、林与では、その紡績糸を使うときには混入したナイロンを取り除く作業を行ってから織ります。ジャパンブランドのシルクにふさわしいものにして最終製品で他とは違うようなシルクの光沢感を残しています。

韓国で紡績されていたリネン糸に関しましても、染で起こる問題点を何度か指摘はしたのですが、糸商さんから紡績工場までフィードバックを届けようとする体制が整っておらずに、弊社では使用をやめる結果になりました。信号が出ているのをほおっておくと結局駄目なのです。韓国からバングラディッシュに移転されたのも価格だけでなく品質面での優位性がなくなったことにあるのではないかと思います。


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