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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2011年02月12日
今日はすごく寒いです。東京が暖かかったからというより本格的に冷え込んでいて土曜日ですが工場のほうは動かしていますが、手がかじかんでしまいます。2月というのは、一年で平均気温が一番低い月だと昔から言われていますので、これが普通なのかもしれませんが、つい先日、もう春ですねという感じだったのに、ここまで寒さが戻ると皆さんもウールの生地をお探しではないかと思います。

こちらのサイトをご覧いただいて生地をご購入くださる皆様には、生地の在庫がかなり少なくなってしまい、ご検討いただけるものが少なくすみません。春に向けて拡充していきたいと思っているのですが、2月後半は、新規におつくりするのが難しいので、倉庫にある在庫のビンテージな反物とか、去年いろいろと試作しましたものを数量限定的になりますが、アップしたいと考えています。

リネン25番手、43番手、66番手の定番生地のほうも在庫のないオフ白、生成に関しましては、麻織りの本場近江のシャトルで、じっくりと織りに掛かります。平均すると、1台の織機で、一時間に2Mほどしか織れませんので、織りあがり加工が終わるまで1ヶ月から1ヶ月半程度お待ちくださいませ。25番手オフ白と66番手生成はキバタがあったかもしれませんので、加工があがりましたら在庫のほうを更新させていただきます。

今日は、夜には字の評議委員会がありました。帰ってきてから、ジャガード織機を眺めました。2重ビームで織る本麻の白十文字と黒十文字が一台づつ動き始めています。普通の織物と比べると難しい織物で、お話をいただいてもお受けするのにかなり覚悟が必要なのですが、こういうものを残しておかないと日本の麻織物の世界というのが浅くなると思います。縦が綿だと何倍も簡単になるのですが、本麻の細番手は糸の問題も多いので難しいのです。

一反を織る際に何百回と縦糸切れ横糸切れで織機が止まりますが、50Mでのキスが5箇所程度に収めるのは至難の業です。着物以上に洋装の世界の織りが難しいのはあまり知られていないかも知れません。着物の世界だと手の込んだものが出来ても、洋装の世界では検査基準が厳しすぎて簡単なものづくりが出来ないことがあるのです。
2011年02月11日
彦根に戻ったのは朝の9時でした。途中、浜名湖を過ぎた辺りから横殴りの雪が降っていまして、50kmの速度規制が続いていました。関が原越えるの大丈夫かなあと思ってましたが滋賀のほうは雪はありませんでした。

滋賀県に戻って、祭日ということもあってかひっそりとしているなあというのを実感します。東京のようなにぎやかさがないので、滋賀県というのは布を使ってくださるお客さんを探すのには難しい場所だと思います。

東京に行く途中も、明け方の家の近くの24H営業のマクドナルドに立ち寄ってビッグマックセットを頼んだのですが、お客さんが私一人で15分ほど出来上がるまでに待ちました。お客さんが少ないと早いのではなく、お客さんが少ないと時間が掛かるのです。効率よくものを作るシステムというのは、一つのものを作るのは非常に苦手なのです。

これは、加工屋さんなども言われていることに共通します。テンターを掛けるのにボイラーを暖めるだけで冬場は1時間と掛かる、ものが常にたくさん流れているといつも準備できているので仕事が速いのですが、小さなロットでの仕事の場合には、一工程づつがハンドメイドちっくに進むので非常に時間が掛かるのです。

林与がそれを理解できなくなるとそういう手間暇な世界のものづくりというのを放棄してしまうことになりますので他で早く作るよりも待つことを選びます。待てなくなったら、ほかと同じ普通のものになってしまうのだろうなあと思うのです。
2011年02月10日
今日はアパレルさまの展示会がありまして午前中から東京に行きました。東京についてから道がだいぶ混んでおりまして、予定よりも遅れ気味での到着です。午後にも2件立ち寄らせていただきました。2012SSのお話がいろいろなところで始まりかけています。

合間の時間に東京の青山のスパイラルガーデンで行われています東京造形大学デザイン学科テキスタイルデザイン専攻 2011卒業制作展を覗かせていただきました。13日までですので、時間のあられます方はご覧になってくださいまし。http://www.spiral.co.jp/e_schedule/2011/02/texta.html

学生の方が、卒業制作展ということでテーマを決めておられ数点づつ出されているのですが、なにかアイデアや手法をベースに統一した作品群を作られています。アート的な意味合いを持つものが多く、実用性を兼ね備えた商品というよりも見て楽しむようなアート的な作品が主体ですが、一人一人の作り上げた世界というのを眺めることができます。

自分が作ったものではありませんので、客観的に見せていただくことが出来るのですが、私自身の評価のポイントは、一つ一つの作品自体を評価するというよりも、作られた方の織物に対する姿勢を評価してしまいます。そのアイデアや技法というのは自分を表現するための単に道具に過ぎず別に大事なのではなく、それを用いてどこまで自分を表現するかということだと思うのです。そこら辺りが実用的な商品の価値とは、別の判断基準になってくるのだと思います。
2011年02月09日
東京に行く前に準備をしないといけないのは、東京での容易ではなく、会社を空け、また、その後は連休に突入しますので、それまでに済ませておかないといけないことが多いのです。

朝のうちは、彦根の組合事務局に行きまして県に提出する書類を作りました。夕方くらいまで掛かりまして、会社に戻ってからは、組合の別件の処理を行い、出荷などを済ませました。

最近ですが、メインで使っていますノートパソコンのハードディスクの空き容量が少なくなってしまい、起動が時間がかかりすぎるようになりまして、急いでいるときに急いで仕事ができないということで、パソコン環境を立て直すため動いています。今使っているのと同じ機種の中古を手にいれまして、ハードディスクも容量の大きな新品が届きましたので、この週末には形がみえてくると思います。

普通の人にとっては面倒くさい作業なのですが、林与にとっては案外楽しみな作業であったりするのです。織物の世界というのは一つ試すときに大きなリスクを伴いますが、パソコンの世界というのは、時間が掛かるだけで、やり直しもできいろいろなことが試せるのです。

エクスペリアのほうは、まだまだ使いこなせていませんが、こちらのショップも携帯やスマートフォン対応にしていければなあと思っていたのですが、まずは、今のパソコンの環境が重すぎるので、それの改善に着手したというあたりです。ネット接続もドコモのハイスピードでやってますが、Xi接続というのがいつのまにか稼働しているようですので、そちらへの移行も考えています。
2011年02月08日
今日は、昨日手配してもらった糸が届きました。同じラミー100%で、同じ設定のままで織ってみて一目瞭然の違いです。すべてが解決されます。それが糸を選ぶだけの理由なのです。結局のところ、糸の細い部分が打ち切れを起こしていたのではないかと考えます。今回のトラブルの原因が原材料なのか紡績なのかは分かりませんが、普通に流通しているものの品質が極端に落ちてきているので気をつけておかないとなりません。

今日、出機さんに行きまして、何十年も織ってくださっている職人さんも同じように糸のことを感じているのだなあということが分かりました。指定があり、一つの商品に普段使う糸と別のメーカーの糸というのを使ったのですが、織ったあとに苦情を述べられたのです。それが、まったく、私が自分の工場で自分が経験して持った感想と同じなので、この職人さんの判断も正しいということです。林与がその職人さんに言ったのは、一般に、機屋さんというのは、これが普通でリネンを織ってられるんですよ、ということです。結局、産地でも、麻を織られるところがなくなっていった背景というのもそのようなことも要因しているのではないかと思います。
2011年02月07日
今日は、いろいろなキバタをオーバーロックミシンで縫製して、キッチンタオルを作ってみました。本来は、三つ巻にして本縫いミシンでかがるべきなのでしょうが、オーバーロックミシンで簡易的にタオルを作るのもかわいいのではないかと思ったからです。

倉庫から6種類の布を探してきて、オーバーロックして布を加工して、明日の仕上がりを待ちます。実際には、タオルというよりもハンカチくらいの大きさなのですが、出来上がったもので実際にどのような機能性があるのかをテストしようと思います。

そのほか、今日は、依頼をいただいていました綿麻サンプルの準備をしたり、ラミー糸の手配を行ったり、外注工場さんにビームを持っていって見本つくりの段取りを済ませたり、こちらのショップ向けの生地在庫の確認や、依頼のあった生地探しを2件、請求書の依頼、企画の段取りなど、3時ころにはお客様があり、月曜日だなあという感じでした。


■緊急募集■
今、リネン糸で林与のリネン生地にクロスステッチをしてくださる方を探しております。林与が50cm四方のキバタ布とリネン糸をお送りしまして、そこに得意とされる柄をいくつかクロスステッチしていただき、ご返送いただくという作業です。ご協力くださる方おられましたら、お問い合わせからよろしくお願いいたします。(ささやかながら、キッチンタオルHDダブルラインキバタのお好きな色1Mを謝礼として予定しております。)
2011年02月06日
倉庫には、本麻60番手をコンニャク糊加工した糸が各色たくさん残っています。着物に使うのが一番よいのではないかといろいろな甚平や浴衣向けの先染柄を作ろうかと考えています。先染め着物のシリーズなんか面白いのではないかと思います。ストライプは多いですが、チェック柄の小幅織物でつくられた着物というのはかなり珍しいのです。

先染というのは、プリントよりも奥の深さがあるのと、中まで染料がしっかりと染まっているので、色が長持ちします。着物でも、プリント柄や先染柄などで、白地のあるものというのは、その白い部分が黄ばむことが多いので、長くお使いいただくことは難しいことが多いのです。白地が部分的にあるものの場合には、長く使える良いものを作ろうとすれば、本麻の場合、白い糸に関してはしっかりとした加工を施しておかないと駄目ではないかと考えます。ただし、白無地の場合には、晒ことが出来ますのでその限りではないかもしれません。

昔の着物で、長年の着用に耐えるのは、しっかりと染めたものがほとんどです。白ベースのものなどはどうしても黄変してしまうので、難しいのではないかと思います。リネンの場合には、オフ白や生成というのは、化学変化の度合いが染めたものに比べると比較的少ないので、天然繊維としての性質が残っていることになり、変化しやすいのです。しかしながら、染めた染料や染め方が悪いと糸が弱る原因となるので、染めの質が悪いと染めたことで糸のほうが弱くなっていたり、染料の中の物質が変化して色が変色して見えるケースも多々あります。

麻糸というのは糸が染まりにくいですので、麻専門の染屋さんの染でないと長持ちしにくいことが多いのです。長く使える良いものを作ろうとするときには、染めに関しても、実績のある染屋さんであることが大事と思うのもそういう理由です。倉庫の染糸を見ていて、同じ原糸を使用したとしても、染工場さんによって染の技術と品質の差というのはかなりあるのを感じます。やはり、麻を得意とする染工場さんの染だと麻糸が麻糸らしく綺麗に染まります。

これは、加工に関しても同じで、林与の倉庫に眠る昔の反物を見ましても、他産地で加工したものというのは、綿ライクであったり、ウールライクに仕上がることが多いのです。暖かい系に仕上がってしまうのです。皆さんお気づきになられた方もあるかと思いますが、海外のリネンというのはある工程が行われていないケースが多いので、もやもやと起毛したような感じであることが多いのです。林与も秋冬物のリネンを作るときにはその工程をスキップしますが、初夏物の場合にはその工程は非常に大事です。清涼感が足りずに、もっちゃいなあと思うときには、その工程が不完全なことが多いのです。

商談会で、林与のビンテージなリネンをご覧になられて、海外のあるインターナショナルブランドのバイヤーさまが、これは何?とお尋ねになられましたが、たぶん、糸がしなやかで綺麗過ぎてリネンに見えなかったのだと思います。リネンの糸というのも糸加工を丁寧に行えば糸もよりよい表情になり、織りあがった布というのも通常のリネンとは異なった顔になります。そういう高価な糸加工というのも世の中では受け入れられなくなりだんだんと消えていく運命にあるのです。

糸の表情が変わるほどの糸加工というのは、昔から原糸の値段よりも高いことが多いので、それを施すのにはなかなか覚悟が必要なものです。世の中で、リネンにおいては、生成やオフ白の生地、後染、プリント生地が多いのはそういう背景があります。リネンに老いても、高級アパレル向けは総先染が多く、カジュアル向けは生成やオフ白ベース、後染やプリントが多いのもそんな理由からです。もちろん、後染やプリントにも高価なものはたくさんありますので、一般論ではありますが…
2011年02月05日
ここ数日ようやく暖かくなってきました。冬の厳しい寒さも林与は好きだったりするのですが、この暖かさというのは、車で走っているだけでも気分がよくなる気がします。そんななか、キッチンタオルに関する楽しいお話が飛び込んでまいりました。詳細のほうは、夏前には明らかになりそうなお話だそうで、内緒での進行になると思うのですが、時期がきましたらご報告いたします。

さてさて、昨日から調節をしていますジャガードですが、ジャガードのほうば問題なく動くようになったのですが、本麻の糸が、レピアでも起こった同様の打ち切れを起こしてしまっており、対策を考えています。この何十年と問題なく使ってきた銘柄の糸で、一度といってもよいほどに発生のなかった打ち切れですが、今回は、1Mに小さなものがいくつも見られ本質的な問題として恒常化しているようです。打ち切れというのは海外紡績の糸では何度か経験をして、品質の違いを実感していますが、今回ジャガード織機で打ち切れが起こったことは、普通の織機だと打ち切れ無しには織ることはできないという結論に達します。糸を買うときにそういうアナウンスもなかったので、糸の紡績メーカーさんもこのような致命的な問題に気が付いておられない可能性が高いのです。

これを短期的にしのぐ改善策はあるのですが、それはまやかしに過ぎないので、それを根本的に改善するためにはやはり糸捜しになります。当面は、在庫の糸をつかってしのぐことにしましても、よい糸を探す必要が急務になってまいりました。国産の麻糸というのは、最終的には消えてしまう運命にあるのかなあと思ったりします。

夏に涼しさを楽しめるのが細番手の麻織物の特色ですが、海外紡績のラミーもテスト的にはトライアルをしていますが、糸が織れる織れないの問題だけではなく、仕上がりの綺麗さや光沢感が海外紡績のラミーというのは、国内紡績のラミーには及ばないのです。肌が感じる清涼感も、同じ加工を施しても、加工から上がった布を触っていて明らかに国内紡績ラミーのほうが上だと感じます。

一方で、お客様においても、長年見続けられた方というのは、そのものを感覚的に知っているので、その違いに気が付かれますが、今、よい糸がなくなった時代に始めて麻というものに触れられる方にとっては大きな違いではないかとも思います。
2011年02月04日
リネンテスターという言葉をご存知ですか? リネンをテストする機械があるのかと思われるかもしれませんが、生地を見るための3つ折にできるインチ拡大鏡のことです。プロの人が使うものなのですが、昔からあるものなので見られた方は多いと思います。

何をするときに使うかというと、リネンの場合はそれほど高密度な織物であるということは少ないですし、高密度の場合には逆に拡大率が低すぎるので役に立ちません。リネンテスターで一生懸命に組織を眺めている人をみると大変だなあと思います。リネンテスターは、ほとんどの場合ちょうどインチの四角ですので、縦横の密度を計算するため縦横の本数を数えるのです。

リネンテスターという道具は、ほとんど形が変わることなく、たぶん100年以上使われてきている道具ではないでしょうか。子供のころは、すごくかっこよい道具に見えたものです。リネンの織物を拡大して覗くと万華鏡のようにきれいだなあと思うことがあります。リネン糸の一本一本がキラキラとしています。糸というのがまっすぐではなく、地撚りというものが掛かっているのも確認できるかと思います。地撚りというのは糸を紡績するときに掛ける撚りのことで、リネンの番手くらいの撚りが1M辺りに掛かっていることが多いようです。撚り方向は、Z方向とS方向があり、通常の糸はZ方向です。

昔は、リネンの糸もS方向の撚りも必要に応じて手配したこともありました。といいますのは、縦に綿などのS撚りの双糸を使うと、横方向は、S撚りのものを使うほうが、布がくるくると回るカーリングという現象がおきにくいのです。(加工してしまえば非常に微妙なものなので無視できる範囲ではあったと思います。)今では、S撚りのリネンを手に入れることはほとんどできないと思います。

林与には、リネンテスター以外に、普段使う道具としてオリンパスの拡大鏡が1つだけあります。今は手に入れることのできない特別な拡大鏡です。30倍くらいの倍率のもので、ルーペというよりも顕微鏡に属するものなのです。バックライト着きの200倍とか、400倍の顕微鏡もありますが、そこまで行くと逆に使いづらくなります。
2011年02月03日
古代エジプトではリネン織物というのは、WOVEN MOONLIGHT(織り上げられた月光)と称されることもあり、月光を織り上げたような美しさをもっていたと思われます。何千年も昔というのは、漂白技術も加工技術も化学的な部分に関しましては、今よりも劣っていたはずです。ですが、そのように称される背景には、何千年も昔のリネンには、今のリネンにはない、そう呼べるだけの光沢があったのではないかと思うのです。

私自身は、自然のリネンやラミーが持つ本来の光沢というのはシルクに迫るあるいは、シルクを超えるものと考えています。リネンというのは、これほど細くて長い繊維が取れる植物はないと言われます。麻業界では、一般に、ラミーのほうがリネンよりも繊維長が長いので紡績がしやすいといわれていますが、取り出せる繊維の細さと長さは似ています。

単に細いだけではなく、そのような糸というのは光を反射することで、この世のものとは思えない光沢があったと考えるのです。リネンというのは丁寧に加工してあげれば、科学的に漂白をせずしても自然の力で不純物を取り除いて上げれば色が落ち透明になるものなのです。光沢感を出すということは透明にしていくということなのです。それが、1本1本の糸が光を放つ月光を思わせる世界だったりいたします。

色を抜く際にも化学薬品を使わないので、出来上がった糸の色を、生成と呼ぶのか、晒と呼ぶのか、どう呼んでよいのか分かりません。WOVEN MOONLIGHTにちなんで、その色をムーンライトとでも呼びましょう。その糸というのは、普通のリネン糸とは、あまりに違いすぎてリネンと呼ぶことすら難しいのです。そのあたりが、「ITS VERY SINGULAR BEAUTY(その類まれなる美しさ)」と形容される部分じゃあないでしょうか。

以上のような解釈は一般的な解釈とは乖離した、経験や資料、手元の糸をベースに林与の考えるところなのですが、日本の麻織物の世界でも同じ世界があり、麻といえどもいろいろで、きぬあさと呼ばれるほどの糸の世界が日本にもあって、それは普通の糸とは別次元のものとされていたので、リネンの世界においても細い番手を極めていくときに、光沢と透明感が生み出されたのだと考えています。

月光を織り上げたと思ってもらえるような類まれなる美しさを持ったリネンを織ることができればよいなあと、幻のリネンプロジェクトは始まっています。ロマンを求めて、ゆっくり、ゆっくりと進行中です。
2011年02月02日
昨日、倉庫に行って、メンズのシャツ地向けに綿麻の生地サンプルをお客様に頼まれていたので適当なものがないかと探していたのですが、下のほうから、なぜかマグロを思わせる紺色の反物が出てきました。なぜ、こんなところにサブロク(91cm幅)の反物があるのかと思ってみると、それが、マグロのように黒光りしていたのも、きぬあさと呼ばれる着物用の麻糸を使用した織物だったのです。

完全に妥協のないつくりで、これが本麻かと思うと麻の価値というものを本当に感じることができる一品です。林与が和装から洋装に転換しはじめた、昭和40年ころの作だとおもうのですが、見た目は光沢感があって未来の織物のような感じがします。糸使いが異なるだけでなく、密度なども今、林与が作る織物の世界の1.5倍以上のスペックのものです。

誰が見ても価値がわかる簡単に売れるはずのものが、そのまま林与に残っていているというのは、林与特有のものづくりに思い入れが強すぎて売らずにとっておいたのだと思います。江戸時代なら大名が着るような素材だと思います。
2011年02月01日
遅ればせながらですが、ジャパンクリエーションやインターテキスタイル上海などで、お披露目いたしましたハードマンズ社サイオンミル紡績140番手のリネン糸を使用しましたアイリッシュリネンハンカチ生地とハンカチの一部の画像を「究極のリネン」のページにアップしました。

ベースは淡いアイボリーなオフ生成でゴールドな輝きを持っています。ラインには、きれいな色に染めた同じ糸を使用し、染めの色にもこだわっています。ハンカチなので特に堅牢度の高い染めに仕上げています。(実際にハンカチとして使われることのないものだとは思いますが…)

今は生地に仕上げたものだけの画像をアップしましたが、ハンカチとしてできあがり、縁取りの始末は、職人さんによる手かがりのハンドロールドヘム仕上げです。完璧な仕上げを目指した林与の考える究極のリネンハンカチです。

今は、初年度は、本当に35年前の糸が蘇るのか?というところからのトライアルで、無事織り上げ喜ぶだけでなく、何度も試織と加工テストを繰り返し、ハンカチとしての規格と風合いまでにこだわり、林与も見たことのないような別格の生地に仕上がりました。ビンテージアイリッシュリネンプロジェクトも、2年目に突入しまして、さらに進化を遂げさせたいと考えております。

ジャパンクリエーション2011SS展でのお披露目においては、ジャパンクリエーション全体の中でも一番くらいに注目いただけるような試みと評価いただきました。 http://www.japancreation.com/2011ss/news/20100423/index.html
2011年01月31日
今朝は、整経機で巻取りをしようと思うときにクラッチのあたりから異音がいたしました。昭和59年に良い状態の中古で購入した仕上がりで110cm幅までの整経ができる整経機なので、大型のものより何倍も使い勝手がよく、麻織物には非常に適しています。25年調子よく動いてきた整経機なので、調子が悪くなるということ自体が非常に不思議です。

原因は、クラッチの部分に掛かっていたカバーにかましてあったドロッパーが落ちて、カバーがクラッチと接触したということのようで、誰がいつドロッパーをかましたのかは謎ですが、大きな問題になる前に原因が究明できて良かったです。

整経機について語りますと、ほとんどが鉄なのですが、わざわざ、木で出来ている部分があるということが作業する人にどれほどぬくもりを感じさせるかということも感じます。鉄ばっかりでできた機械と言うのは冷たいものです。シャトル織機も同じです。筬をホールドする手で動かす分銅の部分は木なのです。

最初は、その部分が安っぽく見えるのでなんで、鉄を使わないんだろうかと思ったこともあるのですが、これも何十年の経験で、その部分というのは木で作るべきだという結論になっているのだと言えます。

弊社のシャトル織機の木の部分は化粧直ししてあるので、まだまだ、新しい感じがしますが、50年ほど使い込むと、木が手の力で磨り減って使う人の体の形に適合してきます。機械が人間になじむことが出来るのです。シャトル織機の筬をホールドしている部分というのは前後に動きますので、これが鉄だと非常に危険だということも言えます。ハンドメイドの方が使われる小型の手機などが木で出来ているのは、決して安く作るためでなく、人に優しく、糸に優しく正しいことだと思います。

織機のメーカーさんや整経機のメーカーさんは、メーカー自体がやめられてしまったり、生産をやめられたりしてしまっていることが多いのですが、その後も、織機や整経機は動き続けるのです。良いものを作りすぎると回転が悪く、自分で自分の首を絞めることになるのかもしれません。今は滅多に出会えませんが、「一生もの」と呼べる道具たちです。一人の人生以上に現役で動き続けるシャトル織機などもあり、伝統に培われた織物の世界というのは、他の製造業ではなかなか難しいこととは思いますが、語り継がれ引き継がれることができる世界なのだといえます。

今日は、糸を注文しましたがタイトになってきているのか、通常のようには、出にくくなってきているようで、もうすぐ、シーズンも終わりますので落ち着くとは思いますが、このような事態が増えると、安定した品質を守るためにも糸を作ってストックしておく方法のほうが良いのかとも思います。
2011年01月30日
今日は、資料のほうをつくったり、依頼のあったサンプルなどのピックアップを行っていました。月曜日の加工出しの準備や加工から上がってきた反物の出荷の準備に追われていました。出機さんも今日中に織って欲しいと依頼していました見本反をお休みにも関わらず織り上げてなんとか納期に関してもぎりぎりですが間に合いそうです。

リネンの本質に迫る幻のリネンプロジェクトのテストも、ちょこっと今の縦が掛かっているところでテスト織りをしました。織るのが難しくなる致命的な問題が発生したのですが、それが逆に別の部分で頭を抱えていた問題の新たなブレークスルーにつながります。

幻のリネンプロジェクトは、実は、麻織物についた頃からこれをやれたらすごいだろうなあと思っていたことの一つで、麻織物を知れば知るほど到底無理だと結論付けたことの一つです。それが、この数年の取り組みを行い、市場調査、情報収集など重ね、実際の動きに結びつけ、今日が最初の簡単な織りのテストとなりました。2月はさらにテストを積み重ねて、未知のリネン生地を試織できるようなところに近づいていければと思います。このプロジェクトも麻織りを極めるための挑戦の一環です。

考えているよりも、実際やってみるということが本当に大事だなあと思うことが多いのです。今の日本でモノづくりが難しくなっているのは、新しいものを作るためには、実際の作業が伴うので全てが必要になってくるのです。つくる商品が必要なのではなく、それ以前に安定して商品を作るための材料、設備、人、ノウハウなどが必要になってくるのです。それが安定的に社会を支える動力となってくるのだと思います。
2011年01月29日
ブランドさまなど2012期の春の展示会のお知らせが届きまして、伺わせていただこうと計画しています。2月10日頃にお伺いしますので、合間の時間などもあるかと思いますので、ジャパンクリエーションなどでお会いした皆様ともお会いできるのを楽しみにしています。いつも生地を置いていただいているショップさまや生地を買っていただいて店頭にならべてもらっているショップさんなども時間と場所の関係が許せば覗かせていただこうかと思います。

お昼には、生地ショップさまからのお電話があり、ご無沙汰してます、今年もよろしく、というお話してました、リネン関連は春がくると声が掛かるような感じなので、季節が来ないとご無沙汰になりがちですが、リピートでの生地をお使いいただける企画まで練って動いてくださるとうのはありがたい話です。2月というのは、そろそろ生地ショップさまなどもリネンの店頭準備に動かれる時期にはいります。

今日は、夜、VOGUEのサイトでパリコレ画像を見ました。たくさんある中でも、林与の生地は先染だったので服になっていてもすぐに分かりました。柄物というのはそういうところが良いですね。でも、画像で見るとプリントとほとんど違いが分かりませんので、先染の魅力というのは、糸自体がしっかりと色を発色していて、一本一本の糸に光の部分と影の部分が生まれますので実物を手にとって見てもらうのが一番かもと思います。

一方、どのブランドでも、数多くある無地を考えるときに、無地でも品質で責めるのが大事なのかなあと思いますが、画像で見る限り、レーヨンか、シルクかということまでは分かりませんので展示会では、合成繊維が会場の照明に映えて強いと思います。
2011年01月28日
今日は、午後から大津に向かいまして滋賀大学経済学部教授のセミナーがあり、ほかの社長さんと一緒に参加しました。取り上げられたマーケティングの成功事例に関してましては、特殊で高く売れているものというのは、ヒット商品として日の目に当たりがちですが、類似品が出回らないほどコスト面では逆に商品化が難しいものが多いのではないかと思います。

終わってからのコーヒーブレークで、産業支援チームの方が今度の2月の草津の講演会で地域資源活用のファンド事業の一例としまして、林与のアイリッシュリネンプロジェクトにも講演の中で触れてくださるといういうお話でした。東京や海外の展示会やメディアでは大分PRできたと思うのですが、滋賀県内の他の業界の皆さんにも近江湖東産地の麻織物への認識が高まればよいなあと思います。

夜には、彦根で縫製組合の新年会が行われました。彦根市、商工会議所、中央会などからもご来賓の皆様がお見えくださり、いつもお世話になっている官公庁部署の皆様なのですが、私自身は初めてお会いする方が多く、食事の合間にご挨拶に回らせていただきました。

帰ってきたら、捺染工場さんからテスト刷りしてもらった生地が届いていました。4種類の生地で2種類の染料でテストしていただいたのですが、同じプリントなのに、素材によって染料の乗りがまったく異なるので、手軽感では綿麻、本格的に本麻、あるいは、人気どころでリネン100のどれにしようか迷うところです。実際に本番のテストに進行して一つやってみないことには、どこまでの完成度なのかも見極められないと思います。
2011年01月27日
昨日、遅くに加工から反物が上がってきましたので、今日は検反機で出荷のための検反を行いました。今の時代というのは、ぎりぎりの量で計画して作るので、途中天使の分け前みたいなロスが出て、最終でショートしてしまうことがほとんどです。

ショートする原因というのはいろいろとあります。まず、リネンの糸を買うと大体ですが、4%から5%程度目方にして軽いのです。これは、一般的には水分率の問題といわれますが、実際には水分率の問題ではなく、最初から少なめです。これこそが、ヨーロッパにしても中国にしても海外の品質ならびに基準ではないかといえます。どうしても、工賃を少しでも稼ごうと実質の重量で計りたがらない傾向にあります。

また、糸の太さも本当に番手通りかというと、糸のロットによってまちまちであることがほとんどです。大体、その番手であるというくらいで捕らえて置くべきだといえます。細くなることはまずありえませんが、紡績工場によって1割くらい太くなることはありえます。

糸を小割りにすると整経ロスが出ます、また、織機に繋ぐと最初と最後のロスがでます。織ると織り縮がでます。加工では加工のロスが出ます。検反すれば、糸、織、加工の問題を含めてロスがさらに出ます。糸の問題ですが、糸が硬いのと柔らかいのでは硬いほうがごつく織れるのです。糸にフシが多いとこれも糸が硬いのと同じことでごつく織れる原因になります。

織物に関しましても、織物というのは規格どおりに仕上げようとすると、幅や長さに問題があることが多いのです。規格を優先するのか品質を優先するのかの問題になります。リネンのような天然繊維の場合には、規格どおりに上げることのほうが問題が多くなるのです。同じロットの糸を使って同じ量のものを作ればほぼ同じに上げることが可能ですが、生産の量が変わるだけでも、浴比の問題や生地の自由度の問題で、加工の仕上がりは変わってきます。

途中で発生する規格とのギャップを埋めようとして、引っ張り出しすぎて幅を規格に合わせていたり、引っ張って加工して長さを長く仕上げてたりすると、物性の面で、後で洗うと縮む問題を抱えてしまいます。リネンや本麻というのは品質面においてもそれぞれの工程の職人の力が生きる繊維だと実感するところです。
2011年01月26日
倉庫の話の続きですが、糸を巻く木管がたくさん残してあります。今はプラスチック管に巻いて出荷されることが多くなりレトロな感じを髣髴させるのですが、今も昔の木管を大事にダンボールに詰めてあります。

木管に残る残糸を片付けるのを、小学校1年生頃にしたのを覚えています。最初は楽しいのですがすぐに飽きました。色柄のものを整経するときには、柄の本数分の木管が必要になってくるのですがそれを片付けるのがまた一苦労です。木管に残ったわずかな糸ですが、十グラムほどでももったいないので固めて何かの時に使えるように残しておくのです。たとえば、チェック柄のスジ使いにするとか…

木管というのは再利用が利くのです。一方、プラスチック管や紙管は使い捨てのものとして扱われます。だんだんと、木管が使われなくなったのを思うと、エコではない時代だなあとつくづく感じます。再生しないと使えないというのが果たしてベストなのかというところです。

一方で、昔の糸というのは一つ一つ紙に丁寧に巻かれていたのです。今はビニール袋に包まれています。紙というのは、これも使い捨てにせずに、重ねておいて、整経のときの糸の段差をなくすために使う紙にしたりします。一度だけでなく何度も使います。糸を巻いていた紙を、段ボール箱いっぱいに詰めて残しておくこともあり、それが何かの時に役に立つのです。機を載せかえるときに、糸を束ねるときに使ったりしたものです。

今の時代というのは、優良な会社ほど、逆にそういうのが許されない時代ではないでしょうか。手仕事の世界のヒトというのは、モノをつくる苦労を知っているので、モノを大事にするものです。今の時代でも、糸を包んである薄いビニール袋などは、一つ一つ重ねて何かの時に使えるのではないかと、なるべく捨てないようにして残しています。

たぶん、新しいものを買っても何百枚で100円の世界でしょうが、自分自身がそれを大事にすることでそのビニール袋一枚に価値が生まれるのと同時に、仕事の価値も生まれてくるのだと思います。コストや効率を重視すると自分で作ることの意味さえもがなくなるので、自分自身にしかできないスタイルを守ることが大事だとは常に考えています。
2011年01月25日
倉庫の中に、一箱だけですが大昔のフランスの糸がありました、輸入されたときの手書きのメイドインフランスの文字を見て、これはと思ったのですが、蓋を開けてみると、一般に言われているように太目の糸で、それほどよい糸には思えません。リネン30番手と書いてあり、色味もデゥーレッティングっぽい色をしてザラザラとした粗野な感じです。

現在もフランスの糸といわれるかなり高品質の評判のよいものが出回っていますが、実際にはポーランドでの紡績というお話で、フランスでの機械化された近代の紡績というものはあまり高い水準には達しなかったのかもと思います。リネンの歴史の文献などを調べても、フランスのリネンというのは、ハウスリネンなど資材系のものが多かったということのようです。

他にも、ハードマンズ社の生成の40番手が途中まで使った感じで箱の半分より多いくらい出てきました。これも、文字からすると35年前に輸入したものと思います。こちらは糸もしっかりとアイリッシュリネンを思わせる色味です。ハードマンズ社のダンボールケースも、昔の者は横長の長方形なのですが、20年ほど前のものはブルーの縦長のケースになってメイドインイングランドの文字があしらってあります。今みると懐かしい感じがします。

あと60番手と書いた、アイリッシュリネンを思わせる色味の糸も出てきましたが、こちらは、光沢感が少なめなので金色というよりも黄色い感じでエジプトのリネンを思わせる色味ですが、糸よりも高い非常に高級な糊を付けて残して有る糸なので、当然にアイリッシュリネンだと思いますが元箱がないので、どこのメーカーの糸なのかが分かりません。
2011年01月24日
今朝、林与オリジナルのブラックアンドホワイトチェックマス見本のお知らせをいたしましたところ、たくさんの方がマス見本をご注文くださいました。マス見本を作るときにできてしまった、難有のものは、すぐに完売してしまいました。捨ててしまうのは本当に勿体がありませんので大胆にも難有のまま販売させていただきました。

うまく活用していただければ、リネン66シリーズと同じ薄手の生地ですのでカットしてストールなんかにお使いいただけるかと思います。良品のマス見本のほうも、上下を始末していただければ、マス見本として眺めるも良し、大判のショールとしてもお使いいただけます。インパクトがあってよい感じです。

数名の方からマス見本の意味が分かりましたというお言葉を頂戴いたしました。リネン日記では言葉足らずで説明がうまく出来ていないのを感じました。いろいろな色柄を提案するために、一つの布にたくさんの柄をパッチワークのように散りばめるのがマス見本です。

メール配信をご希望いただいている会員様にはメールでお知らせさせていただいたのですが、2月14日までに3000円以上お買い上げいただいた方には、ビンテージゴールデンアイリッシュリネン生成糸500M巻をプレゼントいたします。

こちらの糸は、リネン日記でも書きました、オイルショック後の35年くらい前に林与が購入しました糸です。北アイルランドのアンドリュース社のウォーターレッティングの糸になります。リネンの80番手という細番手が珍しいだけでなく、北アイルランドで紡績されたアイリッシュリネンで、今はヨーロッパではほとんどなされていないウォーターレッティングという手法で作られた糸です。糸の均一性などが今の糸とは比べ物にならず、ほれぼれといたします。

オイルショック後の世界的にものが売れなくなった時代に北アイルランドでの紡績に終焉が訪れたものと思われます。1990年代の後半には、北アイルランドではリネン産業がすでに過去のものとなり、アイリッシュリネン産業に携わっていた人たちから当時のことを聞き出す語り部プロジェクトがスタートしています。
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