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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

高島産地

2011年06月18日

林与は琵琶湖の東側の湖東産地にありまして、琵琶湖の反対側に高島という綿織物の産地があります。今日は朝から高島にお邪魔しました。高島織物工業協同組合さんにサイジングの機械を見せていただきにあがったのです。

サイジングというのは縦糸に糊をつける工程で、綿の単糸の場合、織機で高速で糸同士が上下運動をすると糸がももけて通常は糸切れを起こします。毛羽を押さえるために糸に糊をつけておいてあげると、縦糸が織るときにももけてしまう現象が軽減されます。綿の細い番手の単糸を縦に使った林与が考える特別な織物を作りたくって、糊をつけてもらえる工場を探していました。

お休みにもかかわらず工場長さんからサイジングの工程を教えていただきました。部分整経するのと似たような整経機が3台ありまして、それぞれに使う糸で使い分けているなど役目が違うということです。ひとつの整経をするのに荒巻するのにビームを何本も使って、最後にサイザーで糊をつけて、全体の糸を一本の織物用のビームに巻き取るという工程です。私の思っていたサイジングは、織物用のビームに巻いたものを別の織物用のビームに糊をつけながら巻き取るという形をイメージしていたのですが、荒巻用のビームを何本も使うという工程が分かって見本からお願いするのが申し訳ない気分です。

工場長さんとお話しさせていただいて職人さんだなあと感じるのです。林与のお願いする糸が通常されている綿の糸の半分くらいの細さで、さまざまな問題が予想されるということで、お話を聞かせていただいてその問題もよく分かります。ご自身が手間が掛かりそうなことよりも、うまくいかないときのことや糊をつけてみても織れない心配を一番して下さっていてありがたいのです。こういう方とのお出会いというのは非常に少なく、知識や経験云々ではなく、温かい人が生み出されるものというのは、ものにそれを作った人の要素が詰まっていてよいものであることが多いのです。

技術的に高い織物などはひとつの技術に依存することなく、いろいろなぎりぎりへの挑戦が積み重なって海外では見かけることのないような織物を生み出すことができるのだと思います。お昼すぎ帰ろうとしましたところ161号線が非常に混雑していまして、何十分も車が前に進まない状態で、琵琶湖大橋をわたって帰らずに引き返して琵琶湖の北側を回って帰ることにしました。帰ったら夜になってしまっていました。

リネンの細番手織物でもそうなのですが、細い番手に挑戦を繰り返してようやくアパレル市場も、リネン100番手以上の細番手なども、世界から興味を示していただけるようになりました。25番手40番手あたりが価格面でも手ごろ感があって主流で、その辺りがリネンのイメージを引っ張っている感じがあったのですが、海外の展示会などでも、きれいな表情のリネンをたびたび提案することで、世界のトレンドも日本が昔、麻の世界に憧れをもって作り上げていた世界に近づいてきています。

細番手のアイリッシュリネン糸に関しましては、単に本物というだけでなく、その見た目の別格な存在感は、リネンへのこだわり派の方ですらも魅了するのではないでしょうか。日本らしいものづくりを残していくためには、林与が考える難しいなあと思う布を作る世界があってもそれはそれでよいのではないかと思うのです。また、単にスペックで上回るだけでなく、全体的な商品に流れる感性を林与らしいものに落とし込みたいと考えています。


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