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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2011年02月04日
リネンテスターという言葉をご存知ですか? リネンをテストする機械があるのかと思われるかもしれませんが、生地を見るための3つ折にできるインチ拡大鏡のことです。プロの人が使うものなのですが、昔からあるものなので見られた方は多いと思います。

何をするときに使うかというと、リネンの場合はそれほど高密度な織物であるということは少ないですし、高密度の場合には逆に拡大率が低すぎるので役に立ちません。リネンテスターで一生懸命に組織を眺めている人をみると大変だなあと思います。リネンテスターは、ほとんどの場合ちょうどインチの四角ですので、縦横の密度を計算するため縦横の本数を数えるのです。

リネンテスターという道具は、ほとんど形が変わることなく、たぶん100年以上使われてきている道具ではないでしょうか。子供のころは、すごくかっこよい道具に見えたものです。リネンの織物を拡大して覗くと万華鏡のようにきれいだなあと思うことがあります。リネン糸の一本一本がキラキラとしています。糸というのがまっすぐではなく、地撚りというものが掛かっているのも確認できるかと思います。地撚りというのは糸を紡績するときに掛ける撚りのことで、リネンの番手くらいの撚りが1M辺りに掛かっていることが多いようです。撚り方向は、Z方向とS方向があり、通常の糸はZ方向です。

昔は、リネンの糸もS方向の撚りも必要に応じて手配したこともありました。といいますのは、縦に綿などのS撚りの双糸を使うと、横方向は、S撚りのものを使うほうが、布がくるくると回るカーリングという現象がおきにくいのです。(加工してしまえば非常に微妙なものなので無視できる範囲ではあったと思います。)今では、S撚りのリネンを手に入れることはほとんどできないと思います。

林与には、リネンテスター以外に、普段使う道具としてオリンパスの拡大鏡が1つだけあります。今は手に入れることのできない特別な拡大鏡です。30倍くらいの倍率のもので、ルーペというよりも顕微鏡に属するものなのです。バックライト着きの200倍とか、400倍の顕微鏡もありますが、そこまで行くと逆に使いづらくなります。
2011年02月03日
古代エジプトではリネン織物というのは、WOVEN MOONLIGHT(織り上げられた月光)と称されることもあり、月光を織り上げたような美しさをもっていたと思われます。何千年も昔というのは、漂白技術も加工技術も化学的な部分に関しましては、今よりも劣っていたはずです。ですが、そのように称される背景には、何千年も昔のリネンには、今のリネンにはない、そう呼べるだけの光沢があったのではないかと思うのです。

私自身は、自然のリネンやラミーが持つ本来の光沢というのはシルクに迫るあるいは、シルクを超えるものと考えています。リネンというのは、これほど細くて長い繊維が取れる植物はないと言われます。麻業界では、一般に、ラミーのほうがリネンよりも繊維長が長いので紡績がしやすいといわれていますが、取り出せる繊維の細さと長さは似ています。

単に細いだけではなく、そのような糸というのは光を反射することで、この世のものとは思えない光沢があったと考えるのです。リネンというのは丁寧に加工してあげれば、科学的に漂白をせずしても自然の力で不純物を取り除いて上げれば色が落ち透明になるものなのです。光沢感を出すということは透明にしていくということなのです。それが、1本1本の糸が光を放つ月光を思わせる世界だったりいたします。

色を抜く際にも化学薬品を使わないので、出来上がった糸の色を、生成と呼ぶのか、晒と呼ぶのか、どう呼んでよいのか分かりません。WOVEN MOONLIGHTにちなんで、その色をムーンライトとでも呼びましょう。その糸というのは、普通のリネン糸とは、あまりに違いすぎてリネンと呼ぶことすら難しいのです。そのあたりが、「ITS VERY SINGULAR BEAUTY(その類まれなる美しさ)」と形容される部分じゃあないでしょうか。

以上のような解釈は一般的な解釈とは乖離した、経験や資料、手元の糸をベースに林与の考えるところなのですが、日本の麻織物の世界でも同じ世界があり、麻といえどもいろいろで、きぬあさと呼ばれるほどの糸の世界が日本にもあって、それは普通の糸とは別次元のものとされていたので、リネンの世界においても細い番手を極めていくときに、光沢と透明感が生み出されたのだと考えています。

月光を織り上げたと思ってもらえるような類まれなる美しさを持ったリネンを織ることができればよいなあと、幻のリネンプロジェクトは始まっています。ロマンを求めて、ゆっくり、ゆっくりと進行中です。
2011年02月02日
昨日、倉庫に行って、メンズのシャツ地向けに綿麻の生地サンプルをお客様に頼まれていたので適当なものがないかと探していたのですが、下のほうから、なぜかマグロを思わせる紺色の反物が出てきました。なぜ、こんなところにサブロク(91cm幅)の反物があるのかと思ってみると、それが、マグロのように黒光りしていたのも、きぬあさと呼ばれる着物用の麻糸を使用した織物だったのです。

完全に妥協のないつくりで、これが本麻かと思うと麻の価値というものを本当に感じることができる一品です。林与が和装から洋装に転換しはじめた、昭和40年ころの作だとおもうのですが、見た目は光沢感があって未来の織物のような感じがします。糸使いが異なるだけでなく、密度なども今、林与が作る織物の世界の1.5倍以上のスペックのものです。

誰が見ても価値がわかる簡単に売れるはずのものが、そのまま林与に残っていているというのは、林与特有のものづくりに思い入れが強すぎて売らずにとっておいたのだと思います。江戸時代なら大名が着るような素材だと思います。
2011年02月01日
遅ればせながらですが、ジャパンクリエーションやインターテキスタイル上海などで、お披露目いたしましたハードマンズ社サイオンミル紡績140番手のリネン糸を使用しましたアイリッシュリネンハンカチ生地とハンカチの一部の画像を「究極のリネン」のページにアップしました。

ベースは淡いアイボリーなオフ生成でゴールドな輝きを持っています。ラインには、きれいな色に染めた同じ糸を使用し、染めの色にもこだわっています。ハンカチなので特に堅牢度の高い染めに仕上げています。(実際にハンカチとして使われることのないものだとは思いますが…)

今は生地に仕上げたものだけの画像をアップしましたが、ハンカチとしてできあがり、縁取りの始末は、職人さんによる手かがりのハンドロールドヘム仕上げです。完璧な仕上げを目指した林与の考える究極のリネンハンカチです。

今は、初年度は、本当に35年前の糸が蘇るのか?というところからのトライアルで、無事織り上げ喜ぶだけでなく、何度も試織と加工テストを繰り返し、ハンカチとしての規格と風合いまでにこだわり、林与も見たことのないような別格の生地に仕上がりました。ビンテージアイリッシュリネンプロジェクトも、2年目に突入しまして、さらに進化を遂げさせたいと考えております。

ジャパンクリエーション2011SS展でのお披露目においては、ジャパンクリエーション全体の中でも一番くらいに注目いただけるような試みと評価いただきました。 http://www.japancreation.com/2011ss/news/20100423/index.html
2011年01月31日
今朝は、整経機で巻取りをしようと思うときにクラッチのあたりから異音がいたしました。昭和59年に良い状態の中古で購入した仕上がりで110cm幅までの整経ができる整経機なので、大型のものより何倍も使い勝手がよく、麻織物には非常に適しています。25年調子よく動いてきた整経機なので、調子が悪くなるということ自体が非常に不思議です。

原因は、クラッチの部分に掛かっていたカバーにかましてあったドロッパーが落ちて、カバーがクラッチと接触したということのようで、誰がいつドロッパーをかましたのかは謎ですが、大きな問題になる前に原因が究明できて良かったです。

整経機について語りますと、ほとんどが鉄なのですが、わざわざ、木で出来ている部分があるということが作業する人にどれほどぬくもりを感じさせるかということも感じます。鉄ばっかりでできた機械と言うのは冷たいものです。シャトル織機も同じです。筬をホールドする手で動かす分銅の部分は木なのです。

最初は、その部分が安っぽく見えるのでなんで、鉄を使わないんだろうかと思ったこともあるのですが、これも何十年の経験で、その部分というのは木で作るべきだという結論になっているのだと言えます。

弊社のシャトル織機の木の部分は化粧直ししてあるので、まだまだ、新しい感じがしますが、50年ほど使い込むと、木が手の力で磨り減って使う人の体の形に適合してきます。機械が人間になじむことが出来るのです。シャトル織機の筬をホールドしている部分というのは前後に動きますので、これが鉄だと非常に危険だということも言えます。ハンドメイドの方が使われる小型の手機などが木で出来ているのは、決して安く作るためでなく、人に優しく、糸に優しく正しいことだと思います。

織機のメーカーさんや整経機のメーカーさんは、メーカー自体がやめられてしまったり、生産をやめられたりしてしまっていることが多いのですが、その後も、織機や整経機は動き続けるのです。良いものを作りすぎると回転が悪く、自分で自分の首を絞めることになるのかもしれません。今は滅多に出会えませんが、「一生もの」と呼べる道具たちです。一人の人生以上に現役で動き続けるシャトル織機などもあり、伝統に培われた織物の世界というのは、他の製造業ではなかなか難しいこととは思いますが、語り継がれ引き継がれることができる世界なのだといえます。

今日は、糸を注文しましたがタイトになってきているのか、通常のようには、出にくくなってきているようで、もうすぐ、シーズンも終わりますので落ち着くとは思いますが、このような事態が増えると、安定した品質を守るためにも糸を作ってストックしておく方法のほうが良いのかとも思います。
2011年01月30日
今日は、資料のほうをつくったり、依頼のあったサンプルなどのピックアップを行っていました。月曜日の加工出しの準備や加工から上がってきた反物の出荷の準備に追われていました。出機さんも今日中に織って欲しいと依頼していました見本反をお休みにも関わらず織り上げてなんとか納期に関してもぎりぎりですが間に合いそうです。

リネンの本質に迫る幻のリネンプロジェクトのテストも、ちょこっと今の縦が掛かっているところでテスト織りをしました。織るのが難しくなる致命的な問題が発生したのですが、それが逆に別の部分で頭を抱えていた問題の新たなブレークスルーにつながります。

幻のリネンプロジェクトは、実は、麻織物についた頃からこれをやれたらすごいだろうなあと思っていたことの一つで、麻織物を知れば知るほど到底無理だと結論付けたことの一つです。それが、この数年の取り組みを行い、市場調査、情報収集など重ね、実際の動きに結びつけ、今日が最初の簡単な織りのテストとなりました。2月はさらにテストを積み重ねて、未知のリネン生地を試織できるようなところに近づいていければと思います。このプロジェクトも麻織りを極めるための挑戦の一環です。

考えているよりも、実際やってみるということが本当に大事だなあと思うことが多いのです。今の日本でモノづくりが難しくなっているのは、新しいものを作るためには、実際の作業が伴うので全てが必要になってくるのです。つくる商品が必要なのではなく、それ以前に安定して商品を作るための材料、設備、人、ノウハウなどが必要になってくるのです。それが安定的に社会を支える動力となってくるのだと思います。
2011年01月29日
ブランドさまなど2012期の春の展示会のお知らせが届きまして、伺わせていただこうと計画しています。2月10日頃にお伺いしますので、合間の時間などもあるかと思いますので、ジャパンクリエーションなどでお会いした皆様ともお会いできるのを楽しみにしています。いつも生地を置いていただいているショップさまや生地を買っていただいて店頭にならべてもらっているショップさんなども時間と場所の関係が許せば覗かせていただこうかと思います。

お昼には、生地ショップさまからのお電話があり、ご無沙汰してます、今年もよろしく、というお話してました、リネン関連は春がくると声が掛かるような感じなので、季節が来ないとご無沙汰になりがちですが、リピートでの生地をお使いいただける企画まで練って動いてくださるとうのはありがたい話です。2月というのは、そろそろ生地ショップさまなどもリネンの店頭準備に動かれる時期にはいります。

今日は、夜、VOGUEのサイトでパリコレ画像を見ました。たくさんある中でも、林与の生地は先染だったので服になっていてもすぐに分かりました。柄物というのはそういうところが良いですね。でも、画像で見るとプリントとほとんど違いが分かりませんので、先染の魅力というのは、糸自体がしっかりと色を発色していて、一本一本の糸に光の部分と影の部分が生まれますので実物を手にとって見てもらうのが一番かもと思います。

一方、どのブランドでも、数多くある無地を考えるときに、無地でも品質で責めるのが大事なのかなあと思いますが、画像で見る限り、レーヨンか、シルクかということまでは分かりませんので展示会では、合成繊維が会場の照明に映えて強いと思います。
2011年01月28日
今日は、午後から大津に向かいまして滋賀大学経済学部教授のセミナーがあり、ほかの社長さんと一緒に参加しました。取り上げられたマーケティングの成功事例に関してましては、特殊で高く売れているものというのは、ヒット商品として日の目に当たりがちですが、類似品が出回らないほどコスト面では逆に商品化が難しいものが多いのではないかと思います。

終わってからのコーヒーブレークで、産業支援チームの方が今度の2月の草津の講演会で地域資源活用のファンド事業の一例としまして、林与のアイリッシュリネンプロジェクトにも講演の中で触れてくださるといういうお話でした。東京や海外の展示会やメディアでは大分PRできたと思うのですが、滋賀県内の他の業界の皆さんにも近江湖東産地の麻織物への認識が高まればよいなあと思います。

夜には、彦根で縫製組合の新年会が行われました。彦根市、商工会議所、中央会などからもご来賓の皆様がお見えくださり、いつもお世話になっている官公庁部署の皆様なのですが、私自身は初めてお会いする方が多く、食事の合間にご挨拶に回らせていただきました。

帰ってきたら、捺染工場さんからテスト刷りしてもらった生地が届いていました。4種類の生地で2種類の染料でテストしていただいたのですが、同じプリントなのに、素材によって染料の乗りがまったく異なるので、手軽感では綿麻、本格的に本麻、あるいは、人気どころでリネン100のどれにしようか迷うところです。実際に本番のテストに進行して一つやってみないことには、どこまでの完成度なのかも見極められないと思います。
2011年01月27日
昨日、遅くに加工から反物が上がってきましたので、今日は検反機で出荷のための検反を行いました。今の時代というのは、ぎりぎりの量で計画して作るので、途中天使の分け前みたいなロスが出て、最終でショートしてしまうことがほとんどです。

ショートする原因というのはいろいろとあります。まず、リネンの糸を買うと大体ですが、4%から5%程度目方にして軽いのです。これは、一般的には水分率の問題といわれますが、実際には水分率の問題ではなく、最初から少なめです。これこそが、ヨーロッパにしても中国にしても海外の品質ならびに基準ではないかといえます。どうしても、工賃を少しでも稼ごうと実質の重量で計りたがらない傾向にあります。

また、糸の太さも本当に番手通りかというと、糸のロットによってまちまちであることがほとんどです。大体、その番手であるというくらいで捕らえて置くべきだといえます。細くなることはまずありえませんが、紡績工場によって1割くらい太くなることはありえます。

糸を小割りにすると整経ロスが出ます、また、織機に繋ぐと最初と最後のロスがでます。織ると織り縮がでます。加工では加工のロスが出ます。検反すれば、糸、織、加工の問題を含めてロスがさらに出ます。糸の問題ですが、糸が硬いのと柔らかいのでは硬いほうがごつく織れるのです。糸にフシが多いとこれも糸が硬いのと同じことでごつく織れる原因になります。

織物に関しましても、織物というのは規格どおりに仕上げようとすると、幅や長さに問題があることが多いのです。規格を優先するのか品質を優先するのかの問題になります。リネンのような天然繊維の場合には、規格どおりに上げることのほうが問題が多くなるのです。同じロットの糸を使って同じ量のものを作ればほぼ同じに上げることが可能ですが、生産の量が変わるだけでも、浴比の問題や生地の自由度の問題で、加工の仕上がりは変わってきます。

途中で発生する規格とのギャップを埋めようとして、引っ張り出しすぎて幅を規格に合わせていたり、引っ張って加工して長さを長く仕上げてたりすると、物性の面で、後で洗うと縮む問題を抱えてしまいます。リネンや本麻というのは品質面においてもそれぞれの工程の職人の力が生きる繊維だと実感するところです。
2011年01月26日
倉庫の話の続きですが、糸を巻く木管がたくさん残してあります。今はプラスチック管に巻いて出荷されることが多くなりレトロな感じを髣髴させるのですが、今も昔の木管を大事にダンボールに詰めてあります。

木管に残る残糸を片付けるのを、小学校1年生頃にしたのを覚えています。最初は楽しいのですがすぐに飽きました。色柄のものを整経するときには、柄の本数分の木管が必要になってくるのですがそれを片付けるのがまた一苦労です。木管に残ったわずかな糸ですが、十グラムほどでももったいないので固めて何かの時に使えるように残しておくのです。たとえば、チェック柄のスジ使いにするとか…

木管というのは再利用が利くのです。一方、プラスチック管や紙管は使い捨てのものとして扱われます。だんだんと、木管が使われなくなったのを思うと、エコではない時代だなあとつくづく感じます。再生しないと使えないというのが果たしてベストなのかというところです。

一方で、昔の糸というのは一つ一つ紙に丁寧に巻かれていたのです。今はビニール袋に包まれています。紙というのは、これも使い捨てにせずに、重ねておいて、整経のときの糸の段差をなくすために使う紙にしたりします。一度だけでなく何度も使います。糸を巻いていた紙を、段ボール箱いっぱいに詰めて残しておくこともあり、それが何かの時に役に立つのです。機を載せかえるときに、糸を束ねるときに使ったりしたものです。

今の時代というのは、優良な会社ほど、逆にそういうのが許されない時代ではないでしょうか。手仕事の世界のヒトというのは、モノをつくる苦労を知っているので、モノを大事にするものです。今の時代でも、糸を包んである薄いビニール袋などは、一つ一つ重ねて何かの時に使えるのではないかと、なるべく捨てないようにして残しています。

たぶん、新しいものを買っても何百枚で100円の世界でしょうが、自分自身がそれを大事にすることでそのビニール袋一枚に価値が生まれるのと同時に、仕事の価値も生まれてくるのだと思います。コストや効率を重視すると自分で作ることの意味さえもがなくなるので、自分自身にしかできないスタイルを守ることが大事だとは常に考えています。
2011年01月25日
倉庫の中に、一箱だけですが大昔のフランスの糸がありました、輸入されたときの手書きのメイドインフランスの文字を見て、これはと思ったのですが、蓋を開けてみると、一般に言われているように太目の糸で、それほどよい糸には思えません。リネン30番手と書いてあり、色味もデゥーレッティングっぽい色をしてザラザラとした粗野な感じです。

現在もフランスの糸といわれるかなり高品質の評判のよいものが出回っていますが、実際にはポーランドでの紡績というお話で、フランスでの機械化された近代の紡績というものはあまり高い水準には達しなかったのかもと思います。リネンの歴史の文献などを調べても、フランスのリネンというのは、ハウスリネンなど資材系のものが多かったということのようです。

他にも、ハードマンズ社の生成の40番手が途中まで使った感じで箱の半分より多いくらい出てきました。これも、文字からすると35年前に輸入したものと思います。こちらは糸もしっかりとアイリッシュリネンを思わせる色味です。ハードマンズ社のダンボールケースも、昔の者は横長の長方形なのですが、20年ほど前のものはブルーの縦長のケースになってメイドインイングランドの文字があしらってあります。今みると懐かしい感じがします。

あと60番手と書いた、アイリッシュリネンを思わせる色味の糸も出てきましたが、こちらは、光沢感が少なめなので金色というよりも黄色い感じでエジプトのリネンを思わせる色味ですが、糸よりも高い非常に高級な糊を付けて残して有る糸なので、当然にアイリッシュリネンだと思いますが元箱がないので、どこのメーカーの糸なのかが分かりません。
2011年01月24日
今朝、林与オリジナルのブラックアンドホワイトチェックマス見本のお知らせをいたしましたところ、たくさんの方がマス見本をご注文くださいました。マス見本を作るときにできてしまった、難有のものは、すぐに完売してしまいました。捨ててしまうのは本当に勿体がありませんので大胆にも難有のまま販売させていただきました。

うまく活用していただければ、リネン66シリーズと同じ薄手の生地ですのでカットしてストールなんかにお使いいただけるかと思います。良品のマス見本のほうも、上下を始末していただければ、マス見本として眺めるも良し、大判のショールとしてもお使いいただけます。インパクトがあってよい感じです。

数名の方からマス見本の意味が分かりましたというお言葉を頂戴いたしました。リネン日記では言葉足らずで説明がうまく出来ていないのを感じました。いろいろな色柄を提案するために、一つの布にたくさんの柄をパッチワークのように散りばめるのがマス見本です。

メール配信をご希望いただいている会員様にはメールでお知らせさせていただいたのですが、2月14日までに3000円以上お買い上げいただいた方には、ビンテージゴールデンアイリッシュリネン生成糸500M巻をプレゼントいたします。

こちらの糸は、リネン日記でも書きました、オイルショック後の35年くらい前に林与が購入しました糸です。北アイルランドのアンドリュース社のウォーターレッティングの糸になります。リネンの80番手という細番手が珍しいだけでなく、北アイルランドで紡績されたアイリッシュリネンで、今はヨーロッパではほとんどなされていないウォーターレッティングという手法で作られた糸です。糸の均一性などが今の糸とは比べ物にならず、ほれぼれといたします。

オイルショック後の世界的にものが売れなくなった時代に北アイルランドでの紡績に終焉が訪れたものと思われます。1990年代の後半には、北アイルランドではリネン産業がすでに過去のものとなり、アイリッシュリネン産業に携わっていた人たちから当時のことを聞き出す語り部プロジェクトがスタートしています。
2011年01月23日
シャトル織物というのは、しっかりとした耳があります。この耳というのは日本では上手に昔から使われてきました。着物においても、この耳をそのまま使うことで反物の価値を引き継ぐとともに縫う際に厚くならない処理ができ肌への当たりを抑えることができるのです。日本だけでなく、アメリカなどでも、セルビッジのジーンズなども耳を上手に使い素材の価値をうまく引き出しています。縫製する人が職人だった時代の業だと思います。今では、縫製の現場で職人は少なくなってしまい、生産効率優先で自動化されたことも素材へのこだわりが少なくなってしまった原因の一つではないかと思います。

横無地のシャトルの織物の場合には、50cm間隔などでシャトルが変わります。ボーダー柄など、糸がなくなってしまわないときには、自動的に糸と糸が結ばれるのではなく、糸が伸びたままシャトルはシャトルボックスでそのまま次まで待機します。そして、また出番になると糸が出るので、出番が10cm間隔だったら、耳のところに10cmの糸の渡りができるのです。

織物を検反するときにその渡りを綺麗にカットしてあげれば、綺麗な耳に仕上がりますが、ギンガムチェックなどの場合、1cm間隔ですと一つ一つのカットは大変ですので、そのままにしてあることも多いものです。

日本のシャトル織機の小幅織物の耳というのは、着物などで使うことを前提にしたものですので綺麗なことが多いのですが、海外のシャトル織機の耳というのは、手機のものは綺麗でも、力織機で織ったものなどは耳は使わないことが前提で織られたものが多く、ボコボコしていることが多いのです。

シャトル耳の付いたものは、シャトルで織られたものですので、糸に余裕がありますので、生地がふっくらとしていることが多いと思います。着物用の織物を生産するときに、広幅のレピア織機で織ってカットを入れて3つに分けるというような作り方もあるようですが、そこまでして、小幅っぽくするのに力を入れるくらいなら、広幅の生地をそのまま裁断したほうが効率が良いような気もします。

広幅のシャトル織物でも、6Mほどあれば左右の耳は取れますので、小幅の織物と同様にお使いいただくことができるかと思います。また、耳の色というのも織物をつくるものが注意していないといけず、黒い着物に使う耳は黒にするなど、同系色にしておくことが良いのです。それは、外に色が響かないからです。白の時には、生成りの耳ではなく、真っ白な綿の糸を使うなどです。

また、耳の糸は、麻織物の場合には綿を使うことが多いのです。よく、麻糸を使って欲しいという依頼がありますが、出来ないことはないです。でも、耳というのは片側が生地がないのでルーズになりがちでその分糸密度を上げて調整し、シャトルが左右に動くときに耳を内側に引っ張りますので、どうしても他の部分よりも高密度になりがちで、糸に伸度が必要なため、麻の単糸を使うよりは、綿の双糸などを使うほうが糸切れが起こりにくいのです。着物などに使う場合、耳の肌辺りをよくするために綿のほうが良いのです。

縫製を依頼されるときにも、麻のものを麻糸で縫製してもらえないかという話があるのですが、それは良くないというお話をよくいたします。こだわったとして、綿糸でしょうか。長くお使いいただく場合には、ポリエステルなどの合繊の糸のほうがより、強度がありますので、アパレルメーカーさんなどはポリエステルのミシン糸を使用されるケースがほとんどだと思います。

麻の布というのは、加工時に10%から15%ほど横方向などは縮んでいることが多いので、そこを麻糸などで縫ってしまうと、引っ張って生地が伸びたときに、糸が切れてしまうことがあるので、生地の伸びに耐えるような強い糸でないといけないのです。かばんや小さな小物など引張りが少ないものなら大丈夫かもしれません。
2011年01月22日
実は幻のリネンプロジェクトを2年掛けての予定で進行を始めました。究極のリネンプロジェクトはビンテージアイリッシュリネンを織り上げハンカチにしまして現在も進行中ですが、幻のリネンプロジェクトは、さらにロマンを追い求め何百年の時を越えるような計画を考えております。幻のプロジェクトと呼ぶのは、難しすぎて幻に終わる可能性も高いのです。クリアしないといけない壁がたくさんあります。出来上がれば神掛かったリネンが出来上がるのではないかと思います。

ハンカチのプロジェクトの延長としまして、3年目に組み入れて、さらに先に進んで行きたいと考えております。リネンの世界を今一度深く掘り下げたことにより、多くの見えない世界が見えてまいりました。リネンの織の可能性を求めて、今、リネンで何ができるのかという探求の世界を深めてまいりたいと考えております。

織り上げることが出来ましたら、まず、海外での展示会や研究の場での発表を目標にしております。なんか秘密めいており申し訳ありませんが、リネンを極めるときに何ができるのかを根本から考え直して織りに挑みたいと考えています。
2011年01月21日
今日はニューヨーク向け輸出の着分の発送の手配を行いました。ナチュラルテイストでカジュアルな仕上がりの手作り感のあるリネン生地なので、着分が同評価されるのかが楽しみです。リネンものとしてはボリュームがありますので秋冬がターゲットのようです。

今回は、FEDEXで送りました。実際に窓口の人に聞きながら書くとドキュメントは簡単な感じでした。10Mほどの生地でしたが紙管巻きで重さが5kgを超えていました。結構なボリュームで素材としてインパクトがあると思います。この2年に手がけた特殊なものの一つで織と加工が特殊なのです。

あと、お昼にはストールの関係で特殊な染をされている方からお問い合わせがありました。林与自身の素材が、さらに特殊な加工を経てより価値のある形で皆様のお手元にたどり着くような流れが素敵だなあと思います。

今日は、午後から大津でのセミナーが入っていたのですが、出荷に追われていてそちらはキャンセルさせていただきました。夜は、生地の出荷がありまして、遅くに佐川に持ち込みです。バタバタ、バタバタな毎日です。

ニューヨークのブランドさんのEメールには、「このメールをプリントアウトするまえに本当に必要か考えてください」みたいなフットノートが付いていました。アメリカンハートな優しさだと思うところです。ブランドさんに精神的な面での強さというか優しさがあるのは、素敵だなあと思います。
2011年01月20日
昨日は、午後から、捺染工場さんにお邪魔して、林与の近江上布柄をプリントで再現するためのファーストステップを見せていただきました。4種類の布に3柄をプリントしてくださって、それぞれの違いというものがよく分かります。染料で染めたものと、顔料で染めたものの色の出方の違いも一目瞭然です。

顔料で染めたものは綺麗に仕上がるのですが、印刷したみたいで奥の深さがない感じで、染料で染めたものはインパクトがあり、非常に良い感じの色の出方です。本番を想定したテスト用に、版を作ってくださっており、万全の体制で、林与の近江上布柄プリントプロジェクトは進んでいます。

濃く染まりあがったものは、素材を変えれば秋冬物にもよいような感じです。林与の近江上布柄のモチーフのほとんどが草木です。自然に美を求めたのだということがつくづく感じられるのです。それは、日本人の草木に対する信仰なのかもしれないなあと思うほどです。が、もしかすると、苗字が「林」ですので、草木に、こだわりが合ったのかも知れません。

柄をみていると、ファジーなんです。同じような文様が並んでいるように見えても、隣の文様と隣の文様が微妙に異なり、それがまたぬくもりを感じるところです。今の時代なら、同じ柄をリピートするのが正しい方法でしょうが、昔の柄というのは手彫りで正確に作り過ぎないところに味を求めたのだと思います。画家が絵を描くようなものだと思います。まっすぐな線を引かないところが魅力です。

夜は、彦根で理事会がありました。年が明けて大分経ちますが、初めてお目にかかる社長さんが多かったので、新年のご挨拶をいたしました。
2011年01月19日
織機のスピードは早ければ早いほど良いかというと、綿やウールなど糸が切れにくい場合には生産性が上がってよいのですが、糸がよく切れる縦糸が麻織物の場合には、織機のスピードは一定以上に上げると生産性が逆に落ちてしまいます。

私が心配するのは、糸に掛かる負荷です。ゆっくりと織ってあげると糸が引っ張れずに織れるので、生地が引っ張れることなく織りあがります。高速で織り上げるとどうしても糸を引っ張りながら織り上げてしまうので余裕のない織物に織りあがるのです。

私が織物の構造を皆さんに説明するときに、縦糸は縮まずに横糸は加工で縮む話をいたします。織物を始めたときからの疑問だったのですが、たぶん正解だろうという答えにはたどり着きました。縦糸というのはアップアンドダウンしながら横糸を包みながら織れるのです。横糸というのはキバタの状態でまっすぐに走っています。加工すると、すでにアップアンドダウンしている縦糸はそのままに近く、まっすぐな横糸がアップアンドダウンすることで巾が入るのです。織物の経と横を見分けるのは、引っ張ってみて10%ほど伸びるほうが通常は横方向です。縦方向はほとんど延びません。

ストライプを作るのとボーダー柄を作るのでは、ボーダー柄を作るほうが簡単なので、ボーダー柄を縦横使いしてストライプ柄として使えばよいじゃないかという考え方ができるかもしれませんが、物性の面を考えると、安定している縦方向は縦に使い、ストレッチ性のある横方向は伸びを吸収できる横に使うのが良いのです。

私自身が、シャトル織機で織った織物を良い織物だとお勧めするのは、布に無理がないからです。開口が広く、横糸をしっかりと包み込みながら織るだけでなく、横糸も、ほぼノーテンションで出てきて、筬が叩かれるときには糸が緩みながら叩き込まれます。横糸も余裕がある状態で織り込まれるのです。シャトルの織物というのは横糸も余裕がある状態で織られているのです。

シャトル織機は捨て耳が出ませんので糸を最大限に使うことができエコです。シャトル織機の問題は、生産性の低さと織り段という問題ですが、それを十分にカバーするだけの意味合いがあると作り手としては考えます。シャトル織機自体も、半世紀以上にわたり使えるのですから本当にエコです。
2011年01月18日
私自身、マス見本という言葉をよく使いますが、先日のJETROさんの商談会で通訳の方が、「マス見本って何?」と聞かれまして、「縦横いろいろな柄の入ったサンプルです。」とお答えしました。たくさんの見本ということで英語の"mass"を連想されたみたいです。

なぜ、マス見本と呼ぶのかという質問をいただいて、枡に区切ってあるからマス見本と呼ぶのですと説明しましたが、通訳の方の頭の中には、一升枡があって、そこに見本の布を筒状に丸めて立てるからマス見本というのですか?と、通訳で頭のよい方だけに、ちがう、ちがう、ぜんぜん違うの世界です。

一つのマスは大体10cmくらいから15cmくらいのことが多いのですが、総マスの多色使いにすると芸術的な表現力の世界になります。それは、マス見本に注がれた労力に比例するかと思うのです。中には、1週間掛けてつくりあげるマス見本もありそれは見本というよりも芸術です。

綺麗に見えるマス見本を作れるかどうかは、一つのイメージを作れるだけでは駄目で、同系の柄組を出来る力や、同柄でのカラーバリエーションをつくる力が要求されます。クレヨン箱みたいな感じの配色をすると、ありがちなファストブランドちっくな世界になってしまいます。

見て奥が深いなあと思えるマス見本を作るためには、かなり力が必要で、複雑なマス見本を計画しすぎるとそれを準備し織り上げるには大変です。マス見本をご覧になられてその価値が分かる方というのは織物に精通しておられる方です。
2011年01月17日
京都の川島織物テキスタイルスクールからニュースレターが届きました。今はスクールの中庭にも雪が積もっているそうです。川島テキスタイルスクールで草木染の染色のことを学ばせていただいたのは3年前、日々というのはあっという間に過ぎ去っていくものだなあと思います。受講させていただいたときも仕事の間に無理やり日程を組んで勉強しましたので、周辺を散策する余裕すらありませんでした。

最近では草木染ライクな染が増えてきました。化学染料を使っているので、堅牢度や対光堅牢度が良いのです。化学薬品を使う利点は分かるのですが、それが高品位な草木染かというと化学薬品のほうがより高品位というお話になります。本当の草木染との区別がなくなり、本来の草木染の世界が壊滅してしまわないか心配です。

草木染においても、素材にもよりますが、草木染のまま、堅牢度や対光堅牢度を上げることは可能です。それこそが、手間暇の世界で、何百年も昔の化学染料がない時代の着物などが今も色鮮やかに残っているのは、同じ草木染であっても手間暇が草木染の品質を向上させているのです。

通常の草木染においても、薬品はたくさん使います。酢酸、ジュウソウ、ミョウバンなど、石灰など、調味料かな?と思うようなオーガニックなものがほとんどです。バイセン剤には金属系のものを使い、化学反応を起こさせることで、色を作り出します。

今は、雪が降ってて難しいので、また、夏の良い時期になら何か勉強できるのではないかと楽しみにしています。アイデアを広げるのにはすばらしい環境ではないかと思います。なにかのご縁でしょうか、私の住んでいる字内には、カーシートなどを生産されていますTBセルコン川島という川島織物さんの流れを引く工場があり、川島織物さんは京都に歴史をお持ちの会社ながらも非常に身近に感じます。
2011年01月16日
弊社に残る手績糸は、昭和25年、26年の新聞に包まれていますので、そのころの糸だと推測いたしますが、ちょうど戦後24年に麻製品の統制が解除されたときに作られた糸ではないかと暫定的に思っています。「きぬあさ」と銘が箱にうってあります。まさに、「きぬあさ」と呼ぶにふさわしく、手績した糸の状態で、今もシルクの生糸のようにピカピカしているのです。

昭和40年ころまで手織の近江上布を生産しながらも26年ころの糸が残っているというのは、これまた不可思議なことです。100年以上続く、林与特有の手に入らなくなるものは大事にとっておくという傾向ではないかと思います。戦後の近江上布というものは、そのほとんどが紡績糸を使用していたのだろうと考えます。戦後のごく短い間に流通したものが林与には残っているのだと思うのです。手織り用の達磨マークの糸も僅かですが残ってはおり、その完璧さがあってこそ、他とは別格の本麻の織物が出来上がったのだと思います。

麻の細番手で、120番手、140番手クラスの糸なのですが非常に均一で完璧すぎるような仕上がりの「きぬあさ」と呼ばれる紡績糸も残っているのですが、これも戦後の手織りの時代に呉服用につくられた糸で、白絣などの繊細な織物を織るのに使われたと聞いております。こちらも今年の試作テーマの一つにしてありますので、なんらかの形になってくるものと思います。

私自身、自分が生まれていないころの麻織物の歴史に触れることは非常に不確かな部分が多いのですが、親戚の90歳近くの昔林与の近江上布を織って下さっていたおばあさんにお話を聞いても、あまりに普通に仕事をしすぎていて、一つ一つの工程のことを覚えてはおられないのです。でも、機があれば今でも器用に動かしてくれると思います。このことは「職人」さんというものの性質なのだと思います。一旦、現場から離れてしまうと全てが過去の世界になってしまうのです。職人さん自身にとっては、自分の過去に手がけたものが振り返れないことが多いと思います。仕事を始めたときに私の作業の補助をしてくださった伝統工芸士の勘一じいさんも、昔の仕事の話を聞いても細かなところは忘れられてしまっていました。
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