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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
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2009年08月23日
昨日の夜は、地元では地蔵盆が行われました。子供たちにとっては夏休み最後の一大イベントで、子供の頃の地蔵盆の準備で夏休みが毎日楽しかったことを覚えています。仕事でバタバタしていて、今年も地蔵盆を夜見に行くことはできませんでしたが、子供の頃の良い思いでです。

今日は、加工から上がっているリネンを社内でテストしています。よくネット販売などで、「生地はかならず水通ししてからお使いください」という注意書きを見かけられると思うのですが、このことは、服を作って、洗ったらサイズがすごく小さくなった、なんてことがおこります。リネンのハンドメイドの服はゆったりとしたものを作られるケースが多いので、大丈夫な場合も多いのですが、襟付きのぴったり目のシャツなど作るときには水通ししたほうが安全です。特に輸入生地は、物性がノーチェックで製造されていたりするケースが多いので、水通しは確実に行ってください。

林与では、何年も前から家庭洗濯可能なウォッシャブルな素材の開発に取り組んできました。弊社の本麻(ラミー)、綿麻(コットンラミー)の無地系の先染素材は、家庭洗濯可能な水準に達しております。また、通常は、リネンのもので収縮率を3%に抑えるというのは難しいのですが、長年の実績から信頼できるメーカー糸の使用、織の規格、加工方法の指定などで、かなり良いところまで来ており、アパレル向けのリネン100%のものでもウォッシャブルを謳える水準のものを作ることが可能です。単に、織るだけでなく、品質が世界でも厳しいとされる国内の基準により当てはまるように、染色や加工の面でも努力しています。

麻というのは、水分の吸収力が高いというのが長所なのですが、その裏返しに、糸の中に水分を吸収するということは繊維が変形し水分をためることになります。繊維が伸びたり膨らんだりすると布が伸びたり縮んだりするのです。加工で、防縮加工用の樹脂で水分の吸収を抑えたり、スリップ止めの樹脂で固める加工があったりしますが、物性はよくなっても麻の風合いや水を良く吸うという麻の長所が損なわれることになり、通常以上にそういう薬剤を使用し物性を改善するのはあまり良い方法ではないと考えるのです。

林与の考えるのは、糸の紡績工程に置いて湿紡の技術に優れたメーカーの高品位の糸をセレクトし、糸の染色方法、織の規格で仕上がり巾を想定し、安定した実績のある加工をチョイスすることで、従来の加工方法のまま収縮率を3%に抑えようと取り組んでまいます。長年の経験が安定した品質を生み出すのに役立っています。林与の布も完璧ではありませんが、単なる色柄デザインだけでなく、こういった配慮を行うことで、より安心して長くお使いいただけるような布づくりを目指しています。
2009年08月22日
10月20~23日(ただし10月20日は特別バイヤーのみ)に上海のニューインターナショナルエキスポセンターで開催されますインターテキスタイル上海の入場招待券が手元にございます。入場できるのは、アパレルやアパレル素材バイヤー(パスポート提示必要、18歳未満禁止)に限定されてはおりますが、アパレルのプロの方で興味をお持ちの方は、数十枚ほど予備がございますので無料でお譲りいたしますのでお問い合わせくださいませ。(展示会への入場料のみが無料になるだけですので渡航費旅費宿泊費などは各自で用意、負担いただくことになります。)

林与は、この世界最大規模のテキスタイル展示会に出店いたします。今回の大きな目標として、この10月から林与が取り組むアイリッシュリネンの超細番手ハンカチなどを持ち込んで、日本の麻織物の技術というのをPRしたいなあと考えております。中国の展示会というのは日本でも上海でも訪れたことがあるのですが、安いものが多く、トップクラスで通用するものは少ないのが事実で、世界最高クラスのリネンハンカチに興味をもっていただけるかは未知数です。でも、世界の製造工場となり新しいものが次々と生み出されている中国への関心は世界中から集まっており、世界のトップブランドの関係者なども来場する展示会ですので楽しみにしております。

リネンハンカチプロジェクトで使用する今は入手が不可能な30年前のリネン140番手のアイリッシュリネンのオフ生成の糸や、可能なら林与秘蔵の近江上布なども数点展示し日本文化を発信してみようかと考えております。

昨日は、林与の親戚筋にあたる織物関係の方が東京のデザイナーさんを連れてきてくださいました。そのデザイナーさんは10年数年ほど前でしょうか一度、林与にもお越しいただいたことがあるそうです。私とは初対面だったのですが、親戚筋の方もデザイナーさんも大柄で、デザイナーさん自身がブランドイメージを醸し出されておりブランドのコンセプトなど説明いただいてよく理解できました。
2009年08月21日
オーガニックリネン糸がオーガニックリネンであることを証明するための証明書というものがあります、オランダのコントロールユニオンというところが国際的な認証機関で、トレイサビリティを確保するための証明書です。

リネン糸の原料である栽培段階と紡績段階において、オーガニックであるということは、地球にやさしいということになります。今、製造している見本は、着色しないで、白と生成だけで柄を作っています。

今回できあがったサンプルは、仕上げは通常の加工で、プロのアパレル向けに使える柔らかい仕上げにしました。加工段階はオーガニックとはいえませんが、加工に入るまでの工程が、地球にやさしい林与のアパレル向けオーガニックリネンシリーズです。オーガニックリネンということで、糸質に関しては期待していなかったのですが糸質はすごく良く、見た目もきれいでやわらかく仕上がっています。

林与のオーガニックリネンは、織る段階でも、地球環境にやさしく、シャトル織にしています。捨耳が発生しないので、地球環境にやさしいです。また、通常は縦糸に付けられるワックスや糊の使用もしませんし、横糸に付けられる糸道油の使用もしておりません。オーガニックな糸の状態のまま織物が織りあがることになります。

別のシリーズになりますが、加工も地球にとことん優しいナチュラルワッシャー仕上げのオーガニックリネンのサンプル作りもしています。こちらは、アパレル向けではなく、オーガニックへのこだわりを持つハンドメイド愛好家向けの素材です。更なる展開としましては、草木染のオーガニックリネンシリーズも進行計画中です。
2009年08月20日
織物の柄をコンピュータでシミュレーション(CG)することがあります。アパレルのデザイナーさんもCGで色柄のイメージを指定されてきてそれに近いものを織物で再現する形で仕事を進めるのです。

実際にコンピュータシミュレーションした色で作った色というのは、プリントアウトしたものをみて調和が取れているように見えても実際使う糸を眺めるとアンバランスだったりすることが多いので、使う糸の調整を加えて全体のバランスを取ります。

人間がどのくらいの色柄を微妙に使い分けられるかというところで、今までにないようなオリジナルの柄が生まれてきます。通常は、原色とその濃淡と、ベージュやグレーの基本カラーで柄を作るというケースが多いのですが、この範囲ですと、自動車や電化製品の色使いのものしか生まれてきません。

一般的にアメリカや中国の方の好む色使いなどはこの範疇だったりします。でも、一般に日本人の場合は派手な色を嫌いますので、同系色のトーンの違いや、近い色相をベースにしてアクセントカラーを配するような配色で、目立ちすぎない服飾のデザインに収めることが重要となってきます。

無地は色は簡単です。白、ベージュ、紺、黒がコアカラーで売れ筋なのです。それプラス、若干の流行色を混ぜたり、ブランドカラーを生かすことで、毎年大きな変化なく、よいものは売れていきます。
2009年08月19日
今日は、彦根のイベントで手提げ袋を企画されているようで、弊社の生地も試作に使いたいというお声が掛かり、倉庫に行って、リネンの生成系のものを探しました。

生平と呼ばれる小幅の織物が目に付いたのですが、それが、とても昔の布っぽくってよいのです。でも、何千も作られると考えると在庫のほうが限られているので、通常の服地巾に織ったものからチョイスしました。

林与的には、リネンのチェック柄のおしゃれな袋を提案させていただきたいのですが、シンプルでベーシックなもののほうが好き嫌いがなくてよいそうです。他にも、キンランを使った布も計画されているそうなので、リネンの生成だとおしゃれで実用性はあっても、お土産品としては見劣りするんじゃあないかなあと思っています。

8月の後半は24日、25日、26日と予定が詰まって、最後の週は週末に仕事しないとサンプルなどが間に合わないなあと思っています。今日は、大きな問題が見つかりました、先日納めたサンプルの耳の色が違ってたので、大至急で3点やり直しています。
2009年08月18日
織物を設計するときに困ることの一つに、単位の問題があります。機械の設定などはすべてインチで統一されているのです。たとえば、打ち込みのギアは1インチ当たり何本、整経の筬や織筬も一インチ当たり何目です。(ただし、産地によって、鯨寸を使うところや、実際に通す糸の本数で計算するところもあります。)

通常使う定規やメジャーは、センチです。1インチは、2.54cmなので、一般的な織物の巾である仕上44インチの織物というのは、112cm巾の織物ということになります。

糸の量を計算するときには、ポンドやヤードを使います。実際のハカリはグラムなので、織りたい長さなどはメーターなので、単位換算して、必要な糸量を計算するのです。

麻番で100番手の織物で、縦の本数が3080本で、通し巾が1.3Mで、横の打ち込みが60本だと、計算をすると、ロスを見ないで、縦がおよそ51グラム、横が52グラム必要となってきます。通常は、整経が短いと2割から2割5分程度、横は1割程度のロスを見て糸を準備しています。

また、糸もラミーの場合には、NET表示の重さがあるのですが、リネンの場合には、大体4%~5%少ないというのが経験上の値です。乾燥しただけで、糸長は正しくあるといわれていますが、実際に計算してみると、輸入糸は実際少なめにしか入っていないということが多いのです。この辺り、海外の商品の品質表示の問題と共通するところであきらめざるおえないのかなあと思っております。
2009年08月17日
旅行で訪れた市場で買ってきたものは、貝ボタン、大きな木のボタン、黒いボタン、ビーズ、鈴、です。

貝ボタンをご存知でしょうか?貝殻をくりぬいて作るので、一つ一つのボタンが、ちょっと曲がっているタイプのボタンです。厚さも一部薄いものがあったり品質が安定していません。自分でより分けて良い物を使います。大きな木のボタンは見つけたときに面白いなあと思って買いました。コートのアクセントになるのではと考えています。黒いボタンは、黒ベースのシャツ用です。ビーズは銀色のもの、鈴はマルチカラーでたくさん入っているものを買いました。

ボタンは服を作るのに使うのですが、ビーズと鈴は楽しいことができないかなあと思っています。実用性は低いかもしれませんが、いろいろとアイデアが広がっていきます。
2009年08月16日
お盆の間は海外で過ごしておりました。いつもよりゆったりと時間が流れ、リフレッシュして日本に帰ってきました。今日から仕事を再開しています。

お盆の前から取り掛かっている織の問題に再度チャレンジしています。ストライプ柄状に平織のところと組織の甘いところが混在する織物で糸の緩みという問題が発生しています。組織的な問題で予想していたとおりの結果だったので、機を作り直して、ギシャという組織に切り替えて織ってみましたが、それでも、同様に緩む問題が発生しています。これも予想はしていたことなので、別の方法に移ります。

通常は、2重ビームという方法にすると良いのですが、今回の場合は、織物の柄を考えると、それが適切ではないという判断をしました。そこで、緩む糸をすべてコマで入れるというかなり手間の掛かる方法に切り替え織り進むことにしました。

これをやろうとすると、通常の1本2本のコマではなく、100本近くのコマとなります。安定して織れるように、100本のコマの機械自体を作るという作業から行って、一つの柄の織物を織れるようにしていきます。

麻を2重ビームでも織るのは大変なのですが、100本ものコマを入れて織ること自体、非常にリスクが伴うことなので、常に見守って織り進んでいかないとなりません。手織りだとコントロールが可能なことでも、機械を使って工業製品として織るからには、100mとか200m問題なく再現できるような見本つくりを考えないといけないのです。
2009年08月11日
本日から、お盆休みを利用して15日まで、海外出張いたします。海外はお盆がないので、国内の電話が掛かってくることなども少なく、ちょうど出張には一番良い時期なのです。今回は、市場をみたり、紡績工場を訪ねたりする予定です。観光はほとんどできませんが、いろいろなものを眺めて、ものづくりに生かしたいなあと考えております。
2009年08月10日
異組織使いで、ストライプ柄を作っています。平の部分と組織が甘い部分の違いを活用して、ストライプ柄を組織で出すという織物です。織機についているドビーという装置を使えば、柄表現は難しくはないのですが、こういう組織では、糸の緩みという問題がつきまといます。

この辺りが、テキスタイルデザインというのが柄だけでなく織物であるという部分です。縦糸のアップアンドダウンがすべての糸に関して似ていないと、アップアンドダウンの少ない糸は緩んでくるのです。緩んでくると、ドロッパーが落ちてきて織れなくなります。ドロッパーが機能しないと経切れしたときに、機械が止まらず、キズが発生します。

対処方法としては、2重ビームにする、緩む糸をコマにする、すべての緩む糸に重りを掛けるなど考えられると思うのですが、織れればそれでよいというものではないので、それぞれに問題が潜んでいます。

芸術品としてものをつくるのと、工業製品としてものをつくるのでは、観点が大きく異なってまいります。複雑なものを作る場合、芸術品としてものを作るほうが自由で簡単なことが多いのです。1週間も掛ければ一人の人間が作り上げてしまえるものが多かったりします。変わったもので、工業製品として量産するものを作る場合、後の生産や品質を考え、そのシステムを作り上げるのに、手作業の何倍もの時間を掛けないといけないという必要があります。
2009年08月09日
リネンジーンズのプロトタイプが完成しました、デニムのような厚織ながらソフト感を持たせ、しわになりにくい仕上がりです。作り上げた私としては大満足な状態なのですが、若干の改良を加えて、そのあと、弊社のインホワテクノロジーとの融合で、色表現もインディゴライクなジーンズを仕上げていこうと思います。

何十年もなかなかできなかった、しわになりにくいリネンボトムの完成です。今の質感だとジーンズライクで、カジュアルっぽい感じなので、もう少し糸の番手を上げて、ブランドカジュアル向けに提案も考えております。

リネンの糸の選択に始まり、織を突き詰め、加工、縫製をこなし、何度も何度も織の改良を積み重ね、これだと言える形に仕上がりました。綿とは違うリネンらしさを感じてもらえる通年素材です。
2009年08月08日
今日は、東円堂の盆踊がありました。毎年、お天気のほうが微妙なことが多いのですが、今年に関しては安心して行われることがわかっていたので、従業員たちにも参加を呼びかけておきました。夜7時半に集合して会場に向かいました。

最初、30分ほどフランクフルト、やきそばなどを食べて、あとの2時間ほどは、踊り続けてました。夏の風物詩である盆踊りもやっているところというのはほんと少ないと思います。東円堂という字は、この盆踊大会を楽しみにしている人が多く、続けられているのです。

盆踊りが10時で終わって、抽選会が行われている間、テントの片隅で、同年代のものが集まって話を交わしました。字の中でなかなか会う機会がないのが、私たちの世代なのです。子供の頃からの顔なじみばかりで、小さな村の中でもほとんど会うこともないのですが、こんなとき話をするだけで、支えあいの気持ちというのが伝わってきます。自分が、みんなのために何ができるのか考えてみる良い機会になりました。

盆踊に参加し踊って楽しむことが、小さな村を活気付けるのではないかと思っています。都会の大きな祭とは違う自分たちの村の祭の良さというのが実感できた一晩でした。
2009年08月07日
先日、ハンカチプロジェクトのプリントを相談しに、近くの捺染工場にご挨拶に行きました。昔は、林与は自社内で染をやっていたので、他の捺染工場とは縁が薄かったのです。そして、先染やジャガード主体の織物を作っていたので、プリントものはほとんど実績がありません。今回は、ハンカチということで、レディースの一部にどうしても花柄のものがほしいと思いました。

捺染工場にお邪魔すると、いろいろと教えていただき、ハンカチプロジェクトのほうも応援してくださるとのことでした。手捺染の細かなやり方まで説明いただいて、頭の中で、プロジェクトの企画のほうが格段に進みました。

一つ感心したのが、色だしです。一つの柄で10色程度の配色をする必要があるのだといわれ、そこが、先染織物と共通するところだと思ったのです。同じ苦労をされている方がおられることがありがたかったです。言われたままに色付けをするのではなく、自分で提案しなければならない部分をもち当たり前に、それをこなすというのは大変なことです。

そういう部分で、この捺染工場は本物だなあと実感させていただきました。
2009年08月02日
先週は、リネンハンカチのプロジェクトの企画提出があって忙しく動いていました。世界最高峰のリネンハンカチシリーズをつくるというプロジェクトなので、織の技術的だけでなく、ハンカチのデザイン、糸、染色、加工、縫製、パッケージング、製本化へのこだわりを散りば3年がかりで行います。超高価なため非売扱いで、展示会や百貨店のイベントなどでの活用を計画しています。

最高の糸を使うということで、30年前のアイルランドで紡績さた本物の超細番手アイリッシュリネン糸を使用いたします。織の要素、先染の要素、プリントなど要素を散りばめて、日本の麻織物技術の最高をハンカチというキャンバスを使って表現いたします。90種類くらいのハンカチができあがる予定です。

使う織機は、50年ほど昔のシャトル織機です。一つのモーターの動きが伝わり、複雑なからくり人形が動くようにして、織物が織り上げられていくさまは圧巻です。現在の最新式の織機が世界最高のものを織り上げるのではなく、今の日本の自動車機械技術の全身である戦前、戦後の日本の織機技術が、このプロジェクトを支えるのです。

麻の品質にこだわる「林与」だけに染や加工にも日本の麻業界を代表できるメンバーたちのもつ伝統で立証された技術で臨みたいと考えております。永く使えるものを作るためには見えるところだけでなく見えないところの要素もプロのものづくりでは大事なのです。日本でもこのようなリネンの最高峰を目指すリネンプロジェクトは企画されたことがなく、超細番手織物のメッカであったアイルランドでは、紡績が行われていないだけでなく現在は織職人は少なくなり、織物産業自体が様変わりし過去の技術が消え去ろうとしています。

世界を代表するリネンハンカチのコレクションをつくりあげるプロジェクトがまもなくスタートです。世界の麻織の最高峰の技術を蘇らせ、麻織を織りつづけるということの価値に気づいていただければなあと思います。安価なリネンが大量に生産されるようになる一方で、ハイグレードな細番手の麻を織るという技術は、世界的にも失われつつある技術なのです。
2009年07月24日
以前、人気の布の生地屋の社長さんと話をしていたときに、織るということの場所にこだわっておられるのに驚きました。布の原産地というのが、その布を織った場所であるということを理解されておられ、そのことにこだわることのできる、すごい人だなあと思ったのです。消費者を騙さないという姿勢が伝わってきました。

一部のこういう方を除いては、インターネットでリネンを販売されている方のほとんどがそのことをよく理解されておられず、外国で作っても西陣織みたいのと同じ感覚で売られています。アイリッシュリネン糸を使ったという布が大量に出回っていても、実際にアイルランドで紡績された糸ではないのです。1万円未満の近江上布があったりするのも、中国で作ったものを近江の業者から買ったというだけで、産地も由来もしっかり確認せずに近江上布として不当表示で販売しているケースです。お客さんというのはその言葉を信じて買って、それを使って物をつくりまたみんなに自慢するだろうに本当に気の毒な話です。当たり前のことですが、偽のブランドを騙して売って騙されるほうが悪いというのがまかり通っては駄目だと思うのです。

リネンの業者の間では、ヨーロッパのものはいい加減なものが多く、リネン100%を謳っていても実際はコットンリネンの糸を使っていてやわらかかったり、どう見てもリネンじゃないなあと思う糸が使われていたりすることが多かったりします。日本でそれを売る人に基本的な知識がないので、コットンリネンの安い糸を使用したものを、よいリネン糸だからやわらかいとか言って売ってたりします。ブランドの方が、ヨーロッパでリネン100%ですごいものがあると見せてくれても、綿かレーヨンじゃあないのかという結論がほとんどで、特にイタリア近辺のものが怪しくなっています。

残念ながら、近江産の麻布に関しても、この産地で本当に織られる近江湖東産の織物というのはほんとうに少なく、他産地で織られたものに「近江」という言葉をつかって販売されているケースがほとんどです。産地で織を守るのが難しいのもそのあたりです。湖東産地で麻を織っているところはほとんどなくなっているので、本物の近江産麻布といえるものはほとんどなく9割以上が他産地産というのが現状かといえます。
2009年07月20日
シャドウチェックってご存知ですか?普通のチェック柄は、同じ太さの糸を使って、色でチェックを作るのですが、同じ色の糸を使って、糸の密度を変えることでチェック柄を作るのがシャドウチェックです。無地っぽいながらもチェックに見えるだけでなく、凹凸間ができるので、肌との接触面積が小さくなり、春や夏の涼しい織物や服ができあがるのです。

春と夏の有名な織物に四国で生産が盛んな綿織物の「しじら」という織物があります。この織物は、基本的には12枚のドビーというので織られ、6枚は平織、残りの6本は2本をセットにして平に織ることで、織密度の変化が生まれ、凹凸間のあるストライプ調の織物です。

「林与」が手がけようとするのは、最近夏素材によく使われるようになった、凹凸間のあるポリエステル調の織物です。それをリネン100%や本麻で実現できないだろうかと取り組んでいます。こういった取り組みは、30年くらい前にもやっており、再度、10年くらい前からも本格的にやっているのですが、技術的に実現が難しい状況です。イタリアの布などそいうものをやっているケースは多いのですが、日本の品質基準だとブランド向けの商品としては通用しないレベルの布だったりします。

日本のシルク織物の産地である山形県の米沢というところでは、シルク100%で見事なサッカー調の織物を生産されています。伝統文化で作り上げられた日本の織物が誇ることのできる一品で、単純な平織り物が主体のシルクの世界でも別格の商品として取り扱われています。ほんの数件の機屋さんがその技術を開発ならびに継承されているだけで、他国が真似することのできない日本の絹織物文化が守られていることは感服いたします。

どうやって安く物をつくるかに力点を置けば、品質は落ちてゆきます。糸を落として、織を落として、染を落として、加工を落とす。最悪の場合、産地偽装すらされ、手を抜いたものが最高級のリネンや麻としてインターネットやファストブランド店で売買されてしまっている今、本当によいものは消え去っていく傾向にあります。
2009年07月18日
今日は、愛知川の河原で、夜、花火大会がありました。お天気のほうもそれほど暑くもなく、河原の土手に座って、次々と打ち上げられる花火を眺めると、今の花火のことよりも小さなころに花火を見に来たことの思い出がいろいろと蘇ってきます。

今回の花火大会は1時間ほどのものでしたが、愛知川という小さな町で、128回を数えるような花火大会が続けられていることはすごいことだと思います。主催者側が持ち出して地元を盛り上げるためにイベントを続けておられる姿勢には、テレビなどでの商ビジネス化したボランティアを超えたものがあります。

子供のころには、年末には中仙道の商店街の大売出しがあったり、地元のお祭り行事というのは、子供のころの特別な思い出となって残っていくものです。大人になってからの自由な気分で見物するより大きなお祭りよりも、子供の頃の地元のお祭りというのは大事なものです。

今は花火を見るだけで十分で、子供時代に夜店で売られているカブトムシやくじ引きに熱くなれたのが過去のこととなり、花火大会への胸躍る気持ちも小さくなってしまったことを自分自身に対して寂しく思います。一方、夜店で買ったおもちゃを自慢げにしている子供たちをみると、まだまだ、日本の活力はまだまだあるぞと感じます。

熱中時代というテレビ番組が昔ありましたが、熱中できることがあることは本当に幸せなことで、熱中できない人たちばかりになってしまえば、職人さんというのがいなくなってしまい、良いものは作れなくなってしまうだろうと考えます。
2009年07月17日
今日は、夕方から地元企業の経営者が集まって懇親会がありました。地元には、藤居本家という酒蔵があるのですが、その藤居さんとお話しする機会があり、弊社の麻布の話が出てまいりました。

藤居本家は、天皇陛下もご出席の皇室行事であります新嘗祭に献上される「旭日」というお酒を製造されています。全国の何千という地域の神社で行われる新嘗祭もすべて「旭日」が使用されています。

藤居さんが、皇室に「旭日」を献上される際に、お酒を包む布が麻布で、「林与」の麻布を使っていただいております。先代からその話はなんどかお聞きしていたのですが、藤居さんからそのお話を直接聞かせていただく機会にめぐり合い、ありがたさを実感しながらも、妥協したものをつくってはならないという自戒の念に駆られます。

時代に流されることなく変わることのない価値観を持ち続けることが、最高の品質を守り続ける一つの秘訣であろうかと思っております。本物の近江産麻布というのを残していくためには、「林与」は本物の麻機屋でありつづけ、この場所で織り続けなければならないと考えております。
2009年07月15日
今日は、リネン日和です。外でリネンを干しました。すごく、暑い日だったのでいくつもいくつも干すことができました。夜に反物に巻き上げてあげると、スペシャルなリネンのできあがりです。

耳のところが、デコボコしていて、ナチュラル感たっぷりなのがとても素敵です。加工屋さんで仕上げるリネンというのは、耳がピシッと決まっているので、他の素材の織物と一見して区別がつきにくく、触ってみないとわからないのですが、「林与」のナチュラルシリーズは、見るからにリネンしています。

今日は、薄手の生成と白のリネンシャツを1枚、ワンピースもそれぞれ1枚づつ作ってみました。柳流感があって、光沢感もある、素敵なシャツの出来上がりです。

多少、ざらざら感があったりするのですが、着込んでいくうちにだんだんと味がでてきて、柔らかくなっていくところが、リネンのよいところです。綿のものだと買ったときが一番よくて、だんだんと弱っていくのですが、良いリネンの場合は、十年以上も着ることができるというのがすごいところです。
2009年07月14日
今日は、彦根の市役所の方を交えて、彦根で開催中の井伊直弼と150年祭への協力ができないかというのを模索するミーティングに夕方から出席しました。

明治から大正に掛けての衣装がつくれないかというのがテーマだったのですが、甚平や着物なら、素材にしても簡単に手に入り縫製も「林与」で簡単に出来るのですが、開国を象徴するような西洋チックな衣装となると、写真や画像をみて、型紙から起こし、また、モデルさんに合わせてサイズを決めないといけないので、試作するのに、うまくいって一回一着に一週間くらいは掛かるだろうなあというのが私のイメージです。

彦根という地域を盛り上げるために、400年祭があり、大盛況に終わったのですが、その後も、ボランティアの皆さんが中心となって、彦根の文化をPRしておられます。彦根には仏壇、バルブ、縫製という地場産業があり、地域の消費を支えるだけでなく、全国的な産地として名高いもので、そういう彦根の産業家たちがこと前向きに彦根の活性化に協力しようという意気込みでおります。

ひこにゃんが有名ですが、そのほかのゆるキャラも彦根周辺で開発が進んで次々と生まれていき、彦根でゆるキャラサミットが開催されるまでになったのも、彦根が縫製技術があったということが要因しています。