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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

古来の麻

2012年01月23日

最近も日本古来の麻について聞かれることが多いものです。それが本当は何だったのかということですが、草の茎から取れる繊維を一般的に麻と読んでいたと思うので、漁師さんが魚を取るのと似ていたと思います。その地方地方で魚の呼び方も違ったみたいな感じです。着物にできる繊維が取れて糸がつくれるならそれは良い麻だったのです。出来上がった布次第で、使う用途が決まったと思います。

品質表示義務がなかった昔ですし、見た目の良し悪しだけで判断していたでしょう。私が思うのに、今は麻といえば、苧麻というと、一般的に青苧ということになっていますが、より細い繊細なものというのは赤苧ではなかったのかと思います。今も、近江湖東地域では、青苧よりも赤苧のほうが自生率が何十倍も高いように思います。

麻の葉の紋様に関しては、桐麻紋様とも呼ばれます。これは、青苧よりも、赤苧の葉に似ていますし、赤苧が桐麻と呼ばれることからも、日本の麻のイメージというのは、赤苧だったのかもしれません。(実際には大麻の葉のほうが、麻の葉の文様には似ているとは思いますが、大麻の手績み糸が使われるケースというのは着物だと裃とか、座布団とか、ごわごわしたゾーンだと思います。生活雑貨のような生平と呼ばれるタイプものは硬さ加減からして大麻っぽい気がします。大麻をイメージした文様ながらも、今は桐麻紋様というように混同されて呼ばれている可能性もなきにしもあらずです。桐麻なら片側3葉っぽくみえ、大麻なら6葉っぽいイメージです。青苧だと葉っぱのとんがった感じは少なくコブラの頭のような片側がとんがったような楕円っぽいイメージです。)

昔というのは、マムシであれ、ムカデであれ、薬にしたような時代です。藁も草履や蓑、蓑傘になったり、その延長で織物があったわけですから、繊維が上手に取れてよい着物が出来ればそれが売れるのだと思います。特に、赤苧のものは特殊とされていましたので、ある意味上布らしいものとして差別化できたのではないかと想像をするところです。また、苧績糸は新聞紙にくるんで保管するのが基本です。普通だと糸の保管は湿気を嫌うのでしょうが手績の麻糸というのは乾燥するとささくれて使えなくなくなります。

私自身、文化財の保護方法に関しても、修復しないほうが本物ではないのかと思うところがあります。本物を触ってしまうと本物ではなくなるので、本物は本物のまま残して、別に当時を再現したレプリカを作ればよいのではないかと思うのです。トキが絶滅してしまった問題にしてもそうで根本的な要因が解決しなければ無理やり保護しても絶滅を加速するだけです。地球温暖化も新しいものを作るのに力を使いすぎて、今ある資源を捨て、新しいものに変えようとして、余計に加速してしまっている気すらいたします。

今作るものというのは、数年しか持たないものです。過去に作ったテレビなんかは10年20年大丈夫でしたが、今のテレビは数年が寿命で、次から次へと新しいものに使い捨てるのを推奨するようなリサイクルシステムまで出来上がってしまって、自然の草からも糸をつくり布を織ることを考えれば、今あるものを大事にすることこそ資源を有効に使うエコロジーの基本の形ではないかと思います。


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